東京のマスメディア関係者が「メディアのウソを暴く」という本を出すとします。既に市販されたこの様な類の本の殆どは著者の住所・出版社・取次業者・印刷所の全てが東京（及び都内に通勤できる範囲の南関東）であり、取材の協力・資料提供社も殆どが東京企業ですから、現状で新たにそういう「メディアのウソを暴く」といった本を出す場合も同様になるでしょう。

ところで、もし貴方自身が東京のマスメディア関係者であり、この様な「メディアのウソを暴く」系の本を出すとすれば、どういう問題があるでしょうか？

貴方が豊富なコネのある東京のマスメディア人であり、かつ「大富豪なので自費で海外で印刷して自費で日本中にバラ撒く 」とか、「誰かにこの先、一生家族共々暮らせる大金を貰って、メディアの仕事もこれまでの交際も一切絶つ覚悟で書く 」等のおおよそ有り得ない事でもない限り、上の５つは必ず避けられません。例えば「あるマスメディアをクビになった腹いせに内情暴露本を書いた 」という様な話が本当だったとしても、その人がこの先も何らかの形でマスメディアに関連する仕事をするつもりなら、上の２〜５は避けられないのです。

それでも「メディアのウソを暴く」本は出す、とすればどういう事になるでしょう？

となり、出来上がった本に上記１〜５に関連する部分は全くないか、関連が有るとしても大昔の済んだ話や、一通り大騒ぎになった後の既に出尽くしているネタや、ほんの楽屋落ちのゴシップ程度でお茶を濁しておいて、「真の悪口」は１〜５に該当しないＡ〜Ｅを満たすマスメディアをどこからか捜してきて、相手を選んで書くという手段になるでしょう。

日本には、戦前から東京にマスメディアを集中させる“政策”が有りますから、「メディアのウソを暴く」にもってこいのネタや事件も必然的に東京に集中しているわけですが、上記の事情により東京マスメディアの実態に関しては本当の事は書けません。海外のメディア（注１）を持ち出すか、東京（及び周辺都市）以外にマスメディアが寄っている所を捜すのです。

大半が東京企業の支店であるにせよ、ある程度規模のあるマスメディアが複数有るのは大都市に限られますから、結果的に大阪がメインのターゲットにされます（注２）。ついで名古屋、神戸、福岡、・・・辺りという感じでしょうか。文章の流れの都合や、もっともらしく見せるために本の内容に大企業の不正を入れる場合も可能な限り本社が南関東以外の企業から選ぶことになります。つまりこの場合、狙われるのも生贄にされるのも主に西日本となるのです。これは、その著者や出版社が右寄りであろうが左寄りであろうが外国の回し者であろうが同じです。他道府県への「本の販売は必ず東京の取次ぎ業者を通す」という制度がある限り避けられない事なのです。

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「メディアのウソを暴く」といった直接的にマスメディアを批判しようという本でなくとも、どのようなマスメディアにおける情報発信においても、例えばテレビ番組やテレビＣＭはモチロン、学生用のテレビ講座・ラジオ講座からカラオケ用のビデオに至るまで、特定一地域に制作関係者が集中していれば、上記の１〜５やＡ〜Ｅの条件に多かれ少なかれ当てはまることはお分かりいただけるかと思います。これが俗に言う「東京フィルタ」のマスメディアバージョンです。

ネットメディアに関して言えば、外資にせよ何にせよ、日本では彼ら東京マスメディアが、ネット辞典のような商用情報サイトやブログ等のソーシャルメディアの殆どを管理または経営しているのだから、さも真実の様に彼らに都合のいいネタ、嫌いな地区を誹謗するネタを書き込んでおいて、検索サイトの結果上位にあげることも簡単ですよネ。「特定組織＆人物によるネット検索結果の意図的な操作」というわけですが、いつもネットで検索される方、実際これが行われていると感じませんか？　管理＆経営が東京に集中している以上、これもメディアに於ける「東京フィルタ」ということになります。

「いやこれは海外からの情報だから」 な場合でも、海外の報道機関に日本の情報を送るのは東京マスメディア。海外からの特派員が在住するのも東京なら、海外メディアが提携しているのも東京マスメディア。反対に海外からの情報を送る海外特派員も東京マスメディア派遣。海外メディアの情報を受けるのも東京マスメディアです。どうみても日本への海外マスメディアからの情報も、海外マスメディアへ送る情報も、殆ど全て東京マスメディア経由です。上記の１〜５やＡ〜Ｅは多かれ少なかれ、海外メディアからの情報にも、海外へ流す情報にも当てはまるというわけです。海外メディアからの情報とされるものも、きっちり「東京フィルタ」を通っているのです。

はたして、この様に東京にマスメディアを集中させる“政策”が有る日本の状況下に置いて、東京以外の各地方のマスメディアは自由な情報の発信を保てるでしょうか？　日本各地にある東京マスメディアの支店・系列会社がダメなのは火を見るより明らかです。また地元独立メディアでも、東京マスメディア支店や系列から支援を受けつつ営業な“曲がりなりにも”な独立であれば、ここでも上記の１〜５やＡ〜Ｅが当てはまります。

