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3.5 完全外段取り

 このCAMソフトには、機上に搭載した工作物の各設計面について、ユーザーが設定した基準点(NCプログラム参照点、NCPRと呼ぶ)の位置を、自動計算する機能がある。この機能を用いて、各設計面の基準点を呼び出すNCプログラムをCAM作業によって作成しておく。いわば外段取り作業を完全におこなっておくことにより、工作物搭載後に、機上で各面の基準点を測定する作業と、測定結果を機械の制御装置に手動入力する作業は行わないようにすることができる。

 例えば、横形MCを用いて工作物の隣り合う三つの設計面を加工する場合には、万力形の汎用性のある工作物保持具を用意して、図11に示すように角物工作物を上下から口金によって把持する。機械テーブルのB軸周りの回転割り出しにより三面の加工を行う。

 

 

図11 横形MCによる3面加工

 

 

CAMソフトウェアのデータベース内に、「保持具」データベースがあり、ユーザは最初に保持具を準備した時に、その保持具によって把持する工作物の原点(WPO)の座標位置を、MC機上で測定して登録しておく。図12は、一例としてVise 90-Hと名付けた保持具のデータを示しており、その保持具がB軸の角度90度の方向に付いていることを、下から2行目のインデックス角度という欄に登録している。ユーザが工作物素材を保持具に把持する時は、保持具がそのインデックス角度の方向にある時に、X=0の中心軸にほぼ対象に取り付けるものとする。

そのインデックス角度から、B軸を+90度あるいは−90度回転する事によって、隣り合う三面のいずれかを機械主軸に垂直の方向に割り出して加工を行う。それら三面にはそれぞれユーザが、P-CADによるモデル作成の際に指定したNCプログラム参照点(NCPR)が決められている。

 

 

 

図12 保持具データ(例Vise 90-H)

 

 

 CAMシステムは、上記の保持具データと、工作物モデルの寸法を参照して、加工すべき面が主軸に向かって割り出されている時に、その面上のNCPR点を見つけるためのサブプログラムを、各三面について一つずつ自動作成する。図13に示すサブプログラムは、OSPコントローラの例であるが、VZOFX、VZOFYおよびVZOFZが保持具原点(FXO)を基点とする各加工面上のNCPRのXYZ座標値である。横形MCの場合、FXOは先に図11に示したように、必ずB軸の旋回中心上に設定しておき、その位置は、B軸回転によっても移動しない。VC111、VC112およびVC113はFXOのXYZ座標であり、各サブプログラムの2行目のブロックで呼び出しているサブプログラムO55の実行によってその値が入るようになっている。

CAMシステムは、NCプログラムのメインプログラム内に、B軸旋回割り出しを行う度に、対応するNCPRサブプログラムO50、O51あるいはO52のいずれかを呼び出す命令を、自動的に作成する。

図14に示す例では、コモン変数VC110に、B軸の割り出し角度0、90あるいは180のいずれかが入っており、サブプログラムO7を呼ぶと、その向きへ機械テーブルが旋回する。その後に対応するNCPRサブプログラムを呼び出す命令が書かれている。なお、シーケンス番号N1の場合には、CALL O51の前にCALL O4が入っているが、これは工具交換を行うサブプログラムの呼び出しである。

 

   

図13 左、前あるいは右面に対応するNCPRサブプログラムO52, O50の作成例。Vise 90-H保持具上に幅70mm, 奥行き65mmの工作物を把持した場合。

図14 メインプログラム中に自動作成された NCPRサブプログラム呼び出し命令の例。B軸を左、前、あるいは右面に割り出す動作のあと、対応するサブプログラムO52, O51あるいはO50の呼び出し命令が書かれている。

 

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