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 ステレオチューナ

2002年10月5日 13:29:55

 朝の目覚ましのためにラジオを利用しているのだが、さすがに20年も使っていたので調子が悪くなってきたようである。

 新しいラジオを物色するために、久し振りに大阪の日本橋を歩いてみた。問題は音であったので、10cmくらいのスピーカが付いているのがいいな、ダイアル式よりシンセサイザチューナがいいな、と思って見てみると、なんだか郊外型の量販店みたいな品揃えの店もあり、結局、昔からある有名な店に入った。
 そのようなラジオらしいラジオというのは結構な値段がする。ラジオ単体で音が良さそうな、というのは少なく、CDなどと組み合わせたのが多い。ラジカセみたいなのは欲しくなかったので、ふらふらとオーディオコーナーに行くと、そこで運悪く(良く?)超ベテランの店員に捕まってしまった。
 「何をお探しですか」というので、思わず「安いチューナを探している」と答えてしまった。実を言うと、チューナは迷っている状態であった。昨年、これも20年ぶりに別の音響店でマランツ・ブランドの渋い趣味の実用単体アンプ(MARANZ PM4000)(昔で言うプリメインアンプ)を買ってしまっていたからである。ちなみに、私はあまり音そのものにこだわるほうではない、とは思っているのだが、コンポタイプのオーディオ機器だけは願い下げで、必ず単体の機器を買うことにしている。
 単体チューナ購入も初めてではない、その昔、一世を風靡したパイオニア製のディジタルチューナを買ったことがある。

▼ ステレオチューナとは

 ステレオチューナという商品については、今や解説が必要かもしれない。アナログのオーディオ機器は今でも趣味の対象であって、いくつかのグレードがある。値段など全く気にならない人のための超高級タイプは、設置までプロに任せないとひどい音のまま聞いてしまうことがある。アンプやCDプレーヤなどで数万円台の機器は、少し無理すれば誰でも買えるから数が出ており、しかも購入者には結構うるさい人が含まれるので、メーカー側もそれなりに性能を気にしているだろう(そう思いたい)。
 チューナはAM/FMラジオ放送を受信する機能を提供するオーディオ機器で、出力はステレオのRCAプラグのみ、といった質素な機器である。であるからアンプに接続しないといけない、ヘッドフォン出力すらないからだ。実用レベルの商品では20年ほど前に革新があり、おそらく、中途半端な性能の機器は淘汰されていると予想される。安いラジオとは音響に関する性能は別格のはずである。まあだから、いつかは買ってもよいかな、とは思っていた。

 さて、その店に単体のチューナが3台展示されていた。一万円から二万円台の実用価格帯のチューナである。最近はオーディオ雑誌など読んでいないから、ほとんど店員の言うなりになってしまった。もちろん、最も高価な機器を薦めてくる。感度のよさをしきりに強調するのだが、家には難視聴対策のためのケーブルテレビが引かれていて、感度などほとんど関係はない。むしろ余計な機能ばかりで基本性能が劣っていると困る。
 結局、その棚で一番高価な、DENON TU-1500というのを買ってしまった。といっても、3万円弱であるから高級品とは言いがたい、実用品である。

● DENON TU-1500

 真っ先に性能表(仕様)に目が行ってしまった。FMのSNは78dB、歪み率0.12%、ステレオセパレーション50dBはさすがである。数字に現れない項目もあるのだが、これは詳しく聞いてみるまで分からないので、ある意味ギャンブルである。(これが、この手の機器の楽しみなわけだ)
 恥ずかしながら、AMステレオの音は、初めて聞いた。たまたまエルビス・プレスリーの曲が流れていて、お〜ステレオしている、と感激である。気のせいかAM放送の音質も抜群である。無論、放送の仕様のため、伸びのある高音は期待できないのだが、AMステレオが技術を牽引したのか、帯域ぎりぎりまでの音が再生されている感じである。
 FMは決して無理していない素直な音色のようである。しかし、極端な条件で聞くまでは何とも言えない。間の悪いことにクラシック音楽等は流れていなかったので、しばし音の評価はお預けである。ただし、さっき時報が鳴って、妙な付属音はないので回路的には非常に成熟している感じである。(この書き方は、時報のような正弦波に歪が加わるのか、ということになるのだが、セパレーションを上げるためには工夫が必要なので、歪が混入することもあるのである。) 

 プリセットは当然の機能ではあるが、この機器は40局もプリセットが可能である。これも珍しい機能ではなくなったが、8文字までのアルファベットが表示できる。表示は蛍光表示管で、非常に美しい。複雑な機器ではないので、操作の間違いようはないとは思えるのだが、一応マニュアルは通読した。

 さて、土曜日も深夜近くなるとお子様の時間は終わって、物の分かるおじさん・おばさん向け(?)のジャズの番組が始まる。運の良いことにモダンジャズの特集を聞いた。
 やあやあ、これは素晴らしい。音の定位はかちっとしているし、音の細部まできっちり聞こえる。テナー・サックスの息遣いとか、ドラムセットのシンバルは、その揺れ具合と叩く角度、ピアノの指先の微妙なタッチ、室内の空気の動きまで聞こえてきそうである。ほんの20年前なら、これはジャズ喫茶の超高級セットでしか聞けない音である。うーぬ、こんなのが毎日空中を伝播していたとは。
 あまりにリアルで気味が悪いほどで、どこかずるしてディジタルで放送しているんではないだろうな、と疑われるほどである。
 さらに全く運の良いことに、金管が出てきた。私は自分が演奏家であるので、金管奏者の心の動きまで分かり(もちろん主観的なものだが)、うー、しかし、いくら録音だからといって、もっと自分で楽しめよ、と思っていたら、おー、ノッてきたぞ、どんなもんだい、ん?、ドラムっ!、義務的に叩くな〜、といったところまで聞ける。これはお買い得であった。

 とすると、昼間のカセットテープのような音は、わざわざ放送側でcheapな感じを出していたのだろうか。もしかして、作り手の音楽家が、テレビゲームでそうするように、わざわざ貧素な感じに作っていたのかもしれない。