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ATH−CK9レビュー
もちろん、浮気をする気などさらさらなかった。
MDR-EX90SLの上位機種がでるまで待つつもりだったのである。
しかし、時間は待ってくれはしなかった。携帯プレイヤーのイコライザがいかれて、カスタム設定すると音が歪むようになってしまった。
プリセットの音色でしか聴けなくなってしまったのだ。
プリセットか、あるいはイコライザを使わなくても使用できるヘッドホンが必要になった。
そこであちこちサイトを見て回り、結果決心したのがATH-CK9だった。
ATH-EM9Rからの乗り換えである。
多少のドンシャリ型の音に辟易していた私は財布の中身を見て、SONYの新型はもしかしたら自分の手元には入らないかもしれないと少し未練を残しながら、これは浮気ではないのだと自分に言い聞かせてATH-CK9を買いに行った。

今まで何回かヘッドホンレビューを書いてきていまさらではあるが、はっきりさせておきたいことがある。
このエッセイコーナーでは、3万円以上する高額ヘッドホンは取り扱わないということだ。それがいかに高音質であっても。
3万円以上するものが1万円台のものと同じ品質などということは基本的にあり得ないことだし、出口に金をかけることがいかに重要なことだとしても、プレイヤーが2万円しないのに、ヘッドホンにその倍以上かけるなどということは、はっきりいって馬鹿げている。
オーバーヘッド型のモニターヘッドホンでも、3万円で5千円のおつりがくるものがほとんどなのだから。

さて再生音であるが、どこのレビューでも取り上げられているとおり、再生音レベルであくまでもフラット。入力に対して反応がフラットということではなく、再生される音がフラットということである。入力に対しては、いいソースはいいソースなりに再生するが、音域の変化に敏感に反応する方ではなく、どんなソースでもフラットに再生する傾向があるようだ。
では、ソースはどうでもいいタイプなのかというとそんなことなく、悪いソースはそのまま、いいソースはそれなりに鳴らすタイプだと思われる。聴いていて低音が弱いと感じることがあるが、それはソースによるようだ。
音のキレはよい。といっても、非常によいというわけではない。どの音域でもキレまくるという感じではなく、高音域あるいは低音域で、適度にキレるという鳴り方のようだ。
いわゆる完全モニターヘッドホンのようにジャンジャンバリバリ切れ込むタイプではなく、少しずつあちこち角が取れたような鳴り方をするため、あながちモニターヘッドホンの音を知っていると、ここはこう鳴ったら、こっちはこう鳴ったらと、はがゆさを感じさせるヘッドホンではある。
音場は広いが音像は大きめで、小さい音像がびっしりと並ぶといったタイプではない。
音の硬さは、気持ち柔らかめといっていいだろう。
解像度は、音域によって密度の高いところと、そうでもないところがあるようだ。
楽器あるいは録音の仕方によって音に躍動感が付くか付かないかがはっきりしていて、これがキレのよさに影響を及ぼしているような感じだ。どちらかというと硬めでアタックの強い音が得意なようで、そういう音だと躍動感がある。柔らかいナローな音だと、のっぺりした音になる。ある程度以上の音量で聴かないと、躍動感のある音を得られないようだ。
音と音のつながりは実になめらかだ。このなめらかさが、音によってはのっぺり感になっているようでもある。
いわゆるドンシャリ型の音とは全くかけ離れた音で、トランペットはペーではなくパァーと鳴るし、トライアングルはチョンではなく、チンと鳴る。モニターヘッドフォンらしい一面を持っているというのは嘘ではない。
低音域は、あまりに柔らかい音でなければ、ベースとバスドラが識別できる分解能をもっている。識別できるくらいの、絞まりのある低音が再生できているということである。
とにかく一聴しただけで、これまでのその他の日本製カナル型ヘッドホンと異なることがわかる。音のつながりがよく歪みが少ないために、ドンシャリ型のヘッドホンに共通したガチャガチャした音が全く聞こえてこないのだ。
では、実売1万円台のErectric ReserchのヘッドホンER-6やShureのE3Cと較べてどうなのかといわれると、これは分からないというしかない。
手元に現物がないし、たぶん購入することはないだろう。特にER-6の噂はよく聞いた。かなりキレまくるヤツという噂は聞いていたのである。噂では1万円台ならこれしかないという話まで耳にした。
しかし、しかしである。
私は性能がよければデザインとかはある程度目をつぶれるほうなのであるが、あまりにあまりなのである。量販店でお年寄り向けに売っているテレビのイヤフォンに毛の生えたようなデザイン。インナーイヤフォンなんだから当たり前だといわれそうだが、本当にテレビ用のイヤフォンですといわれても、ナルホドと納得してしまいそうな代物なのだ。
そのデザインで、デザインはあれなんだけれど音はすごいんですといわれても、ふつうそのまま、そうですかと納得はできないはずだ。
だが、これでもかなり悩んだのである。名をとるか、実を優先させるか。
結局は、ある程度デザインを優先させる選択となった。
E3Cではいまいち中途半端だし、いちかばちか、日本製に賭けてみよう。いくらなんでもあのダサいデザインはいやだ! そんな思いが頭をよぎったのである。
結果、オーディオテクニカの9系ならいいのではないかいうことで、ATH-CK9になったのであった。
いまにして思えば、この選択は間違っていなかった。
ポップスもロックもクラシックも(オーケストラもピアノも)、最近では日本の楽器まで聴く私には、ぴったりのヘッドフォンだった。いい音であれば、ソースを選ばないのだ。
確かにのっぺりした音に聞こえることもある。とくにwmaフォーマットには弱いようだ。
もともとダイナミックレンジに乏しいフォーマットなので、MP3フォーマットと同じだろうとか思って切り替えてしまうと、あまりにショボイ音に愕然とさせられることがある。
だが、これはあくまでフォーマットのせいで、ATH-CK9のせいではないのだ。
ATH-CK9は、ソースに素直なので、ありのままに再生しているだけなのである。
ソースを選ぶ(いいソースのものしか、いい音に聴こえない)、クセのあるやつということはいえる。
しかし、キレ・解像度・再現性いずれも現在の日本製カナル型の最高峰なのである。これを楽しまない手はない。
日本製カナル型ヘッドフォンでは今のところ間違いなくナンバーワンあり、バリバリに切れ込まないところが、音楽性を失わないで長時間の使用にも向いているところでもある。
だからのっぺりした音なんだといわれるとちょっと返す言葉に詰まるが、イコライザでいかようにも変えられるし、その辺(反対に、ガチャガチャしすぎるか)は実は実売1万円台のカナル型ヘッドフォンに共通の課題ではないかと考えさせられた。
一時期ヘッドフォン分野が完全に死んでいた日本で、このレベルのものが作れらるようになったことは、実に誇らしい限りだと思う。
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