テンソル解析< 目次へ >
速度、力などの様に大きさと方向を有するベクトル(1階のテンソルではあるが)は分かり易いが、テンソルというものは直観的に理解しにくいものである。座標系によりテンソルの成分は変化するが関数の値は変わらない、つまり座標系は変わっても、ものの状態や性質は変化しないのがテンソルである。
1. テンソルの定義
タイプ(M,N)のテンソルとは、M個の一形式とN個のベクトルを変数とする実数への関数で 、おのおの変数について線形なものをいう。 線形なものとは、例えば1個のベクトルを変数とする関数をPとすると
◆ P(+)=P()+P() , P(λ)=λP()
・・・・・・・・・・・・・・・ (1)
の二つの関係を満足する事である。2個のベクトルを変数とする関数hについては
◆ h(α+β , )=αh( , )+βh( , )
・・・・・・・・・・・・・・・ (2)
の関係が成り立つ事である。 一個のベクトルを変数とする(0,1)テンソルは一形式である。 一個の一形式を変数とする(1,0)テンソルはベクトルである。 実数とは(=関数の値)、下記の式に於ける の事である。 例えば一個のベクトルを変数とする一形式を とすると 2. 反変、共変テンソルと添字の位置
テンソルの成分に於いて、上付きの添字はそれらが基底ベクトルと反対に変換するので(=反対の変換行列 を用いて変換する)反変、下付きの添字はそれらが基底ベクトルと同じ変換行列 を用いて変換するので共変と呼ばれる。
(M,N)テンソルはM階反変N階共変なテンソルといわれる。(上付きの添字の数がM個、下付きの添字の数がN個)又、単に (M+N) 階テンソルと言う。(M,N)テンソルは変数としてM個の一形式とN個のベクトルをもつ。ベクトルは1階反変なテンソルで、一形式は1階共変なテンソルである。
テンソルの成分の数はn階のテンソルならDn個になる。Dは次元数で、三次元ユークリッド空間ではDは3で、ミンコフスキーの四次元時空ではDは4になる。Dが4の時、2階のテンソルならテンソルの成分の数は16個、3階のテンソルなら64個、4階のテンソルなら256個になる。 3. テンソルの代数 (1) テンソルの成分
(M,N)テンソルの成分はM個の添字を上に、N個の添字を下にもつ。
例えばRを(1,1)テンソルとすると、数 R(,) を与えるために、一つの形式 と一つのベクトル を必要とする。 それは成分 R(,)= Rαβ をもつ。 と を変数にもつ、R(,) の値は ◆ R(,)= R( Pα,Aβ )=PαAβR( , )=PαAβRαβ ・・・・・・・・・・・・ (4) (2) テンソルの成分の変換
系Sから系への成分の変換は
◆ R=R( , )=R( , )= Rμν ・・・・・・・・・・・・ (5) 系から系Sへの成分の変換は ◆ Rαβ=R( , )=R( , )= R ・・・・・・・・・・・・ (6) 同じ方法で、 系Sから系への(m,n)テンソルの成分の変換は ◆ ・・・・・・・・・・・・ (7) (3) テンソルの基底
ベクトル、一形式を基底を使って表現した様に、テンソルを基底を使って表現する。
例として(1,2)テンソルを考える。
1階反変2階共変なテンソルの集合はベクトルの空間をつくるから、任意の線形独立なテンソルを基底として用いることが出来る。それを とすると T= = ( 6. 双対ベクトル、双対空間 (4) 一形式の基底を参照) ◆ = ・・・・・・・・・・・・ (8) = , = , = ・・・・・・・・・・・・ (11) T= = である事が分かる。即ち、テンソルを基底を使って表現してもテンソルの成分の変換則を満足する。
同様な方法でm階反変n階共変なテンソルを基底を使って表現すると 4. テンソルの演算
・ 同種、即ち反変及び共変の階数の等しい二つのテンソルは、反変及び共変の添字の対応を
適当に定めると、各成分の和は初めのテンソルと同種のテンソルとなる。 Tαβγμν=VαβγUμν 5. テンソルの縮約
テンソルの式において、上下の添え字を等しくおいてこれについて加える操作をテンソルの縮約という。これにより階数が2減る。例
