15 ‐17 HCP 16 ‐18 HCP での 1NT オープンの頻度比較

© boco_san ( ぼこさん 2010 - 2012 )          メイリオ印刷
  いきさつ
  結論
  得られた結果の説明
  付録: 確率の計算方法 
  付録: 移行の時期
  付録: 確率の計算方法 (2) 
  付録: 確率の計算方法 (3) 
    ゲームのある手は 6 回に 1 回

いきさつ

   1NT オープンは,かつては,16 -18 HCP が標準でした。 しかし,いつの頃からか,これが 15 -17 HCP に変更されて,現在に到っています。 手許の本を比べてみると,この移行の時期は,1980 年代だったことが分かります。
   これについて,2009 年 9 月に 「かずちゃんのホームページ」の掲示板で お尋ねしたところ (#690), 三人の方から 興味深いお答えをいただきました。
   同じ頃,Yahoo! のブリッジ・テーブルで,同じ質問を bridge_ski さんにしたところ, 1NT オープンの機会が 30% くらい増える という話でした。
  この「30% 増える」という話は,私の耳にずっと残り,いつの日か 自分の手で確かめたいと思っていました。 けれども,この確率の計算は,非常に難しそうで (そもそも どうやって手をつけたらよいのか 皆目分からない) , 実際,WEB で検索しても,そんな確率は見当たりません。この件は,しばらく忘れていました。
  一方,LoTT (合計トリック数の法則) について考えると,切り札のフィットする確率が重要であることに 気づき,その確率の計算に取り組みました。こちらの方は, 考えやすいので,なんとかケリがつき, そこで あらためて (確率計算に慣れたので) 表記の 1NT オープンに取り組みました。
結 論

   お急ぎの向きのために,結論から始めます。2 種類のハンド
     (A) 15 -17 HCP のバランス・ハンド
     (B) 16 -18 HCP のバランス・ハンド
を比較すると,前者が後者の 1.371 倍 多く現れます。つまり,ぶりさんから教えて もらった 30% より少しだけ大きくて,37.1% であることが分かりました。
  ここで バランス・ハンドと呼んでいるのは,通常の定義,すなわち,3 種類
     [4333],  [4432],  [5332]
のカード分布を意味します。
   ここから先は,上の結果について立ち入って説明します。
   詳しい (数学的な) 説明は,付録に回します。
   なお,上のように (正しく) バランス・ハンドに限定せずに,シングルトンやボイドを持つハンドも含めて,HCP の大きさだけで
     (a) 15 -17 HCP のすべてのハンド
     (b) 16 -18 HCP のすべてのハンド
を単純に比較することもできます。これは無意味な比較ですが,(a) は (b) の 1.387 倍 多く現れます。 この数値は WEB 上で 38% として 既に知られています。
  結局のところ,バランス・ハンドに限定しても/しなくても,結論にあまり変わりが無い ことが分かりました。
得られた結果の説明

