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"また踏んだ" "懐かしのTV(邦画編)"
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MDR-EX90SLレビュー
品切れの続出のソニーMDR-EX90SLを、1ヵ月待ってようやく手に入れることができた。
こんな製品、誰も相手にしないだろうと思っていたら、全く入手できなかったからだ。
発売日での入手に失敗したので、もういろいろなサイトでレビュー記事を見ることができるが、ここではそういった記事とは違った視点でレビューしたいと思う。

まだ購入を躊躇っていらっしゃる方が知りたいのはズバリ、
1.ドンシャリ方か、かまぼこ型か、フラットなのか、左肩上がりか、右肩上がりか。
2.本当にモニター品質なのか。
3.追従性はどうなのか。朗々と鳴るタイプなのか、切れのよいタイプなのか。
    エッジサウンド追求型か。伝統的なソニーサウンドなのか。
4.音像は固まるほうなのか、広がるほうなのか。
5.歪みは多いほうなのか、少ないほうなのか、シルキートーンなのか。
6.本当に音漏れがひどいのか。
7. 圧縮音源向きなのか。
といったところであるろう。

一言で言えば、嫌になるくらいフラットな特性だ(本当にフラットなのかという点については、ちょっとだけ疑問が残る)。
実はこの、特性はフラットだが最近のCDは左肩上がりのソースがほとんど、というのが曲者なのだ。ソースをそのまま忠実に再現するため、他のヘッドフォンで聴くと低音不足高域キンキラキンというソースの音が、低音バンバンで高温不足という感じに変わってしまうのである。
ボーカルなどは、歌手の声が2回りくらい太くなったのかというくらいに変わる。
ここ2年くらいのCDならば、ほぼどれも低音部がフルに切られた左肩上がりの特性であるはずなので、再生される音もそのまま左肩上がりに再生されるが、5年以上の前のCDとなると、さらに若干高域が足りないと感じる方が多いかもしれない。
低域が圧倒的過ぎるので、高域がかなりマスキングされる傾向なのだがそれだけではなく、低域をグラフィックイコライザーで少し抑えている場合でも、そこらのヘッドフォンで聞くと耳が痛くなるくらい高域キンキラキンの5年以上前のCDが、これで聴くと若干高域が物足りないと感じられるくらいなのである。
つまりこれで聴く場合、ここ最近のCDならば高域が足りないなと感じるのは、圧倒的な低音で高音がマスキングされるからであり、昔のCDならば実際高域もちょっと足りないと感じるのは、ごく自然だと思われる。
Winampで聴くとして、最近のCDならば低音部を半目盛くらい下から3バンドを下げるだけでよいが、5年以上前のCDならばさらに、上から4バンドくらいを半目盛上げるくらいの操作で、見通しのよい普通の音になる。
低音は圧倒的だが、エッジの利いた伝統的なゴリゴリとしたものではなく、ヴォンという感じに鳴る。このあたり、ゴリゴリした伝統的なソニーサウンドを求めると、肩透かしを喰らう。
高音は、伝統的なソニー的つくりだ。少し硬めだが、のびやか(煌びやか)で素直に響いて歪みがなく、ストリングスのハーモニーが心地よい。もちろんシルキートーンではない。
つまり、ちょっと聞きではMDR-E888のドンシャリ的な音と正反対の鳴り方をする。
あちこちのサイトレビューでは、カナル型であるにもかかわらず、音漏れ(内部からというよりも、外部から内部への)がひどくて、趣味に合わないオーナーから辛い点をつけられているようだが、実際外の音は結構入ってくる。
テレビをかけながらの使用では、細かな音が聞き取りにくくなるといった程度のことなのだが、気になる方はやはり考慮はするべきであろう。
どちらかといえば、このヘッドフォンは静かな環境で聴くことを目的としたつくりになっているようだ。
静かな環境で、シリコンオーディオとカナル型ヘッドフォンで音楽を聴くことがあるのかといわれれば、あまり想像し難いところがあるが、とにかくそういう環境で実力を発揮する。
入力に対する追従性がどうかといえば、高域は高速追従型のエッジサウンドにも対応できるがものだが、低域はそうでもなく、音圧を重視しながらもエッジや追従性よりも聴き易さを重視する傾向があるようだ。一応エッジを追いかけるのだが、音の粒が軽いのである。
そのせいか圧倒的な低域の音圧でありながらも、モニターヘッドフォンにありがちなエッジ重視で長時間の使用には耐えがたい、といったことがない。
ただし、そのためにピアノの打鍵感の「ゴン」といった表現はいまひとつな感はある。
つまるところ、メーカーでは本製品をモニターヘッドフォン品質とうたっているが、このヘッドフォンはモニターヘッドフォンでも、またそれ的でもない。
本製品を一般用にモニターヘッドフォンとして出していたら、エッジサウンドの鬱陶しさに辟易して、通常に音楽を楽しめる時間は極端に短くなってしまっていたことだろう。
圧縮音源ではMP3 256Kbpsでも、原音に比べて三回り以上劣ることは一聴してわかるが、圧縮音源だからといって全く聞くに堪えないといった程度でもない(好みにもよるが)。
総合的考えて、ある程度のイコライジングを必要とするものの素性はとてもよく、12800円でこの品質は他の1万円台のヘッドフォンと比較しても安すぎるくらいだが、できるならば、一般的なソース向けに低音部をほんの少し抑え、高音部はちょっとだけ上げた調整で出荷してほしい。
その上で、ほんの少し低音にゴリゴリ感を出して、コードを上級の高純度OFC線などにしてもらい、音漏れを抑えて5千円くらいアップするような製品が出れば、私は次の製品も必ずや入手するつもりである。
願わくば、品質の後退だけはご勘弁願いたい(もう、これだけは経験したくない)。
今回の購入で、ソニーのヘッドフォン事業は、完全に復活軌道にのっていると断言できると考えさせられた。開発関係者諸氏に拍手を送りたい。
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