● Rμαμβ=Rαβ , Aμμ= 不変量(スカラー) , AμBμ=不変量(スカラー) ● TαμUμ=Wα (ベクトル) , TαμUμ=Pα (一形式) ● TαμUμ=Wα (ベクトル) ・・・ テンソルTはベクトルUからベクトルWへの写像を与える。 ● TαβUα=Pβ (一形式) ・・・ テンソルTは一形式Uから一形式Pへの写像を与える。 6. テンソル商の定理
二個のベクトルと一個の一形式を変数とする関数をTとする。
T( , , ) = T( , , ) = は系に於けるTの成分で = とおく。 = ・・・・・・・・・・・・ (13)
であるから、これらを(13)の式の左辺に代入して整理すると
= となる。 式の意味は、どんな座標系を選んでも関数の値が同じ(=スカラー)ならTはテンソルであるという事である。 逆にTがテンソルなら(13)が成り立つ。即ちTがテンソルならどんな座標系を選んでも関数の値は同じになる。 7. メトリック
メトリックは計量テンソル又は基本テンソルと呼ばれ、基本ベクトル(=基底ベクトル)のスカラー積の組みで定義される2階のテンソルである。(テンソルである事の証明は10. テンソルの例 (3) 2階のテンソルを参照)即ち
◆ gαβ= ・
・・・・・・・・・・・・ (14)
特殊相対論に於ける基底ベクトルのスカラー積は
・ = -1 , ・ = ・ = ・ = 1 , ・ = 0 ( α ≠ β の時 )
【系 の基底ベクトルの内積】
・ = -1 , ・ = ・ = ・ = 1, ・ = 0 ( ≠ の時 )
従ってメトリック gαβ はメトリックは線要素(=間隔)を表す時に用いられる。即ち ◆ ds2=gαβdxαdxβ (α,β=0〜3) ・・・・・・・・・・・・ (16) 【証明】 ベクトル を = xα とすると = の全微分より d は d = dxα = dxα ds2 =|d |2 = d ・d=(dxα) ・ (dxβ)=( ・ )dxαdxβ gαβ= ・ だから ∴ ds2=gαβdxαdxβ 8. (0,2)テンソル
(0,2)テンソルは二つのベクトルを変数としてもつテンソルである。その例としてメトリックテンソルや二つの一形式の積で作られたテンソル等がある。(0,2)テンソルの対称性、反対称性から重要な性質が導かれる。
(1) 対称性
f を(0,2)テンソルとし、その成分fαβを fαβ=f( , ) とする。
, を任意のベクトルとした時、一般には f( , )≠ f( , ) であるが ◆ fαβ=fβα ・・・・・・・・・・・・ (17) ・ h(s)( , )= h( , )/2+h( , )/2 ◆ h(αβ) = (hαβ+hβα)/2 ・・・・・・・・・・・・ (18) (2) 反対称性
・ f( , )= ーf( , ) , f αβ = ーfβα
・ h(A)( , )= h( , )/2ーh( , )/2 ◆ h[αβ] = (hαβーhβα)/2 ・・・・・・・・・・・・ (19) 次の事が成り立つ。 ◆ hαβ = (hαβ+hβα)/2+ (h αβーhβα)/2 = h(αβ) + h[αβ] ・・・・・・・・・ (20) 9. 添字の上げと下げ 添字の上げと下げは、一種の座標変換、基底の変換である。
(1) ベクトルから一形式への写像としてのメトリック
メトリックはベクトルから一形式への写像として働く。その時の一形式の成分 Pα は
◆ Pα=()=・=Pβ ・ =( ・ )Pβ =ηαβPβ ・・・・・・・・・・・・ (21) =(a,b,c,d) ならば =(−a,b,c,d) の成分は の時間成分の符号を変える事によって求められる。この事は ηαβ の成分による。一般相対性理論では、添字の上げと下げには gαβ を使う。 と の対応の規則もまたより複雑になる。 ユークリッド空間でのデカルト座標ではメトリックは単に{δij}であり、一形式の成分とそれに対応するベクトルの成分は同じである。 (2) から へ:(1) の逆変換
一形式 からベクトル への写像はηαβの逆行列ηαβを用いる。
◆ Pα=ηαβPβ ・・・・・・・・・・・・ (22) (3) メトリックの混合成分
ηαμとημβからメトリックの"混合"成分ηα βが得られる。即ち
