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NW−S739Fレビュー
NWーS616Fの4Gが手狭になってきたことと、室内用と屋外用のモバイルオーディオを分けたいという願望があって、ついに16GのNW―S739FとATH―M50を手に入れた。
ATH―M50はもちろん、付属のノイズキャンセルヘッドフォンが使えないということを見越してのことだ。発展途上のカナルタイプはすべて候補から外した。
ヘッドフォンで一番惹かれたのは、あまり巷の評判のよくないアートモニターシリーズATH−A900だった。歪がなく倍音を綺麗に輪郭まで再現し、低音の音の硬さの違いまでも再現している感じだったからだ。
どちらというとATH−A900は音楽を綺麗に聞かせるというタイプで、分解能を求めるモニター用としてはどうかと思われる。
だがATH−M77の高音再生に通じるものというか、それ以上の再現性を感じて、実売2万円に満たないヘッドフォンで何を買うかといわれたら、迷わずATH−A900をあげたい。音の分解能という点ではATH−M50にも劣るが、再生音が綺麗な音楽を聴く気にさせるヘッドフォンだと思う。
そこまで気に入っていてなぜATH−M50を買ったかというと、かなり悩んだのではあるが、要は「A900のコードが3mだったから」、それだけの理由だ。
もちろんオーディオテクニカには、ATH―A900の0.5mケーブルバージョンを是が非でも出してほしいということを伝えておいた。

カナルヘッドフォンはもとより、ノイズキャンセルヘッドフォンにいたっては全くの発展途上にあって、今回はうるさい場所ではとりあえず役に立つとだけいっておきたい。
よって付属のノイズキャンセルヘッドフォンについてはあてにしないで、ATH―M50での評価でいきたい。
で、NWーS616Fと比較すると音の印象は、かなり違う。
サラウンドをかけない状態で、NWーS616Fが頭の中に定位するのに対して、は頭の周囲に定位する。
高域の歪みが少ないのも特徴だ。
高域の歪みやすいMD55で試聴しても、まるで別なヘッドフォンに変えたのかと思えるほど歪みがなくなる。
よく聴くと、MD55がもともと持っている歪みは若干残っているのだが、聴き流す程度には気づかないくらいになるのだ。
NW―S739Fは購入してよかったと思う。音質の点でも、現時点では最高品質のセットだと自負できる。
ただ音楽が持ち運べるだけのものだった時代と比較すれば、今回手に入れたものは雲泥の違いだろう。そこに至る技術的進化の陰の努力に頭が下がる思いだ。
だがそれでも、もとオーディオファイルとして一言いいたい。
その昔、オーディオファンは自分の好みの音を出すためにスピーカーを変えたりアンプを変えたりできた。
スピーカーに当たるヘッドフォンに自由な選択肢がないま(カナル型ヘッドフォンにいたってはほぼ全滅といいきっていいと思う。ただし、最近ATH−CK100がベタボメされているので、そのうちに聴きにいこうかとも思う)、堅い低音や柔らかい音が簡単に選べるようにするべきではないか。
何バンドかのグラフィックイコライザはついているが、使いずらい上に、音質的にあまり効果がない。何よりも一番動かしたい帯域が動かせないのがはがゆい。
はっきりいえば、EX90SLに代表される諧調のないボンつくだけの音をもってしてモバイルプレーヤーという時代は終焉しているのではないかということなのだ。
私がEX90SLをもちあげすぎたのがいけなかったのかもしれないが、それが世にでてから5年、ソニーの音はなにも進化していないではないか(まあ、ちょっといいすぎか)。
今回紹介しているNW―S739FとATH―M50の組み合わせででる音も私が必要としている最低限の音が出るだけで、低音部や高音部の硬さや柔らかさなどの鳴らし方を自由に変えられるところまでは至っていない。
今回の組合せもモバイルオーディオとカナルヘッドフォンのスマートな理想的な組合せという世界からは程遠い。
ソニーとオーディオテクニカを組み合わせてさえこれだ。
ソニー1社でできるようになれとはとてもいえないが、モバイルオーディオの世界の頂点はこんなものではないはずだ。
リニアPCMマルチトラック録音ウォークマンや超高音質ウォークマンの開発、付属ヘッドフォンの高音質化や付属ヘッドフォンの廃止など、いくらでも開発の余地はあるはずだ。
ipodは音質ではかなわないと思ってか、ゲーム機への転身を図ろうとしているようだか、ソニーにはぜひとも音での世界での頂点を目指してもらいたい。
ストリンガー氏がなにやら不穏な事を言い出しているようだが、空白の10年の再燃だけは勘弁してほしい。
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