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■デジクリトーク

●母国語自家中毒。

白石昇

●母国語自家中毒。

 とりあえず不幸にも訳文チェックを引き受けてくれた四名様および著作者サイドのプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、書き直しを進めていったのです。

 まあ、プレッシャーと言っても、小生が自らで自分に課したプレッシャーである故、誰のせいでもないのですが。

 がしかしそれ故にチェックして下さる皆様からのネガティヴな反応に対して逃げることが出来ないのですけどね。ははははっ。もう笑うしかありません。

 チェックしていただく度に泰語魔導師の姐さんから誤訳の指摘が舞い込みますし、他の三名様からは、てめえがこんなワケの分からないにっぽん語書くとは思わなかった正直失望した、というようなごもっともな御意見が舞い込みます。

 そういった中で、訳文を自ら読み直してみますと、自分が、その訳文がにっぽん語としてどういけないのかわからなくなってくるのです。いや、訳したり書き直したりした直後はそれで大丈夫だ、と心の底から思ってしまっている自分がいるのです。

 いやむしろ、そもそも小生がこれまで書いちゃいけないようなにっぽん語をちゃんと記してきたのか、そういったプロとして必要不可欠である自信さえおぼつかなくなってくるのであります。

 そもそも小生、誰かににっぽん語の書き方を教わった経験がありません。確かに学校教育で現代国語の授業は受けてきましたが、文字を習った以外ににっぽん語の書き方を習った記憶がないのです。

 そして小生、原文である泰語の読み方を学校で習った事もないのです。要するに、この四人の不幸な皆様にチェックして貰うまでは、主体的な判断のみで原文をにっぽん語に移し替えていたのです。

 とりあえず小生、ここいらでさらなる客観的判断が必要だと思いました。客観的な判断をないがしろにしては、藝人としての根本的な資質の問題が問われてきます。第三者に評価されて初めて、表現は表現たり得るのです。

 でもしかし、仕事の内容に関しては極力発売まで公開しない、と言う方針を取っている以上、これ以上訳文を第三者に晒すわけにはいきません。でも極力先入観なく批評して下さる第三者に小生のにっぽん語を晒したいのです。

 だから訳文ではなく、昔、製作したにっぽん語の文章を匿名で匿名の皆様に晒して、一切の先入観が介在しない状態で判断を仰ぐことに致したのです。その結果が これです。





 更にワケが分からなくなってきます。

 ますますもって自分が書いた自分の母国語であるにっぽん語に懐疑的に、そして自家中毒的になってゆくのですが、自分でもよくわからないまま改稿を進めていかなければなりません。

 改稿はのろのろと進みながら、時間だけがサクサクと進んでゆきます。頭に串が一本刺さったみたいに小生の頭はおかしな状態のまま時間だけが過ぎてゆくのです。
つづく。

初出・【日刊デジタルクリエイターズ】     No.1120 2002/07/08.Mon.発行


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