今、個人的にFM録音に凝っている。もちろん録音媒体はカセットではなくてHDDだ。
この録音をするために、パソコン用のFMチューナーボードを買った。
もちろん新品だ。
しかしご想像の通り、ここで話に乗せるくらいだから、それは動かすのに途方もない努力を必要とした。新品なのに(しつこいかな)。
これは、その血と汗(冷や汗)と涙の記録なのである。
某局の某FM番組が面白いことを知って、聞いてみると確かに面白い。
数回MDに録音した後、MDがそのうち膨大な数になってしまうと判明したために、どうしてもパソコンでFM録音したくなりFMチューナーボードを購入した。
セットアップ完了!
ワクワク。
はやる気持ちを抑え、もう一度接続を確認してスイッチを入れる。
しかし、動かない。それどころか、パソコンが起動しない。
たしか、パッケージにはWindows98でも動くとかいってあったはず...と思って見ると、やはりそう書いてある。
ああだこうだと試した後、ついにギブアップしてサポートに電話した。
当時使用していたOSはWindows98だったが、VIAチップセットでは動かないという。
"最近のマザーボードならWindows98でも動く"、と問い合わせの電話口の向こうの主は語った。さも「当然」というふうに。
そこで、ついこの間壊れてマザーボードを買い直したばかりマシンのWindows98で動かすと... やはり動かない。
このマシン上のXPでやっと動かすことができた。というか、そのチェックのためにWindowsXPを買うハメになっていた。
どうやら、このふざけたボードメーカーは、「売っちまえば、こんちのもんだ、こっちのもん」ってなことで、Windows98でも動きますと書いたみたいだった。
この"サポートに問い合わせるよう"と思うまでの道のりが、並ではなかった。
USBオーディオデバイスを持つ私は、このFMボードが受信内容を当然オーディオドライバを使用して内部録音されるものだとばかり思っていたのだ。というか、市販のPCIボードでその他の録音方法がこの世に存在するとは、思ってもいなかった。
そう予測していた私は、何ゆえにサウンドボードのマイクINにFMチューナーボードの音声OUTを接続するのか理解できなかった。
このことは、このボード会社でも表沙汰にしたくないことだったらしく、パッケージの外側にはいっさい記載されていなかった。要はサウンドボードのマイク入力に接続しないと、内蔵チューナーの音すら録音できないものだったのだ。
最後の手段としてとったのが、金をかけてサポートに電話する手段だったのだ。
なぐさめとしては、サポートに電話する前に、もしかしたらこのボードはとんでもない代物で、マイクINにつながないと録音すらされないのではないかということが、頭の片隅で理解でき始めたことだった。
とりあえずXPで動くので一応納得はしたが、問題は他にもあった。
なんと、タイマーが動作しないことがあるのだ。
いつでも動作しないのかというとそんなこともなく、動作するときもある。まあ動作して当たり前だが。
どんなときに動かないのかいろいろ試してみたが、メーカーのバグ取りを請け負っているわけじゃないから、アホらしくなっていい加減にしておいた。
そんなわけで、私の購入したFMチューナーボードは、タイマー予約したら本当に動くかどうか動かしてチェックしてみなければならないという、とでもない代物なのだ。
そして不幸は続いたのである、どこまでも。
信じられないことに、録音したものをヘッドフォンで聞くと、無音声部分でビートノイズが聞こえるのである。
ビートノイズとは、ピージュワジュワピシーというファクスのネゴシエーションの音みたいなやつだ。
もちろん周波数はあっている。
アンテナ入力レベルも完璧だ。
今時、周波数がぴったり合ってるにも関わらず、ビートノイズが出力されるチューナーがあるなんて信じられますか?
なんかこいつは、本当に数十年前のアナログ式FMチューナーみたいなやつなのである。
こいつは解決しそうにもなかった。やるなら、ボードに載っているチップそのものを改造しなければならない。私は、ガックリと肩を落としてあきらめた。
そういえばその昔、アナログチューナーの局合わせをするということは、オーディオを趣味とする人間にとって、ほとんど録音する前の儀式のようなものであった。
各社はなんとかシンセサイザという技術を開発しあって、熱などでチューニングがずれないデジタルチューナーを販売していたが、そんなものは普及し始めても高嶺の花だった。
そんな昔が懐かしくなった。
そして我に返ったら、このエッセイを書いていたのである。
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