   これは要するに,表題に書いたように,15 ‐17 HCP のバランス・ハンドで 1NT オープンすると, 16 ‐18 HCP の場合に比べて,頻度がどのくらい増加するか と いう問題です。
   ひとりのプレイヤーに 13 枚のカードを配る組み合わせは,
52C13 = 635,013,559,600 通り
あります。
  これを単純に HCP に従って 0 〜37 HCP (上限は,40 HCP ではありません)分類することもできますが, それだけでは,上の問題の答になりません。
   1NT オープンでは,手の形を上の 3 種類のバランス・ハンドに限定する必要があります。 これらのバランス・ハンドは,上記の 6350 億通りのうちの 47.6 % を占めます (13 枚のカードの形は全部で 39 通りあるので,バランス・ハンド 3 種類だけで 全体の半分を占める ―― というのは,ちょっと意外です)
   ほぼ 2 回に 1 回の割合でバランス・ハンドが来るので,バランス・ハンドでのオープニング・ビッドは重要です。
   そういう訳で,ここでは,6350 億通りのハンドを,その «» と «HCP» の両方により 分類して,その個数をカウントしました。 そして,得られた結果を,2 つの巨大な表
     (1) ハンドの個数
     (2) ハンドの発生確率 (単位は ‰ = 1/1000)
として まとめました。それぞれ,クリックしてご覧下さい。
   どちらの表も,38 行 × 39 列 = 1,482 個の欄から成ります。
   表 (1) は,手の形と HCP ごとに,場合の数を数えた結果です。これらの総計は, 表の右下にあるように,6350億 です。
   これらの個数を それぞれ 単純に 6350 億で割ることにより 発生確率が得られ,その結果が 表 (2) に示されています。
   この表 (2) で,0 と書かれている欄は,確率の数値が 0.001 % 未満であって 0 ではない ことを意味します。いっぽう,空欄は,確率が厳密に 0 であること (すなわち,そういう場合は絶対に無い) ことを意味します。
  分割が非常に細かいために それぞれの確率の数値が小さくなるので,単位を % ではなく, ‰ にしました。したがって,その総計は 表の右下にあるように 1000 となります。
《 バランス・ハンドの発生確率 (%) 》
HCP [4333] [4432] [5332] 合計%
15 0.469 0.958 0.6882.115  (A)  15 ‐17 
合計 4.866
16 0.355 0.723 0.5181.596
17 0.259 0.523 0.3731.155  (B)  16 ‐18 
合計 3.550
18 0.180 0.363 0.2560.799
   この 表 (2) から 青色の部分 すなわち 15 〜18 HCP バランス・ハンド部分を 抜き出したのが,右の表です。
  ただし,こちらの表では,確率の単位 ではなく % にしました。
  この抜き出された表から,
(A) 15〜17  と (B) 16〜18  の 発生頻度の比 4.866 / 3.550 = 1.371 が得られます。
  結論として, (A) により 1NT オープンすると,(B) による場合よりも 37 % だけ その機会が増えます。平たく言うと,(A) 15 〜17 HCP で 4 回 1NT オープンする間に, (B) 16 〜18 HCP では 3 回しか 1NT オープンできません。
  この違いの原因は,15 HCP と 18 HCP で発生確率が非常に異なるためです。
  この状況は,グラフで見ると よく分かります。 右のグラフは,全ハンド (黒),バランス・ハンド (青) の発生確率を HCP により分類した結果です。
  さきほど述べたように,黒線は,青線のほぼ 2 倍です。 また,40 HCP を 4 人で分けるので,どちらの曲線も,10 HCP あたりに 山を持ちます。
  15 〜18 HCP の範囲は この山の右裾にあるので,
18 HCP を捨てて 15 HCP の
場合を取り込むと, 確率
かなり増えることが理解でき
ます。
《 全種類ハンドの発生確率 》
HCP %
15 4.425 (a)  15 ‐17 HCP
合計 10.097 %
16 3.311
17 2.362 (b)  16 ‐18 HCP
合計 7.278 %
18 1.605
   ここまでの結論は,グラフの青線 (バランス・ハンド) に限定して導きましたが, バランス・ハンドに限定せずに黒線のデータで比較すると,右表が得られます。そこから, (a) と (b) の発生確率の比 10.097 / 7.278 = 1.387 が求められます。
  結局, バランス・ハンドに限定しても しなくても,確率の比は ほとんど同じです。

