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2003年、火星大接近

2003年8月10日 10:36:04

 天文学の本の表現はいつ見てもおもしろい。今、火星は地球に対して時速1万キロの速さで近づいており、ついには8月27日に地球と火星が宇宙空間内で5570万kmまで「大接近」する。
 もちろん、近づいた火星の引力によって地球表面が破壊される、ということはなく、肉眼で見ても火星は空に輝く明るい赤い点でしかない。たが、望遠鏡で見ると大変なことが起こっている。火星が間近に来るので、その見かけの直径が月の1/70程度までになり、比較的安価な小さな望遠鏡でも表面の模様が何となく分かる、…らしい。らしい、というのは情けないが、私は天文ファン、というほどではないので新聞等で楽しむことに決め込んでいるからだ。

● 望遠鏡の火星

 いまでも夜遅くなると、接近しつつある火星が、見まごう事なき堂々たる輝きで南東の空に現れている。たしかに不気味なほどで、戦いを象徴する星、と言われるのも無理からぬこと、と納得できる。
 望遠鏡で見ると、火星は点ではなく、単純な円でもなく、誰でも分かるほどの模様があって、季節変化し、時には砂嵐などの気象現象が確認できるそうである。木星と土星は別格だが、他の惑星は地上からの普通の望遠鏡で見てもあまりおもしろくない。
 特集雑誌を買ってみると、手軽な望遠鏡で近接時に火星がどのように見えるのかのシミュレーション写真が載っている。探査機画像には遙かに及ばないが、それでも有名な地形は次々に認識できるようだ。
 地球の周回軌道にある、ハッブル宇宙望遠鏡による火星全体の写真も載っている。細かな模様に加えて火星の昼の部分の気象現象が細かく分かる。なかなか衝撃的な写真で、火星生物などのロマンがかき立てられるのも無理はない、と思える。

● 探査機の火星

 火星の表面の反射率はバイキング1・2号によって詳細な地図が作製されている。1976年のことというから、ずいぶん昔のことだが、なぜか今回までほとんど記憶がない(ずいぶん前に火星儀は見たことがある)。火星の地形図は、マーズ・グローバル・サーベイヤーによる1997年からの観測で作られたようである。標高と模様は関連はしているものの、完全には一致していない。
 それより先、1965年にはマリナー4号が火星の写真を送ってきていて、クレータに覆われた表面が映し出されていた。かつては運河や湿地帯が広がっているとも考えられていた想像上の火星像は徐々に修正されていったのである。
 今回の特集雑誌のおかげで、火星に関する地図や写真がまとめて見られるのがありがたい。昔の資料も載っていて、わずか50年ほどの間に火星に関する知識が激変したことが分かる。私などの年代には、なつかしい記述もある。なかでもAstroguide火星大接近2003夏(アストロアーツ/アスキー、2003。ISBN 4-7561-4313-X)の中の記事、「天文書籍いま・むかし。『火星生物』は、いつ枯れたのか?」の文章は秀逸であった。また、今回の大接近が6万年ぶりで、次が284年後という著しい非対称の理由ついては、「Newton臨時増刊、火星6万年ぶり大接近。ニュートンプレス、2003」、に簡単に紹介されている。

● プラネタリウムの火星

 ということで、観測会などには無縁だと思っていたのだが、地下鉄内のポスターで大阪市立科学館の巨大プラネタリウムで「火星大接近!」と題するショーをやる、というのを知り、恥ずかしながら一人で出かけることにした。
 周知の通り、大阪の都市部は終始スモッグで覆われ、星はまばらに見える程度である。最近のプラネタリウムは大したもので、いろいろシミュレーションができる。まず、スモッグを取り除き、街の明かりを消す。また、月が明るすぎるので、月だけ時間を経過させて視野から追い出す。天の川が明るく輝く、ど田舎の空が出現する。火星はまだ出ていない。夏の星座を楽しんだ後、火星の出現である。むろん、全天で最も明るい赤い星だから、すぐに分かる。特集の映画が上映され、さまざまな資料映像が紹介される。館の解説者自身が楽しんでいるようで、解説がおもしろかった。

● 大接近の成果

 これだけまとまって一般向けの火星に関する資料が集まることはめったにないことと思う。まだ火星に植物が生えているかもしれなかった時代に育った私にとって、パイキング探査から今日までの火星への関心は薄れていたと思う。しかし、火星がまだ生き生きとした惑星であることを、今回改めて知ることになった。
 本年末から来年始めにかけて探査機が火星に次々に到着するようで、新しいデータが送られてくるであろう。今回の大接近時の観測の成果も、そのころに出版されるだろう。天体の話は、悠久の時の流れを感じさせると同時に、隕石衝突など、次にいつ何が起こるか分からないところが面白い。