その昔高級ビデオといえば、ジョグダイヤルつきだった。

全盛期には、一番廉価なクラスの一つ上のクラスでさえも、ジョグダイヤルつきリモコンがついているなんてことは当たり前だった。

ジョグダイヤルは無限回転式だったが、全盛期以降ポジション式というのかクイックダイアル式というのか（正確にはなんというのかわからない）センタリングポジションから左右にどのくらいの角度回してあるかで、移動スピードが変化するというものがほとんどになった。これをリングで行い、リングの中央に配置された円盤（指を当てるクボミがある）でジョグダイヤル操作ができるようになっているものだった。

私の感覚では、１０万円以上の売価のDVDレコーダーでは、既にジョグダイヤル付きなどというのは当たり前、７・８万円台でもほとんどの機種についてないものはないというくらいの感覚だったのだが、現実は最高級機でもついていないものが多いということらしい。

これはいったいどうしたことなのだろうか。

聞くところによれば、日本以外のアジア圏で生産されている暖房器具と相性が悪いらしく、ジョグダイヤル付きを予告した製品の仕様変更もいくつかあったようである。

その昔のビデオ時代は高級機種が出ると、マニア向けに編集機能を強化して売りにだすなんてことは企画としてあたりまえのことだった。もちろん、ジョグダイヤルもそうした動きから出てきた代物だった。

なのにどうだろう、今のDVDレコーダーの現状は。

たしかに私持っている世代のスゴ録はショボイ。

連続して発信すると、リモコンのアクションを５回に１回は見逃すし、いちいち画面が切り替わるたびに１秒くらいずつ待たされるので、パタパタ指示できない。

でもこれって２年くらい前のモデルで、私の想像では前述した世界が普通であると思っていたのだ。

HDDレコーダは、ビデオよりも編集に向くはずだ。理論的にはそうなはなずである。

テープをずっとナメているビデオよりも、編集に向くだろうということだ。

にもかかわらず、著作権の問題があるのか、編集機能を売りにした機種はまず見かけない。

もっともそういう私も、現在所持しているスゴ録なんぞは、編集しても高速ダビングすると頭と尻が正確に記録できずに微妙にズレてしまうので、あきらめてしまって編集などということ自体をやらなくなってしまっているのではあるが．．．

編集のどうのといったことは、コピーライトの問題が出てくるとすぐに後ろに隠れてしまいたがるところがあるようだが、そういった姿勢がDVDレコーダーで編集機能が確立させないまま、次世代DVDの時代に突入させてしまった原因なのではないだろうか。

どちらかといえば、ジョグダイルよりも今欲しいのは、毎週あるいは毎日定刻に録画される番組を、それごとにフォルダにまとめて格納してくれる機能だ。

CSなどで毎日録画する番組が多いと、録画リストに毎週分が割り込んできたりして、その録画の内容が何がなにやらわからなくなってしまうことが多い。

自動的に整理されてフォルダに入っていれば、安心して整理できる。

近年はDVDレコーダーもデジタル放送対応になって、CS110チューナーなども内蔵されているので、連動がどうのとかタイトルがどうのといった問題は解決されているようであるが、私のようにいまだにデジタル放送コンテンツに疑問を感じている人間にとっては、CS連動とかタイトルが便利になったからといって浮かれて使う気には到底なれない。

アナログ波が停波されるまであといくらもないが、なんだかよくわからない日本仕様のコピーアットワンスが解決されそうだというお話はその後まったく聞こえてこない。

いい加減にしてほしいものだという気持ちは、決して私一人のものではないだろう。

だからこそ、その辺に関係しない機能の高速ダビングしてもズレないダビング機能や、再生のすぐ下のメニューが「削除」などというふざけた仕様を改良したり、フォルダにまとめるという機能を搭載する絶好の機会だと思うのだが、いかがなものであろうか。

確かにここ数年、あるいはここ１０年くらいの日本の技術力は、ＨＤＤレコーダーのリモコンを例としてあげるまでもなく低下しているように見える。

デジタルコンテンツに関する限り、自らの呪縛にはまり込んで、いまだ抜け出せないでいる。

デジタルで著作権どうのこうのという問題があることは理解できるが、だからこそ今、とりあえずそういうことはおいておいて、昔のビデオ王国を作ったときのように、

「ちょっとアンタ、もちろん編集だって？任せなさいよ。なんたってウチは技術帝国日本のメーカーなんだから。こんなのちょちょいのちょいよ」

そのくらいの半分思い上がりのような開発競争意識が、かつてビデオデッキのジョグダイル編集機能競争を作り上げていたような気がするのである。

そうなればリモコンジョグダイヤル採用機種なんてものは、ありきたりなものになっているはずなのだが。