　もし完全に地元独立なメディアがあるとしても、ニュースにしろ何にしろ東京からの情報とタレントを一切使わないというのでもなければ、やはりここでも上記の条件は多かれ少なかれ当てはまります。例えば大阪に所属事務所の有るタレントや大阪の地元ニュースを一切使わなくても、各地方独立局の放送に支障はないでしょうが、ありとあらゆる情報が集中する仕組みになっている東京からのニュースや、東京がガンガン売っているタレント、東京で作るドラマやバラエティ番組を使えなければ、物凄く限定された視聴者数になるでしょう。東京にマスメディアを集中させる法政策がある限り、この日本では東京からの圧力が掛かっていないメディアは存在できない仕組みなのです。東京以外の地元のメディアが地元の情報を流す際にも東京の気に障らないよう「東京フィルタ」を通さなければならないのです。

ちょっと考えてみてください。もし大阪に独立テレビ局が作られ、地上波デジタルの全国放送のチャンネルが割り当てられれば、今の大阪支店局の５倍の予算で番組を作れますから、数年後にはトップクラスの人気局になり得ると思いませんか？ 名古屋や福岡や、あるいは仙台、札幌の局にもそれぞれ地上波デジタルの全国放送のチャンネルが割り当てられれば、日本の各県各地の本音の情報が、今の数倍は全国に放送されるようになると思いませんか？ 普通に超大型の景気対策になると思いませんか？ 東京の不正が「東京フィルタ」に排除されにくくなり、もっと頻繁に明るみに出るようになると思いませんか？ 日本が幸せになると思いませんか？

参考
　米英系メディアのニュースとは一味違うニュースを提供する＝ロシアトゥデイと、ロシアトゥデイのＹｏｕＴｕｂｅチャンネル。イスラム側のメディア＝ラジオイスラム。彼らは反日ですし、恐らくはそれぞれの政治体制や金主権力者に都合の良いニュース選択・解釈（・偽造）が行われているのでしょうが、それでもこれらのページでは、日本のテレビや新聞では見ることの出来ない、米英系メディア以外の視点と、米英系メディアが露出しない事を提供してくれます。貴方は米英の言い分、ロシアの言い分、イスラムの言い分を比較することが出来ます。
　米英、露、アラブのそれぞれが都合の良いニュースを選んで流していたとしても、一つの独裁的なグループとそのシンパが独占的にニュースを提供する世界より、どれだけマシでしょうか？

（でも、もう欧米とロシアの皆で大騒ぎするネタは、全部ステージ・ショーにしか見えない。全てが「本日のプロレス中継、西側メディア軍団対ＲＴ軍団。この番組は“神に選ばれた民族”こと超偉大なるユダヤ様の提供でお送りします」なのかも？　拓植氏じゃないけど報道の「事実の部分を見極める」“空しい努力”もますます強化しなきゃ。えっ、中国共産党メディアの言い分は？って、さすがにそれは比較対象外(^^;)）

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さて、ここまでお読みになられた方には「東京からの圧力はマスメディアに限った事ではない、私の働く業界だって似たようなものだよ」と思われた方も多いと思います。汚染の蔓延度こそ違え、どの時代のどんな業界でも組織でも不正行為はあるものですが、「権力」の一地域集中はそれを悪い方に進めるベクトルしか持ち得ません。政治を司る機関、法律を作る機関、不正や悪事を取り締まる機関等の最上部、つまりヒエラルキー（階級）構造の頂点機関が全て１地域に集中して居れば・・・

逆に、ヒエラルキー構造の頂点が集中しているその一地域から他の地域へは、なんら妨害する権力が在りませんから、圧力のかけ放題、嫌がらせのしほうだいとなります。例えば、自分達の地域に犯罪が集中しているとか、自分達の不首尾に大衆の非難の目が集まりつつあるとか、自分達の政策的無能を明らかな数字で露出せざるを得ないといった場合（注１）など、彼等の都合のいい時に他地域をヤリ玉に上げ、都合のいい時に摘発するのです。いつでも都合のいい時に圧力をかけ、他の地域の失策や不正を「内部告発」（注２）させるのです。都合のいい時どころか恒常的に他の地域を陥れ続けられるのです。

　そして、２０１１年現在の日本は正にその状態にあります。その点では、常に外様大名を陥れて潰し、我が領地と収入を増やそうとし続けた２００年前の徳川独裁軍事政権と現在の東京政府は実質何等変わっていないのです。

極々普通に考えれば、あらゆるヒエラルキー構造の頂点にあり利権を一手に握っているその一地域＝東京こそ不正の密集地帯、不正の宝庫なのですが、彼等自身の不正を告発する存在が何処にも無いような国の仕組みになっているのですから、彼等は何にも干渉されず、誰にも取締られず、ますます増長し悪質になっていくばかりなのです（注３）。

日本に「マスメディア」や「大企業」や「権力」を東京という一地方に集中させる法と政策の在る限り、日本のマスメディアや大企業には、常に「東京バイアス」が掛かっており、東京に集中させたマスメディアや国家権力は、「東京に優しく美味しく、他地域を馬鹿にして東京に美味しい時だけ利用し、東京と競合する地域を貶め叩き続ける」ということです。他の地域のマスメディアや地方権力も決して「東京バイアス」から逃れられず、往々にして東京の「家畜」になって言いなりに動くということです。

国家にとってはものすごく基本的なことですが、各権力のヒエラルキー構造は各地に分散し各地を同権にして並立させなければなりません。一地域の特権や権力の集中は政治をゆがめ、経済を圧迫し、国民を苦しめ、最後には国を破壊し滅ぼすのです。現在の日本は東京に特権や権力を集中させることによって滅びて行く方向にしか進んでいません。

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