付録: 確率の計算方法

   ひとりのプレイヤーに (52 枚のカードの中から) 13 枚を配る方法は,
      52C13 = 635,013,559,600 通りあります。
  これらを
     1. 手の形により分類する.
     2. HCP により分類する.
このように 2 重に分類して ハンド個数を数え上げ,上の表 (1) を作成します。
表 (1) が得られれば,すべての数字を 52C13 で割ることにより,確率の表 (2) が得られます。
《 多重度の表 》
手の形の内容 多重度
すべて異なる  [5431] 4! = 24
2 つ 同じ  [4432]  4! / 2! 2! = 6 
3 つ 同じ  [4333] 4
   はじめに 手の形について考えると,[4333],[4432],…,[13,000] の 39 通りあります。 ここで,たとえば,[3424] のような分布を独立に考える必要はありません。[4432] の場合に 多重度 6 を掛ければ十分です。すなわち,この多重度は 4 スート内容を入れ換えることに対応します。
   次に,HCP により更に分類しますが,これが やっかいな作業です。
   単純に HCP だけで場合分けするのは,難しくありません。
   また,手の形だけで場合分けするのも,難しくありません。
   これらの場合の確率の計算方法とその結果は,Durango Bill さんのホームページに載っています。
   厄介なのは,ハンドの形を特定して,しかも HCP により分類する ―― という 2 重の拘束条件があるためです。 何かうまい方法があるか (上の 2 通りの場合分けを発展させれば) と思って長い間 考えました。結局は,以下の方法を見つけたのですが,もっと旨い方法があるのかも知れません。
   ここには,私なりの考え方を示します。
   例として,21.6% という最も頻度の高い形 [4432] で 15 HCP のハンドが何個あるか を数えましょう。
   この場合,4 スートの枚数分布は 4 枚, 4 枚, 3 枚, 2 枚 です。
   次に,HCP の合計が 15 でなければなりません。
《 各スートの内容 》
絵札枚数 絵札HCP
4 AKQJ10
3 AKQ  9
3 AKJ  8
3 AQJ  7
3 KQJ  6
2 AK  7
2 AQ  6
2 AJ  5
2 KQ  5
2 KJ  4
2 QJ  3
1 A  4
1 K  3
1 Q  2
1 J  1
0 なし 0
   ところで,絵札の持ち方というのは,右の 16 通りの どれかに限られます。 この表には, 4 枚から 0 枚までの絵札の内容と, それに対応する HCP が 16 通りに分類されています。
  そこで,4 スート に 右の表を上から順番に 割り当てていきます。
   最初の候補は,
      AKQJ AJxx xxx xx
です。ここでは,スペードに AKQJ (10 HCP), ハートに AJ (5 HCP) を与え, 残りの 7 枚には 屑札 x (10〜2,HCP なし) を与えます。 このとき,6 枚の絵札は完全に指定されましたが, 7 枚の屑札 x には任意性が残っています。
どのスートにも屑札は 9 枚あり,その中から
スペード:  9 枚の中から 0 枚,
ハート:   9 枚の中から 2 枚,
ダイヤモンド:  9 枚の中から 3 枚,
クラブ:  9 枚の中から 2 枚
を選びます。そこで,この選び方に対応して,ハンド個数は,
9C0 × 9C2 × 9C3 × 9C2 = 1 × 36 × 84 × 36 = 108,864
通りあります。上の表を にらみながら これを続けると,
  AKQJ KQxx xxx xx    9C0 × 9C2 × 9C3 × 9C2  = 1 × 36 × 84 × 36
  AKQJ KJxx Jxx xx    9C0 × 9C2 × 9C2 × 9C2  = 1 × 36 × 36 × 36
  AKQJ QJxx Qxx xx    9C0 × 9C2 × 9C2 × 9C2  = 1 × 36 × 36 × 36
 AKQJ QJxx Jxx Jx    9C0 × 9C2 × 9C2 × 9C1  = 1 × 36 × 36 × 9
 AKQJ Axxx Jxx xx    9C0 × 9C3 × 9C2 × 9C2  = 1 × 84 × 36 × 36
etc. ….
これらのハンド個数を,許される全ての「絵札の持ち方」について加え,その結果に 多重度 6 を 掛けると 2,976,568,236 という数字 (ほぼ 30 億) が得られます。これが,6350 億個のうち,15 HCP を持つ [4333] ハンドの個数です。
  その発生確率は,30 億 / 6350 億 = 0.469 % と求められます。これが, 前に示した表の左上隅の数値です。
   この計算を 39 通りの枚数分布 と 38 通りの HCP という全ての組み合わせ 1,482 通りについて実行した結果が 表 (1) です。
   この計算法の要点は,
枚数分布が [4432] で 合計 15 HCP
という条件下で,各スートに右上表のあらゆる組み合わせを許し,そのとき,
カード  x  が取りうる場合の数 9C屑札枚数 を掛け合わせる
ところにあります。
   このアルゴリズムが正しいことは,各行,各列の合計数値が,これとは独立に得られた数値と一致することにより 確かめられます。総数が 52C13 に一致することは, 言うまでもありません。
  なお,転記のミスを防ぐため,上の 2 つの表 (1) と (2) の HTML ファイルは,VB プログラムにより直接に作成しました。
移行の時期


この移行がいつ頃だったのかを知ろうと,手許の本・ソフトウェアを調べました。
  • (A) Ned Dowley & Ellen Pomer: Standard Bidding with SAYC (2005).
  • (A) Fred Gitelman: Learn to Play Bridge (2003).
  • (A) Audrey Grant: ACBL Spade Series (2000).
  • (A) Barbara Seagram & Marc Smith: 25 Bridge Conventions You Should Know, (1999).
  • (A) William S. Root: The ABCs of Bridge (1998).
  • (A) Mike Lawrence: Conventions (1996).
  • (B) Audrey Grant: ACBL Club Series (1987).
  • (B) Charles H. Goren: Goren's New Bridge Complete, (1985)
  • (A) William Root & Richard Pavlicek: Modern Bridge Conventions, (1981)

付録: 確率の計算方法 (2)

