さて、お待ちかねのヒヤリングリポートである。満点は5点。
1.ソニー MDR−E888(バスブースト、音量18)[得点0]
はっきりいって、とてもまともに全曲評価する気になれない。高低域どちらも、ある周波数からスパーッと切れたような鳴り方をする。低音にはバスブーストが必要だ。
唯一の救いは、中域にためらいがないことか。抜けのよい中域だ。
こいつはいま、3200円で購入した携帯ラジオ専用ととなっている。
2.ソニー Nude(バスブースト、音量18)[得点3]
オールアットワンスは、出だしのノイズはもちろん聴こえる。きつめのストリングスもそれらしく聴こえるし、ドスンと響くバスドラが聴けるのは、2万円以下ではこれだけだ。
マライヤはアタック音/ハスキーボイス、レッツ・ステイ・トゥギャザーはドスの利いたベース、バスドラ、エレキが聴いていて楽しい。いい音をコンパクトにした音だ。ラインストーン・カウボーイは、アナログ時代のきらびやかなサウンドが聴ける。光と影を抱きしめたままでは、オープニングのハープシコードとボーカル以外エッジサウンドがかなりおさえられた印象。12月のエイプリルフールは、出だしのバスドラや伸びやかなボーカルが素晴らしい。アメリカン・フィーリングは、トランペットなど、きらびやかな印象のサウンドがそのまま出ている。がドラムは抑えられ気味か。Stillはデジタルサウンドとエレキのエッジが立っている。ドラムはここでも抑えられ気味。
3.ソニー MDR−D66(バスブースト、音量18)[得点3.5]
オールアットワンスは、出だしのノイズがちゃんと聞こえるが、ストリングスは控え目。マライヤのハスキーボイスやアタック音はちゃんとしているが、レッツ・ステイ・トゥギャザーのドスの利いたバスドラは苦手と見た。バスドラとベースの分離が苦手のようだ。ラインストーン・カウボーイでも同じ傾向で、この伸びやかな音が得意のよう。光と影を抱きしめたままのハープシコードやボーカルは厚みでNudeよりも好ましい。12月のエイプリルフールでもバスドラは柔らかい。広域はきらびやかだが、中・低域は柔らかい傾向だ。厚く鳴るアメリカン・フィーリングは、好みが分かれるところ。Stillのデジタルサウンドもエッジが柔らかめだ。
4.オーディオテクニカ ATH−EM9R(ノーマルEQ、音量20)[得点4]
オールアットワンスの始まりのノイズは結構明瞭に聞こえるが、シンバル系が頼みもしないのにチンチンではなくシンシンと鳴り捲る。マライヤは100%ではなく、ハスキーボイスに艶がつく。ハモリは悪くない。レッツ・ステイ・トゥギャザーはマラカス、ハンドクラップ、バスドラ、ハスキーボイスがさまになっている。一方でギターソロの粒がのっぺりとして、残念。ラインストーン・カウボーイは、出だしのピアノとドラムそれにストリングスが心地よい。光と影を抱きしめたままは最初から最後までエッジサウンドを聞かせてくれる。12月のエイプリルフールは、バスドラとベースがほとんど同じものに聞こえるが、低いレベルのライドシンバルをきちんと聞かせてくれる。アメリカン・フィーリングは、ハーモニーが混沌として小ぢんまりしてしまう傾向。Stillは、固めのドラムでこの手のデジタルサウンドは、このヘッドフォンによく合う。
全体的には少しモッコリした音像で、広がりを求める音は苦手。だが、携帯用でここまで出れば上出来というべきか。高級ヘッドフォンだが、不得意なジャンルがあるようだ。
5.オーディオテクニカ ATH−M77(ノーマルEQ、音量20)[得点5]
オールアットワンスの始まりのノイズは明瞭。ストリングスもキチンと響く。バスとベースとが明快に分離している。マライヤのハスキーボイスも明快。ボーカルを重ねているのがハッキリ分かる。レッツ・ステイ・トゥギャザーのエレキのエッジが聴いていて楽しい。ラインストーン・カウボーイの出だしのピアノの低音部がゴンと鳴っているのは、これだけだった。光と影を抱きしめたままは、まるでスピーカーで聴いているかのようなエッジ。12月のエイプリルフールのバスドラはドスの利いた音で好印象。アメリカン・フィーリングは、ドスが利いてきからびやかで軽やか。Stillのデジタルサウンドはエッジが立ってドスが利いているのに全く聴きづらくない、スピーカーで聴いているような音だ。
結果として、今回買ったヘッドフォンがまずまずだったということは、本質ではない。
本当のところは、3000円クラスのヘッドフォンで音楽を楽しめる人々がうらやましいというという、半分やっかみのようなことを言いたかっただけだ。
一般に、ヘッドフォンの売れ筋は3000円くらいまでといわれる。が、その音質は、私などには聞くに堪えがたい。おそらく、980円のPC用アクティブスピーカーで聴いた音よりも悪いであろうことが、容易に想像できるからだ。
現実は、そういうもので満足できる人々が圧倒的だ。そっちのほうが主流なのである。
だから高級ヘッドフォンはいらないとか、高級ヘッドフォンの生産を縮小するべきだとか言っているわけではない、むしろ逆だ。
だからこそ高級ヘッドフォンでなければ生きていけなくなってしまった人たちに、ある程度値は張っても、コストパフォーマンスの高いものを提供するべきだと思う。
今流行のモバイルプレイヤーのトレンドが、ハイクォリティ志向になっていることを考えると、彼らが徐々に高級ヘッドフォンを求めだすのは、時間の問題なのかもしれない。
考えていただきたかったのは、何を聞いても作られたような音しか出せないものと、ソースにある音すべてを出すもの、どっちが姿勢としてまともだろうかということである。
今回は持っているヘッドフォンの音質を比較したかっただけで、3000円派の方々を、高級ヘッドフォン派の道に誘い込もうとしていたわけでは... 決してない。
だが、もしこのレポートを読んで、3000円派の方が高級ヘッドフォンを欲しくてウズウズし始めたというのであれば、私は心から"スマン"と謝りたい。
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