ηαβ= ηαμημβ 上式の右辺はお互いの逆行列の積だから、それは単位行列であり、従ってそれはクロネッカーのデルタである。 ◆ ηαβ=δαβ , ηαα=4 である ・・・・・・・・・・・・ (23) (4) (M,N)テンソルを(M−1,N+1)テンソルに写像
Tαβμを(2,1)テンソルとする。添え字βを下付けにして(1,2 )テンソルとする。
◆ Tαβμ=ηβγ Tαγμ ・・・・・・・・・・・・ (24) (5) (M,N)テンソルを(M+1,N−1)テンソルに写像
Tαβμを(2,1)テンソルとする。添え字μを上付けにして(3,0 )テンソルとする。
◆ Tαβμ=ημγ Tαβγ ・・・・・・・・・・・・ (25) 10. テンソルの例
テンソルの具体的な例を階数毎に列挙する。
(1) 0階のテンソル
スカラーは0階のテンソルである。何故なら座標変換で値が変化しないから。例えば、光の速度や関数f 等。
(2) 1階のテンソル
1個のベクトルを変数とする一形式の系Sに於ける成分を 、ベクトルの成分を とすると系Sに於ける関数の値は
(=0〜3) = = 同様に1個の一形式を変数とするベクトルも1階の反変テンソルである。 P0 = a , P1 = b ax+by=C の式に代入して行うが、係数がテンソルなら係数を変換する方がすっきりした式の形が1回で求まり効率が良い。特に二階以上の高階のテンソルに於いてはテンソルの成分だけを変換すればよいからテンソルの良さが顕著に表れる。 (3) 2階のテンソル
2つのベクトルの成分Aα、Bβの直積量を tαβ=AαBβと定義すると tαβ はテンソルである。
【証明】
系に於ける成分を、ベクトルの成分を、とすると
= = = 故に tαβ はテンソルである。
特殊相対論に於けるミンコフスキーの四次元時空ではクロネッカーのデルタは下記の様になる。
【証明】
系Sに於けるクロネッカーのデルタの成分を δαβ 2つのベクトルの成分をAα、Bβとすると
= 従って -A0B0+A1B1+A2B2+A3B3 = 系S、に於ける関数の値が等しいので 三次元ユークリッド空間に於いても変換行列の直交性によりクロネッカーのデルタはテンソルである事が証明出来る。
二つのベクトル と のスカラー積は
・ = メトリックテンソルの定義は ベクトル と は任意だから
二次曲線は一般に ax2+2hxy+by2+2gx+2fy=C の形で表現される。
【例】 二次曲線 2x2+xy-y
2-2x+y=-1のグラフを描く。P00=a , P01=h , P02=g P10=h , P11=b , P12=f P20=g , P21=f , P22=0 0.18 , ー1.55 , ー0.067
系Sに於ける任意の正方行列をMαβとすると
Pα= , を(1)に代入すると = Mαβ = Mαβ 両辺に を掛けると = Mαβ =1 だから = Mαβ = Mαβ 故に正方行列は2階のテンソルである。 (4) 3階以上のテンソル
【証明】
付録1:対称テンソルの固有値
一つのテンソル Tij はベクトルの1次写像を定める。( i,j=1〜3 ) 即ち Vi=TijUj ユークリッド空間でのデカルト座標では一形式の成分とそれに対応するベクトルの成分は同じであるので、Vi=Vi である。今 Vi=λUi 即ち Tij Uj = λUi とし、これを展開すると
(T11ーλ)U1+T12U2 +T13U3 = 0 T21U1 +(T22ーλ)U2 +T23U3 = 0 T31U1 +T32U2 +(T33ーλ)U3 = 0 上の斉次一次方程式に於いて Ui が0以外の解をもつためには下記の行列式の値が0である事が必要である。 ・・・・・・・・・・・・・・・ (a) 上の方程式をテンソル Tij の固有方程式といい、その根を固有値といい、固有値λに対応するベクトル Ui を固有ベクトルという。固有ベクトルは直交行列である。 【テンソル二次曲面】
直行座標系で対称なテンソル Tij に対して、原点を中心とする2次曲面
