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石川優子の「フルセイル」を手に入れた
石川優子の「フルセイル」復刻版CDを手に入れた。
待ちに待った。
おそらく10年くらいは待ったと思う。
絶版になったのがいつだったかが記憶に定かでないが、少なめに申告しても5年以上待ったことは確かだ。
狙いはもちろんアルバムに入っている「ロードショー」である。

某国営放送で彼女のライブを聴いてから、是が非にでも「ロードショー」を入手したくなったのであるが、その後しばらく忘れていて、気がついたら「ロードショー」が入っているアルバム「フルセイル」は廃盤になっていた。「欲しい物は思い立ったときに買え」の教えを守らなかった自分を後悔したが、もう遅かった。彼女が引退してからしばらく経ってのことである。
その後「中古でもいいや...」、そう考えてYahooオークションにオークションアラートを登録してあさり始めたが、そうは問屋が卸してはくれなかった。考えることは誰でも同じらしく、Yahooオークションでは「フルセイル」の中古CDは高騰し開始価格がたとえ800円でも、大抵落札価格は38000円を超えるようになっていたからである。一般庶民に落札できる価格ではなかった。
そんな事が2年以上続いたつい先日、オークションアラートが立て続けに2500円を報告し始めた。
通常「フルセイル」中古CDのオークションアラートは、1週間くらい放って置くと38000円以上の価格になって勝手に終了するのであるが、今回はいつなっても2500円だという。
「もしかすると、コピーもん?」そんな気はしたのであるが、もう止められなくなっていた。
最初のアラートから1週間経ったある日、アラートした商品サイトを見に行くと確かに「フルセイル」が2500円で売られているのである。しかも、2500円で即決だという。何も考えずに入札していた。
落札した2日後、正気が戻ってきたところで「もしかすると、復刻版なのか? アマゾンでも売っているのではないか?」そんな気がしてきてアマゾンで確認すると、本当にアマゾンでも復刻版を売っているではないか。
アマゾンで買えば2500円で買える物を、送料手数料を込みで2800円で買ってしまった。
でもなぜかあまり悔しいとは思わなかった。実は、清水の舞台から飛び降りる気で、オークションで38000円で落札しようかと思ったいたくらいなのである。コピーをとった後で、オリジナルはオークションで売り払う予定であった。
それをしなくともよかったというのと、彼女のアルバムが市場で再評価されているのを歌を離れてしまった彼女自身やレコード会社が認めたということが嬉しかった。

世間に「石川優子」という歌手は、どのように認識されているのか、ちょっと気になるところではある。

彼女は「シンデレラサマー」や「ふたりの愛ランド」のような陽気な曲をも作れる歌手であった。私もそういう曲自体は好きだ。世間的には、その石川優子のほうが一般的であろうことは想像に難くないのであるが、私はそれが嫌だった。「彼女はもっと心に訴えられるスコアや歌詩を書けるんだ」といってやりたかった。
テレビで「ふたりの愛ランド」を歌う彼女は、いつも精一杯がんばっていた。カメラはどちらかといえば石川優子をアップで映すことが多かったが、その画面の中の彼女は見ているこちらが気の毒になるくらいがんばっていた。その彼女がレコードの中の表現を離れて、テレビという商業主義に躍らされているようが気がしてならなかった。
テレビの中の彼女は、「元気いっぱい」というよりは「がんばっている」という表現のほうが正しいようながんばりかただった。
それがいたたまれなくて、「ふたりの愛ランド」を歌う石川優子がでてくると、せっかく彼女が歌うのにわざわざチャンネルを変えたりしていた。
私のとっての「石川優子」は若い頃にコンサートに行ったことのある数少ない歌手で、「ロードショー」や「涙のソリティア」に代表されるような綺麗な声をもち、なかなか他の歌手では見当たらない女性の生活感をリアルな歌詞と素晴らしいスコアで表現してくれる、一消費者として結構信頼できる歌い手であった。
だが、「涙のソリティア」でリアルな歌詩を作れる歌手としての「石川優子が完成された」と思った私は、その後の彼女のアルバムを買わなくなってしまった。何かを達成したあとでどんどん落ちぶれていく様を見たくないと思ったからである。
「素晴らしい!」という評価のアルバムを発表した後で、できの悪いアルバムを連発するアーティストは星の数ほどいるし、私は何枚もそういうものを持っている。彼女もおそらくそうなるだろうと鷹をくくっていたのである。
私のそういう行動が(私と同じような気持ちの人々が大勢いたのではないかとも想像に難くないが)彼女を孤独に追い込んで、何年かの活発なアルバム発表のあとで、引退という結果を生んでしまったことに、一ファンとして長年心痛めてきた。
彼女が作り手としてダメになっていたったのか、そうでなかったのか確認するチャンスが10何年経って再び訪れようとしているのだ。

「フルセイル」、「ニュアンス」は最高だ。みなさんも、是非に手にとってみていただきたい。買って損はしないと保障できる。
私としては彼女の現役時代に応援できなかった代償に、商業主義に乗せられているといわれても、復刻版のすべてを入手したいと考えている。
できれば紙ジャケットといわず、いっそのことBOXで発売していただきけないだろうか。
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石川優子の「フルセイル」を手に入れた "緑茶はどれを選ぶ?"