最初に買ったビデオレコーダーは、ビクター製で購入価格は19万円くらいだった。
メーカー標準価格は、23万くらいだったような気がする。
もちろん、S−VHS機ではなくVHS機だ。
今ではそんなものは見あたらないが、テープの横サイドを頭にして入れるタイプであった。
だが性能はピカイチで、当時出たばかりのガラス遅延素子を使用した、ノイズフィルターが搭載されていた。
それまでビデオカセットの発色といえば、大きな単色の映像を表示すると、所々に別な色のノイズがチラチラのるというのは常識だったが、このレコーダーのノイズフィルターは、このようなノイズをことごとくとってくれた。
そのころハリウッド映画で流行っていたハイトーンの映画を、きれいに録画してくれたのである。
わたしはそれに加えて、独自の高画像化を施していた。
タイムベースコレクターなどという、高度なノイズフィルターは付いていなかったので、防震には必要以上にコリまくっていた。
レコーダーの底には、アルミダイキャストの防震脚をつけていた。
脚ひとつが1Kgくらいのもので、レコーダーの奥の方に寄せようと思って無理な姿勢になって片手で持とうとすると、腕が痛くなるような代物だった。
レコーダーの鉄板には、防震用の鉛板が3本載っていた。
これも1本が1Kgくらいあり、それを3本も載せているものだから、レコーダーの鉄板は歪んでいた。
もちろんAC100Vラインのアース側をあわせるために、アースライン検出装置は必須アイテムだった。
ご存じない方のために解説すると、アースライン検出装置は、電化製品のACプラグを差し込むことにより、2本あるプラグのどちら側がアース側かを検出する装置だ。
100Vのアース側をそのビデオのACプラグのアース側にあわせることで、映像の再現性が驚くほどに違ってくるのだ。
さらに、これをご覧になっているみなさんには笑われるかもしれないが、ビデオテープにも防震用の薄い鉛板が付けられていた。
これはカセットテープで経験した技術で、テープの正面や背面レーベルを貼る部分に鉛板テープを切って張ることであった。
SONYのなんとかという準業務用ビデオテープ(1巻4,000円)を使えば、そんなことをすることなく、間違いなく高画像化が可能だということはわかっていたが、1巻4,000円はきつかった。
その頃私が使っていたテープは、3巻で1,200円くらいの富士フイルムのHGであったので、そんなものを通常録画用に使えるわけがなかった。
この頃のビデオカセットは、プラスチック成形が結構いい加減で、ケースの防震をすることで、かなり映像のノイズを減らすことが可能だったのだ。
私は、この頃のビデオの映像に十分満足していた。
しかし、ほとんどS−VHSの登場と同時期に、それは突然崩れていった。
最大の理由は、その防震用鉛板だった。
何度も再生されたビデオテープに付けられたそれは、その挿入によって少しずつ、鉛版のカケラをビデオのヘッドにくっつけていった。
そのために、ビデオヘッドが徐々に傷ついていったのだった。
再生映像には、徐々にあらゆるノイズが載るようになり、そのうちにまともに再生すらできないようになってしまった。
購入後5・6年して、最初のビデオレコーダーはその寿命を全うした。
S−VHSとともに、最も一般的になった標準的な技術は、おそらくフライングイレースヘッドだろう。
最初のレコーダーを買ったときから、録画開始ポイントから映像が乱れずに録画できる、フライングイレースヘッドをもったレコーダーを手に入れることは、一つの目標になっていた。
現在でも、フライングイレースヘッド付きのビデオレコーダーは、なしのそれよりも1万円程度高いようだ。
それでも4万か5万あれば買えるのであるから、フライングイレースヘッド付きなら22万円以上などという状況は、とっくに終了している。
困った問題は−あたりまえのことではあるが−、何年も使用しているとヘッドがへたってきて、調整されているかどうかという問題はともかく、映像の縁がブレてくることだろう。
これは3倍モードで顕著に現れて、映像のエッジに沿ってプチプチウネウネと、ノイズが現れてくるようになるのだ。
通常、この現象は購入してから、2年くらい経った頃から現れ始める。
いま現在、そういう状態になり始めてかなり経っている。
映し出される映像が、そろそろヘッドが限界に近づいていると訴えかけているのだが、以前も書いたように、DVDレコーダーの性能がまだ過渡期にあるために、お金がもったいなくてDVDレコーダーを買えないでいるのだ。
おそらくDVDレコーダーの理想型は、PSXに"おまかせ録画"と"ムーブ機能"、"スカパーチューナー連動機能"をつけることであろう。
PSXの登場によって、DVDレコーダー市場の小売店売価を大幅に下げたことは大いに評価されるべきだろうが、もう一段の奮起をお願いしたい。
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