Tij xi xj = 1 ( x1=x軸、x2=y軸、x3=z軸 ) ・・・・・・・・・・・・・・・ (b) をテンソル二次曲面という。Tij の固有値がλ1,λ2,λ3 ならば、これらに対する固有ベクトルは直交するので、単位化した固有ベクトルを基底ベクトルとした新しい座標系のもとで、上記の二次曲面は λ1(x1)2+λ2(x2)2+λ3(x3)2 = 1 ・・・・・・・・・・・・・・・ (c) となる。即ちテンソル Tij の固有ベクトルはテンソル二次曲面の主軸を定める。 ( 式(c)の証明 )
Tij の固有値及び固有ベクトルより、Tij は対角化出来る。(曲がった時空 付録1:正方行列の対角行列への変換を参照) 対角化する直交行列(=座標変換行列)を Λ とすると
(例題)Ti j = Λii Λjj Tij , Ti j = λ1,λ2,λ3 は固有値 ・・・・・・・・・・・・・・・ (d) xi = Λii xi , xj = Λjj xj を式(b)の左辺に代入すると Λii Λjj Tij xi xj = 1 この式と式(d)より式(c)が成り立つ。 行列で表現すると、式(b)は ( x1 x2 x3 ) T = 1 ( x1 x2 x3 ) = Λt ( x1 x2 x3 ) , = Λ を上の式に代入して ΛtTΛ = とより式(c)が成り立つ。
テンソル Tij を下記とする。
Tij = 固有方程式(上記参照)を解き固有値を求めると、固有値は 8、5、3 となる。固有値8に対する固有ベクトルの成分をX,Y,Zとすると =8 X=X, Y=X, Z=−X 従って固有値8に対応する単位化した固有ベクトルは 同様に固有値5に対応する単位化した固有ベクトルは 同様に固有値3に対応する単位化した固有ベクトルは 故に直交行列Λは Λ = 直交行列により対角化された T は ΛtTΛ = 単位化した固有ベクトルを基底ベクトルとした新しい座標系のもとでのテンソル二次曲面は式(c)より 8(x1)2+5(x2)2+3(x3)2 = 1 となる。これは下図の様な楕円面となる。
付録2:慣性モーメント
慣性モーメント(=慣性能率)は角運動量を計算する過程で導出される。剛体が原点Oの回りに回転する時、ある瞬間に於ける角速度を ω (以下太字で表した文字はベクトル又は一形式を表す)とする時、剛体の点P(OP=r)の速度 v は、v=ωxr (xはベクトルの外積である)となる。mi を質点、剛体の角運動量を L とすると
L = rix(mivi) = mirix(ωxri) = mi{ω(r2i)ーri(ωri)} となり、その x 成分は Lx = mi{ωx(x2i+y2i+z2i)ーxi(ωxxi+ωyyi+ωzzi)} = ωx mi(y2i+z2i)ーωy mixiyiーωz mixiyizi となる。そこで ● Ixx= mi(y2i+z2i)=∫ρ(y2+z2)dV ● Iyy= mi(z2i+x2i)=∫ρ(z2+x2)dV ● Izz= mi(x2i+y2i)=∫ρ(x2+y2)dV ● Iyz= Izy= ー miyizi=ー∫ρyzdV ● Izx= Ixz= ー mizixi=ー∫ρzxdV ● Ixy= Iyx= ー mixiyi=ー∫ρxydV ρは密度、dV=dxdydzである。積分記号∫は一個だけ書いてあるが、本当は三個必要である。 と定義せられる量を導入すると、角運動量 L のx、y、z 成分 Lx 、 Ly 、 Lz は Lx=Ixxωx+Ixyωy+Ixzωz , Ly=Iyxωx+Iyyωy+Iyzωz , Lz=Izxωx+Izyωy+Izzωz と書ける。Ixx、Iyy、Izzをそれぞれx、y、z軸に関する剛体の慣性モーメントといい、ーIyz、−Izx、−Ixyを慣性乗積という。いずれも剛体の形、質量の分布状態、回転軸の位置等によって定まる定数である。上の式から分かる様に、慣性モーメントは一つの軸から物体を構成する各質点までの距離rの二乗と質量mとの積の総和である。 慣性モーメントは二階の対称なテンソルであるから、うまく直交座標系を選べば,対角化出来る(付録1:対称テンソルの固有値又は 曲った時空の付録1 を参照)。その時出てくる対角化された慣性モーメントを主慣性モーメントと呼び、それが成り立つ座標系を慣性主軸という。そして主軸に関する慣性乗積は全て0になる。
