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ゲームバランスの目的

 難易度を調整する、すなわちゲームバランスを整える目的は、永続的にプレイしてもらうことにある。プレーヤーが永続的にゲームをプレイする条件は、ゲームの基本的な内容、すなわちゲームがプレーヤーに要求する対応と認識によって変化する。なぜなら、ゲームプレイの目的である能動性の発露は、ゲームにおけるプレーヤーの対応と認識とに、密接にかかわっているためである。

 外的要因を除いて、ゲームプレイを放棄する状況は三つある。1)プレイを諦める。2)プレイに厭きる。3)プレイする気をそがれる。これらは、ゲームプレイにおいて能動性を発露する意義が失われた状態である。
 プレイを諦める状態は、能動的な感情が限度を超えた状態である。すなわち、ゲームにおいて障害が突破できない場合(あるいは、そのように感じられる場合)である。
 プレイに厭きた状態とは、ゲームすることによって能動性を発揮する必要性を感じなくなった状態である。ゲームを完全攻略した場合(あるいは、そのように感じられるようになった場合)に発生する。
 プレイする気をそがれる状況とは、能動性の発露の必要性を見失った状態である。すなわち、ゲームにおける障害を突破した時点で、極めて安易な方法でその障害を突破する方法が別に存在した場合などである。

 ここで問題となるのが、諦めと厭きへの対応が矛盾する点である。障害要素の観点から云えば、強固な障害はプレーヤーに諦めを誘発させるが、厭きさせない。難易度の低い障害は反対に対処が楽なゆえに厭きが来るが、諦めることはない。狭義のゲームバランスの確保とは、基本的にはこの諦めと厭きの中間点を模索する作業である。

 ゲームバランスを確保する際には、プレーヤーのプレイの上達進度を考慮しなければならない。プレイの上達進度は、ゲーム内容と予想されるプレーヤー層の一日あたりのプレイ時間によって決まる。
 ゲーム内容には、1)ゲーム内容がプレイしないかぎり上達しない内容(いわゆる「覚えゲー」)と、2)上達にある程度の知力あるいは知性が必要な内容とがある。また、プレーヤーには、a)一日あたり比較的長時間プレイ出来る、若年層に代表される層と、b)休日などのみ長時間プレイできる層と、c)ほとんどプレイ時間がとれない層に分けることが出来る。
 1)のゲーム内容はa)のプレーヤー層と相性が良い反面、b)、c)のプレーヤー層とは相性が悪い。2)のゲーム内容はプレーヤー層全てに問題はない反面、諦めや厭きが発生しやすい。

 それゆえ、a)のプレーヤー層に対して1)のゲーム内容を提供する場合には、難易度を高めにバランスをとるのが良い。b)、c)のプレーヤー層に対しては、基本的に1)の内容のゲームは提供しない。提供せざるを得ない場合には、全体的に難易度を低めにする。
 また、a)のプレーヤー層に2)のゲームを提供する場合には、プレイ時間による技術の上達が望めないために諦めが発生する可能性を考慮に入れ、導入部の難易度を低めに抑える。b)のプレーヤー層には、じっくりとプレイでき、内容的に攻略方法が記憶に残るようにゲームバランスを整える。c)のプレーヤー層には、知的な対応が即上達に結びつくようなゲームバランスを旨とするべきである。





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