4 枚メジャーのシステムでブリッジを覚えて,久しぶりに,またブリッジを始めようという人が とまどうのは,今の主流が 5 枚メジャーに なっていることです。
交流ラウンジにも このような方が,時たま,来られます。
ブリッジのルールが変更されたわけではないのですが,ビッドの考え方が少し変ったと申し上げると,びっくりなさいます。そこで,4 枚メジャーから 5 枚メジャーへ移行する際の注意点をまとめてみました。
実は,これについては,以前に,『かずちゃんのブリッジって何?』の掲示板に,skazumi さん ご自身が簡単な投稿をなさったのですが, ここでは,それをふくらませた形でまとめました。
もう一度ブリッジを始めようという方の お役に立てばと思います。
メジャースートは得点の上でもビッドの上でも有利ですが,ビッドシステムの中でも,この 2 種類を区別して考えます。
その顕著な表れとして,
「 1,1 オープンには ( 4 枚ではなくて) 5 枚必要である」
となっており,このため,5 枚メジャー・ビッドシステム ( 5-card major bidding system) と呼ばれています。
4 枚メジャーのシステムは,ビッドにかなりゆとりがあり,ゲームやスラムを狙うときには,
ほとんど自分たちだけでビッドできました。
ところが今のブリッジでは,このような良い手に ディフェンダーが積極的に介入します。
二人だけの楽園は もう無くなってしまったのかも知れません。
この状況を,「だから ブリッジは面白い」と言う人と,「せちがらくて つまらなくなった」と言う人がいます。
これも,「競り合う」ということから お分かりいただけると思います。
たとえば,オープナーの切り札をサポートしてダブルレイズ (1→ 3,
1→ 3) するのは
Forcing Raise から Limit Raise に変更されました。
ふたり合計して 8 枚のカードがあれば,ゲームを狙うための切り札として有効なので,それを何とかして探そうとします。
弱めの手でも,切り札が 9, 10 枚以上あると,強気でビッドすることがあります。
たとえば,1NT オープンに対して ステイマンを使うことは必須であり,トランスファもよく使われます。
ブリッジのビッドは,Charles H. Goren が 1949 年に提案したビッド・システムにより,分かりやすくなったと言われています。その出発点は,
A=4,K=3,Q=2,J=1
と HCP を数える おなじみの方法です。これは,もちろん,現在もそのまま使われています。
HCP のほかに,カードの枚数分布を考慮する「長さ点」があります。
Goren の方法では,短いスートに注目して
2 枚のスート (ダブルトン) があれば +1
1 枚のスート (シングルトン) があれば +2
0 枚のスート (ボイド) があれば +3
と加算していました。
この方法は現在でも一部の人が使っていますが,多くの人は,長いスートに加点する方法を採用しています。
それは,
5 枚のスートがあれば +1
6 枚のスートがあれば +2
7 枚のスートがあれば +3
というものです。
これを Length Points と呼びます。そして,これを HCP に加えたもの
TP = HCP + LP
が総点 TP (Total Points) です。
この TP を 普通は単に「点 (pts)」と呼び,ハンドの評価に使います。
ノートランプ・コントラクトで,ダミーが長いスートを持っているとトリックを沢山取れるので,
長さ点は,ノートランプでも ダミーについてだけは 有効だと考えられています。
変更はありません。
スートのコントラクトでダミーになって,切り札をサポートできる場合には,ダミーの切り札で切れることを評価して
サイド・スートの内容 | 切り札 3 枚 の場合 | 切り札 4 枚 の場合 |
2 枚のスート (ダブルトン) | +1 | +1 |
1 枚のスート (シングルトン) | +2 | +3 |
0 枚のスート (ボイド) | +3 | +5 |
ゲームをつくるのに必要な強さは,ふたりの点数を合わせて
3NT 26 pts
4 の代 26 pts
5 の代 29 pts
6 の代 33 pts
7 の代 37 pts
というのが,Goren 以来の数字です。
この数字に 基本的には 変更はありませんが,1行目だけは
3NT 25 pts
が普通になっています。その理由として,「Goren の時代よりプレイの技術が進んだため」と
いう説明を何かで読んだ記憶がありますが,どこだったか思い出せません。
25 という数字は,プレイに自信がある人のための数字と考えてよいでしょう。
1NT オープンする人の手は,
バランス・ハンド(balanced hand) であって,
16〜18 HCP
というのが普通です。
これも基本的には変更されていませんが,上に述べたように 3NT に
必要な強さが 26 pts → 25 pts となったことに伴って
15〜17 HCP
とする人が多くなりました。
これにより,1NT オープンの機会が 37% 増えます。
バランス・ハンドとは,カードの枚数の分布が
4-3-3-3,
4-4-3-2,
5-3-3-2
の 3 通りのどれかに当たる場合です。
したがって,5 枚のスートを持っていても,1NT オープンすることがあります。
5 枚のスートは,メジャースートのこともありえます。
