業務改善の提案 …工場の向上心

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(2015年5月公開)

社員100人程度の規模の工場に業務改善を提案したときの話.(ちょっと自慢が入ってるけど.たまには前向きな話題を、ということで…)

概要
K工場は、制御用のマイクロコンピュータ(CPU)を内蔵した小型の装置を製造する企業で、ほとんどの製品のソフトウェアを社員がアセンブラ言語で作っていた.ソフトウェアの高機能化や人材不足のため、いくつかの製品のソフトウェア開発を私の会社(以下S会社)が継続的に請け負っていた.

後のメンテナンスなどでK工場の人が知っている言語でなければならないこともあり、S会社もアセンブラでの開発が条件だった.時代はC言語による開発に移行しており、アセンブラ開発は手間(=開発費用)がかかりバグの発生率も高いので、内心では「C言語に移行して欲しい…」と思っていたが、やむをえない話ではあった.

(注:アセンブラ言語対C言語では、手動工具対電動工具くらい、作業効率に差がある.)

提案してみた
ある新製品のソフトウェア開発を受注したときに、それまでとは系統の違う新しい製品で、今までのアセンブラの資産を流用できる見込みが少なかった.そこで思いきって、C言語による開発に切り換えませんか、と提案して承諾を得た.うまくいかなかったらどうなるかという不安はあったし、実際トラブルはいろいろあったのだが、なんとか製品を完成させることができた.

開発自体はS会社のメンバーがおこなったが、終了後にK工場のメンバーに引き継ぐために言語の体系から開発手順までをレクチャーした.これが大好評で、K工場の製品開発の多くは一挙にC言語に移行した.S会社の開発メンバーは「師匠」とあがめられるほどだった.このときは、思いきって新規の開発手法を提案して良かった、と心から思った.

他にも、開発時に使う電話回線エミュレータやRS-232C(シリアル通信)モニターなど、私が雑誌などで見つけたツール類も(開発時に利用したい、という形で)いくつか紹介した.自分としては、そういったツールで効率よく開発するのは当然のことと思っていたが、工期が短縮でき製品の質も上がるということでかなり喜ばれたのが意外だった.

勉強しないのかな
とはいえ、ハードウェアの開発会社なのに、こういったツール類の情報にとても疎いのが不思議だった.通信モニター装置など、K工場自身が作っていても不思議ではないようなたぐいの装置なのにである.
K工場の休憩室には毎月の業界雑誌が何誌も並べられているのだが、ほとんど読まれていないようだった.こういう工場の人たちは新しい開発方法の工夫を一切しないのだな、ということを再認識させられた.

それにしても、単なる外注という立場の私が提案した手法で、ひとつの会社の仕事の手順が大きく変わってしまうということの怖さも少し感じた.


僭越ながらアドバイス
TVの報道番組などを見ていると、新しい仕事の手法や道具類の導入に消極的な工場が多いらしいと感じる.そこで、工場の製品開発者へちょっとアドバイスしてみたい.
・仕事の方法についてもっと工夫しよう.
・新しい技術に対するアンテナを張ろう.
・提案のできる会社と協業しよう.
そうすれば、仕事も楽になり収入も増えバグも減り顧客にも喜ばれ、良いことずくめじゃないかなあ.