付録3:物理学に於けるテンソル
(1) 圧力テンソル
物体に歪みを生じさせる圧力テンソルは2個のベクトルを変数とする(0,2)の2階共変なテンソルである。
圧力テンソルをT、Tの成分をTij、変数のベクトルを 、 とする。 、 共物体内の1点に於ける任意の面に対する単位法線ベクトルである。 Tij = T( i , j ) , = ( a1,a2,a3 ) , = ( b1,b2,b3 ) (i,j=1〜3 1:x軸 2:y軸 3:z軸) T( , ) = T( ai i ,bj j ) = ai bj T ( i , j ) = Tij ai bj Tij を図で示すと 第1の添字は面を表す。面は座標軸に対して垂直になる様な面で定義される。第2の添字は圧力の方向を表す。例えばTxyはX軸に垂直な面に対してY方向の圧力を表す。TxyとTyxは等しい。何故ならTxyはZ軸の回りにY方向に回転させる力となり、TyxはZ軸の回りにX方向に回転させる力となる。しかし流体は回転していないのでTxy=Tyxである。一般にTij =Tjiである。従ってTは対称なテンソルである。 Tij の1行目はx面での圧力のベクトルの成分を表し、それとベクトル との内積をとり、x面の 方向の圧力の成分 Px を計算する。Py、Pz も同様である。式で書くと下記の様になる。 , Pi = Tijbj 次にPi を成分とするベクトルとベクトル との内積をとり、 方向の全圧力 P を計算する。通常、ベクトル と は同じベクトルを指定する。即ち 方向への圧力 P は P = Piai = Tija iaj 上の式を行列の形で表すと、 atTa ( atはaの転置を表す。) at=(1/,1/,0) とすると、 方向への圧力は上の式より Txx/2+Txy+Tyy/2 となる。
系Oでの圧力は Tijaiaj で、系Oでの圧力は Ti j aiaj である。
圧力は系Oでも系Oでも同じだから Tija iaj = Ti j aiaj 系Oから系Oへの変換行列を Λii とすると、 ai = Λii ai , aj = Λjj aj これら二つの式を上の式に代入すると Λii Λjj Tijaiaj = Ti j aiaj ai、aj は任意だから Ti j = Λii Λjj Tij ( 行列の形で表現すると Ti j = ΛtTΛ ) ∴ Tはテンソルである。 (2) 慣性テンソル
慣性モーメントは2個のベクトルを変数とする(0,2)の2階共変なテンソルである。(証明は下記参照)
慣性テンソルを I、I の成分を Iij、変数のベクトルを 、 とする。 Iij = I( i , j ) , = ( a1,a2,a3 ) , = ( b1,b2,b3 ) (i,j=1〜3 1:x軸 2:y軸 3:z軸) I ( , ) = I ( ai i ,bj j ) = ai bj I ( i , j ) = Iij ai bj Iij = K = Iij ωi ωj/2 は剛体の回転運動エネルギーとなる。 Li = Iijωj , L = Li i と角運動量が求まる。角運動量の大きさは |L| = (L・L)1/2 = (L12+L22+L32)1/2
(1)の圧力テンソルの場合と全く同じで、T→I、圧力→剛体の回転運動エネルギーと置き換える。
付録4:(0,2) テンソルの成分の変換
二つのベクトルを変数とする(0,2) テンソルの系Sでの成分、fαβ=f( ,) から系Sでの成分、fα β = f( ,) への変換則は次式に従う。
fα β = fαβ 【証明】 上の変換則を行列で表すと、成分がΛαα である行列を (Λ) として (f) = (Λ)T(f)(Λ) と表す事が出来る。 【証明】
変換則の一部、 fαβに於いて、fαβの列(=β)との行(=β)に関してダミーの添字なので行列演算(=掛け算)が出来る。即ち
Cαβ = fαβ = fαβ = (f)(Λ) fα β = Cαβ に於いて、の行(=α)と Cαβ の行(=α)に関してダミーの添字なので行列演算(=掛け算)をするには の行と列を入れ替えた転置行列にしなければならない。従って (f) = (Λ)T(f)(Λ) < 目次へ > |