15パズルで数学しよう! 〜5〜


 

もうひとつの判定方法! 前編(★)

 まずは、前置きからお話します。

 私が15パズルの判定方法を初めて知ったのは、高校2年の時だったと思います。
 15パズル自体は小さい頃から知っていて(プラスチック製のものを幼稚園くらいの頃に買ってもらい、それを今でも大事に持っています)、でも、パズルを全部ばらしてから入れ直してやると、完成できる時と、出来ない時−−即ち14−15パズルの形になってしまう時−−があるのを、とても不思議に思っていました。

 そこで、数学好きだった私は、なんとかしてその法則が見つけられないか、と、何回も何回も繰り返し15パズルをやって、その初期配置をメモしておいて、完成できたかできなかったかをチェックしていました。
 そしてある日、どうやらその法則らしきものをみつけたのです。
 そう。自分で見つけたのです!
 私は嬉しくなって、同じく数学好きの友人に、見つけたということとその私の見つけた方法を教えました。するとその友人は。
「えー、違うよ。『転倒数』っていうのを数えるんだよ」

 えぇ〜!?
 最初ははっきり言ってショックでした。自分が見つけた法則を、相手はもう既に知っていた、しかも自分の見つけたものは『違う』と指摘されたのですから。
 でも、そんなはずはない。証明なんて出来ないけど、少なくとも今までのパターンの中に例外は一つも無かったのだから。
 そこで私はその友人から聞いた『転倒数』という考え方と、自分の見つけた法則との間に、なんらかの相関関係がないかと調べました、そして、見つけたのです!
 相関関係アリアリ(笑) その二つは、全く同値な条件だったのです!
 つまり私は、その時『本当の答とは本質的に違う、間違ったもの』を見つけたのではなく、『相手が知っていた答と本質的に同じな、別の答え』を見つけたのです!

(注:『同値な条件』という数学用語を使ってしまいましたが、これは簡単に言えば『そのどちらからでも全く同じ結果が出る』ということです。
 もうちょっと詳しく言うと、2つの条件が『同値』とは、『一方から他方が導かれ、かつ他方から一方が導かれる』時のことを言います)

 さぁ、ここまでが前置きです。
 つまりこのセクションでは、その時私が見つけた『同値な条件』を紹介しようというわけです。

例1
10
14 15 12
11 13  
  例2
15 10
10 12
14 13  
 
  例3
10
14
11
15 12 13  
  例4
10
14 13
11 12 15
 
図1.8 15パズル(成立する例)
 まずは、15パズルの成立する例をいろいろとピックアップしてみた右の図1.8 を見てください。
 これが、完成する15パズルの配置であることを、今までのように転倒数を使って調べることもモチロンできます。でもそれはここではおいといて、次の作業をしてみてください。
 まず、紙と鉛筆を用意してください。用意が出来たら、4×4のマスの、一番左上の数字を見ます。例えば例1では、[9]ですね。それを紙の左の方に、左端にちょっと隙間を空けて書き込んでください。では次に、その数字の示すマス、即ち、その数字が完成したときにどこに来るかという、そのマスを見てください。左上からその数だけ数えたマス、ってことですね。例1によると、9番目のマスには[4]が来ています。それを、先程書いた数字のすぐ右隣に書き込んでください。
 これを暫く繰り返してみてください。例1では、このようになりますね:

9,4,6,8,7,1,...

 ここまで来て、また[9]に戻ってしまいます。このように途中で同じ数字が出てきたら、今度はその数字は横に書かないで、その代わり今まで出てきた数字をカッコ()で括ってください。 そして、今まで書いた数字の中に入っていない数字から、また同じ操作を新しくはじめてください。
 また時として、数字とその位置が一致している場合があります(例1の[12]、例3の[1]や[8]など)。この時は、その数字一つだけをカッコ()で括ってください。

 最終的に、そこに書いてある15個の数字全てが出そろいます。そうしたら終わりです。例1〜4を実際そのように書き並べてみると、次のようになります:

例1:(9,4,6,8,7,1)(3,5,10,14,13,11,15,2)(12)
例2:(3,15,13,14,6,2,1)(11,8,7,5,4)(10,12,9)
例3:(1)(9,5,3,7,6,14,12,2)(10,11,4)(8)(15,13)
例4:(6,13,9,11,15,4,10,12,2,3,8,7,5,14,1)

 これを見て何か気付きませんか?
 っていきなり言っても、無理でしょうね(笑) では、次の点に注目してください。
 今、数字を順に辿っていって、巡回しているいくつかのグループに分けました。それらが、いくつずつの数字のグループに分かれているか、つまり、それぞれのカッコ()の中にいくつずつ数字が書かれているか、見てみてください:

例1:6+8+1
例2:7+5+3
例3:1+8+3+1+2
例4:15

 こんな風になっています(当たり前ですが、この足し算の結果は必ず15になります)。
 ここで一つ、また新しい言葉を定義します。
 上のような、カッコ()で括った数字の列で、数字の個数が偶数のものを偶循環奇数のものを奇循環、またそれらを総称して循環と呼ぶことにします(注:これは正式な数学用語ではありません)。また各循環の、カッコ()の中の数字の個数を、その循環長さと言います(注:こちらは数学用語です)。
 では、例1〜4のそれぞれで、偶循環がいくつあるか見てみてください!
 例1では2個(長さのものと長さのもの)と例3でも2個(長さのものと長さのもの)、例2例4は0個です。
 そう。私の見つけた法則というのは、これなのです:

その時の盤面で、偶循環偶数個だったらその15パズル完成できる奇数個だったら完成できない

 図1.115パズルの図でも確かめてください(この例では偶循環は2です)。また上の性質の後半については、14−15パズル図1.2 参照)や、逆15パズル図1.3 参照)で確かめてみてください(それぞれ、1と7になっています、即ちどちらも奇数です)。

 次回は、この方法がなぜ転倒数を数える方法と『同値』なのか、という証明をしたいと思います。

To be continued...



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