ときどき誤解が起こるのですが,「 5 枚メジャーシステム」は
ステイマンは,1NT オープンの後で,メジャースートの 4-4 フィットを 探すコンベンションです。 4 枚メジャーのときから使われていますが,5 枚メジャーでも非常によく使われます。
また,レスポンダが 5 枚のメジャースートを持っている場合には,ジャコビ ・トランスファ (Jacoby Transfer) と
いうコンベンションを使うのが有効であり,かなりよく使われています。
はじめに述べたように,メジャースートを切り札にしてゲームがあるかどうかを探そうと努力するのです。
要するに,1NT オープンは 手の形と強さを表現するためのビッドであり, 最終コントラクトがノートランプになると決まったわけではありません。この事情は 4 枚メジャーでも同じですが, 5 枚メジャーの方が この意味合いが強くなっています。
1 の代のオープンでは
変ったのは メジャースートとマイナースートを区別して考える という点です。
どちらかのメジャースートで二人合わせて 8 枚の切り札があれば,ビッドを有利に進めることができるので, メジャースートでのフィットをなるべく見つけやすくしよう … というのが,5 枚メジャーシステムの基本です。
これらのオープニング・ビッドは 5 枚以上の切り札を保証します。
ここが,4 枚メジャーとの大きな違いです。
オープナーが 2 回目に同じスートを リビッドするのは,原則として,6 枚を保証します
5 枚のメジャースートが無ければ,1 または 1 オープンします。
もちろん 4+ 枚のマイナースートがあれば,問題はありません。
しかし,ふたつのマイナースートがどちらも 3 枚以下の場合には,どちらのスートを選ぶかについて 約束があります。
普通の約束では,
一般に,レスポンダが新しいスートをビッドするとき,それなりの強さと,4 枚のカードを保証します。
ところが,1 オープンに対して 2 をビッドする場合だけは例外で,5 枚のハートを保証する約束になっています。
こう約束することにより,ハート 3 枚の弱い手で,オープナーが 3 をビッドできるように
しています。
4 枚メジャーの場合には,シングルレイズのサポートに 4 枚 (あるいは Qxx 程度の 3 枚) が必要でした。
5 枚メジャーの場合には,どんなスポット・カードでも 3 枚あれば (オープナーが 5 枚を保証しているので) 十分です。
慣れないうちは,3 枚でのサポートを忘れて 1NT をビッドすることがあるので,注意しましょう。
切り札のサポートが 4 枚ある場合,4 枚メジャーのシステムでは,次のようにビッドしていました。
(A4) 13-15 pts ⇒ ダブルレイズ (Forcing Raise)
(B4) 10-12 pts ⇒ 直接にこれを示すビッドは無いので,
1,2,2 を経由する。
ところが,5 枚メジャーのシステムでは,これが逆で
(A5) 13-15 pts ⇒ 直接にこれを示すビッドは無いので,
1,2,2 を経由する。
そして,次回のビッドで,ゲームがあることを伝える。
(B5) 10-12 pts ⇒ ダブルレイズ (Limit Raise)
となっています。
注意を要する点として,リミットレイズには 4 枚 (したがって,合計で 9 枚) の切り札が必要です。もしも 10-12 pts で 3 枚ならば,1, 2, 2 のどれかを経由して (temporizing bid),次回に 3 の代に上げます。
4 枚メジャーの場合には,オープナーのスート以外にすべてストッパがあるノートランプ向きの手の場合に
13-15 pts ⇒ 2NT
16-18 pts ⇒ 3NT
とノートランプをビッドします。これを Forcing Notrump Response と言います。
こういうゆったりとしたビッドは,今は使われていません。
その代りに,
11-12 pts ⇒ 2NT
13-15 pts ⇒ 3NT
これを Limit Notrump Response と言います。
Bridge Forum の改訂版 SAYC では,こちらを標準として採用し,
しかも,その使用をマイナースート・オープンに限定しています。
特定のパートナーと 2NT の意味を確定できる場合にはどちらにしても問題無いのですが,オンラインで不特定の 人と組んだ場合には,2NT の意味で食い違いが生じるおそれがあります。 1 の代のオープンから 直接に 2NT,3NT をビッドする代りに,ほかのスートを一時ビッドすることもできるので,誤解のおそれがある場合には, 上のような 2NT,3NT を避けるのが良いと思います。
レスポンダのシングル・ジャンプ・シフトは,19+ pts でスラムを狙うビッドです。変更はありません。
オープナーがジャンプ・シフトするのは,4 枚メジャーの場合,21+ pts の非常に強い手でした。
しかし,これでは 2 オープンする手とほとんど重なってしまうので,19 pts くらいで
ジャンプ・シフトします。
5 枚メジャーの場合,リバース・ビッドをなるべく有効に使うので, これだけの強さがあっても
(リバースにより強い手を示せる場合には) ジャンプ・シフトしないこともあります。その代りに,
リバース・ビッドを 1 回フォーシングと約束します。
4 枚メジャーと 5 枚メジャーで違いが生じるのは,この場合です。