  本稿では,
     (1) 手の形により分類する.
     (2) HCP により分類する.
という 2 重の条件を課して,場合の数を数えました。条件が 2 重であるために,1,482 通りに 分ける必要が生じ,計算が複雑になりました。
  この条件がどちらか片方の場合には,計算がずっと 簡単になります。
この 2 つの場合についても,計算法をここにまとめておきます。
  (1) の場合 ( 一人のプレイヤーに配られるハンドの形の分布 ).
スペード 13 枚
ハート 13 枚
 ダイヤモンド 13 枚
クラブ 13 枚

  手の形 [a, b, c, d] が指定されているので, 52 枚のカードをスート別に 13 枚の 4 つの山に分け,それぞれの山から
a 枚,b 枚,c 枚,d 枚 を抜き出します。
  このような場合の数は,
N [a, b, c, d]  =  13Ca × 13Cb × 13Cc × 13Cd
により与えられます。ただし,抜き出すカードの合計枚数が 13 なので,
       a + b + c + d  =  13
です。ここで, a, b, c, d を入れ換えた場合も 含めて数えるには,これに 多重度 を掛けます。 こうして得られた結果が,さきほどの巨大な表の最下行に示されています。
  これをすべての可能な  a, b, c, d  について加えると, その結果は 52C13 ( = 6350 億) となります(これには,2 項係数の和公式を 3 回使います)。
  (2) の場合. ( 一人のプレイヤーに配られる HCP の分布 )
  今度は HCP が指定されていて,各スートの枚数は不定なので,少しだけ複雑です。 この場合には,52 枚のカードを,右のように,5 つの山に分けます。
Ace 4 枚
King 4 枚
Queen 4 枚
Jack 4 枚
残りの 36 枚

  そして,それぞれの山から  Ace  A 枚,King  K 枚,Queen  Q 枚,Jack  J 枚 を抜き取り, 最後の山からは,S 枚の屑札を抜き取ります。 抜き取るカードの枚数が 合計 13 なので,
       A  +  K  +  Q  +  J  +  S  =  13
です。また,HCP が指定されているので,このうちのどれか 2 個 ( たとえば,J  と  S ) は 上式と
       4 A  + 3 K  + 2 Q  + J  =  HCP
により制限されます。したがって,HCP を指定したとき,場合の数は
N (HCP) = σA, K, Q  4CA × 4CK × 4CQ × 4CJ × 36CS
となります。この右辺は,すべての可能な (階乗記号の中の引数が負にならない範囲で)  A, K, Q について加えます。
  こうして計算した結果が,さきほどのグラフの黒丸の線です。 なお,これを 0 から 37 HCP まで加えると,その結果は やはり 52C13 (= 6350 億) となります。
付録: 確率の計算方法 (3), ペアに配られる HCP の分布

  すぐ上で考えたのは,自分ひとりに配られるカードの HCP の分布でした。
  同様に考えると,自分とパートナーの二人に配られる HCP の分布も計算できます。 今度も同じように 52 枚のカードを,右のように 5 個の山に分けます。
Ace 4 枚
King 4 枚
Queen 4 枚
Jack 4 枚
残りの 36 枚

  そして,それぞれの山から  Ace  A  枚,King  K  枚,Queen  Q 枚,Jack  J  枚 を抜き取り, 最後の山からは 屑札  S  枚を抜き取ります。 抜き取るカードの枚数が 合計 26 なので,
       A  +  K  +  Q  +  J  +  S  =  26
です。また,HCP が指定されているので,このうちのどれか 2 個 ( たとえば,J  と S ) は 上式と
       4 A + 3 K + 2 Q  + J  =  HCP
により制限されます。したがって,HCP を指定したとき,場合の数は
N (HCP) = σA, K, Q  4CA × 4CK × 4CQ × 4CJ × 36CS
となります。この右辺は,すべての可能な ( 階乗記号の中の引数が負にならない範囲で)  A, K, Q  について加えます。 さきほどとの違いは,抜き取る枚数が 13 から 26 に変わったことだけです。 これを 0 から 40 HCP まで加えると,その結果は 52C26 となります。
  この場合の発生確率が 右のグラフです。
横軸は ペアに配られるカード 26 枚の HCP を, 縦軸はその確率 (%) を表します。 当然のことながら,このグラフは HCP = 20 に山を持ち 左右に対称です。 ここで  HCP >= 25  ならば何かのゲームが あると考えて,25 HCP 以上の確率を合計すると 17.5% という数値が得られます。 すなわち,平均的には,6 回のディールのうちで 1 回程度ゲームがあります。