とくに,オープナーが弱い手を持っている場合が問題です。
表題に書いた「2オーバー1 応答」とは,たとえば,オークションが
You | 左オポ | Pard | 右オポ |
1 | パス | 2 | パス |
? |
5 枚メジャー | 4 枚メジャー | |
---|---|---|
弱 い 13 〜 15 | (A) 2 の代で自分のスートをリビッド(6枚) | (A) 2 の代で自分のスートをリビッド(5枚) |
(B) 2 の代で新しいスート(リバース不可) | (B) 2 の代で新しいスート(リバース不可) | |
(C) 2NT | ||
(D) レスポンダのスートを 3 の代に上げる | ||
強 い 16 〜 18 | (C) 2NT | |
(D) レスポンダのスートを 3 の代に上げる | ||
(E) 3 の代で自分のスートをリビッド | (E) 3 の代で自分のスートをリビッド | |
(F) 新しいスート ( 3 の代も可) | (F) 新しいスート ( 3 の代も可) | |
(G) 新しいスート (リバースも可) | (G) 新しいスート (リバースも可) | |
(H) レスポンダのスートをジャンプレイズ | (H) レスポンダのスートをジャンプレイズ | |
最 強 19 〜 | (I) リバース | (I) リバース |
(J) ジャンプシフト | (J) ジャンプシフト |
この表で,違いが はっきり分かります。
4 枚メジャーの (A) リビッド には,5 枚あれば十分ですが,
5 枚メジャーの (A) リビッド には,6 枚必要です。
4 枚メジャーでは
(C) 2NT
(D) レスポンダのスートを 3 の代にレイズ
は,どちらも強い手を示します。
ところが 5 枚メジャーでは,これらを弱い手のビッドに割り当てます。
こうしておかないと,5 枚メジャーの場合,何もビッドできなくなってしまうからです。
(C) 2NT は,レスポンダがビッドした以外のスートに ストッパがある弱い手を示します。
また (D) 3 の代に上げるのは,3 枚でも十分です。
苦しいところですが 仕方ありません。
|
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|
もしも,(A)〜(D) の どれにも当てはまらない弱い手の場合には,しかたありません。 5 枚のハートで (A) リビッド するしか ないですね。でも,その場合には,ハートの内容が良いはずです。
いずれにしても,1-2 と 1-2 の ビッド経過は,オープナーが弱い手の場合に苦しいことを,レスポンダは理解する必要があります。
4 枚メジャーの場合には,2,2,2,2 オープンは,
いずれも,自分ひとりでゲーム ( 4,4,5,5) ができるような ものすごい手を示し,Demand 2 と呼ばれていました。けれども,そんな手は滅多に来ないので,
使う機会がありません。
そこで,2, 2, 2 を
ウィーク 2 ビッドとして
使うのが普通になっています。 具体的には,5 〜10 HCP で 6 枚の良い切り札がある手で,これらのビッドでオープンします。
その目的は,プリエンプトです。
英語の単語がずらっと並んでしまいましたが,強い手をこのビッドに全てまとめてしまったのが,表題の 2 オープンです。
Weak 2 ビッドというのは,(妨害が主たる目的なので) 割合に安易に使えますが,その
代償として,ほんとに強い手の場合には,この 2 を使わなければなりません。 2 の後のやり取りは,
複雑です (この点だけは,4 枚メジャーから移行する方にも,初心者の方にも,いつも申し訳なく思っています)。
日本では,上のようなビッドが普通ですが,外国のオンラインサイトに行くと, Weak 2 を使う人は 少ないようです。
「私はどちらでもいいけれど,あなたはどちら ? 」と尋ねると,「s2w3」という答がよく返ってきます。
問われるまでもなく,「s2w3」をニックネームにしている人もいます。
その意味は
s2 = strong 2
w3 = weak 3
です。つまり,
2 の代のオープンは ストロング
3 の代のオープンは プリエンプト
ということです。
ちょっと 4 枚メジャーから話が逸れますが,このときの「ストロング」がどの程度なのか,
未だに不明です。なぜかというと,何人もの「s2w3」氏が,結構よく 2 の代でオープンするのです。
私は,2 相当の手でしか s2 でオープンしないのですが,
それよりも頻繁です。パートナーの手が開いて見ると,16 HCP くらいで「ストロング 2」と
いうのが結構ありました。コンベンションカードに "Intermediate" と書かれているのが,これなのかな。
それはともかく,いまでは,ストロング 2 がアラートを必要とするのだそうです。
ブリッジのルールに変更はありませんが,ダブルを掛けられてダウンした場合の失点が,少しだけ変更されています。
正確には,ノンバルでダブルをかけられてダウンした場合,
第 1 トリック=100点,第 2 トリック以降=200点
でしたが,これに
第 4 トリック以降=300点
というのが新たに加わりました。リダブルの場合には,この2倍です。
これにより,ノンバルだからといって,相手のスラムに対して無謀なサクリファイス・ビッドを仕掛けにくくなりました。