オープン側のビッド [2- 43]
・ ルールオブ 20 と 13 点オープン.
・ リミット・レイズ (♠♥). ・ 切り札 3 枚と 4 枚の違い (♠♥). ・ ディクレアラーのシングルトンは なぜ有利 ? ・ リミット・レイズ (♦♣). ・ リミット・レイズ (♦♣) の後は … ・ 1♣ 〜 1♠ オープンへの 2NT. ・ ルールオブ 23 (2NT が示す強さ). ・ リバース (2 の代の応答). ・ 1♦‐2♣ は 要注意. ・ ゲーム・コントラクトに到る道筋. ・ ゲーム・フォーシングの手段. ・ 第 4 スートフォーシング (FSF). ・ ノートランプのストッパ. ・ ボロでもストッパ. ・ ハーフ・ストッパ. ・ ♠ 5 枚+♣ 5 枚でのオープン. オープン側の競り合い [44-59]
・ オープン側のキュービッド.
・ リミット・レイズで競り合う. ・ キュービッド・レイズで競り合う. ・ リダブル. ・ リダブルのあとは … ・ 競り合いでのリバース. ・ リオープン. ・ リオープンのダブル. |
ディフェンス側のビッド [60-79]
・ 介入する人の気持ち.
・ 4 枚スートでのオーバーコール. ・ 1 の代のオーバーコールは フリーランチ. ・ ディフェンス側のキュービッド. ・ 1NT オープンへの干渉. ・ ルール・オブ・セブン (プリエンプトに対抗する). バランシング [80-96]
・ バランシングとは.
・ King 1 枚 (3 点) の理由. ・ バランシング・コールへの応答. ・ ダブルへの応答. ・ オーバーコールへの応答. ・ 安全なバランシング. ・ バランシングと確率. |
・ ルールオブ 20 と 13 点オープン | … 3‐6. |
・ リミット・レイズ (♠♥) | … 7‐8. |
・ 切り札 3 枚と 4 枚の違いは天地の差 (♠♥) | … 8‐9. |
・ ディクレアラーのシングルトンは なぜ有利 ? | … 10. |
・ リミット・レイズ (♦♣) | … 11‐12. |
・ リミット・レイズ (♦♣) の後は … | … 13‐15. |
・ 1♣ 〜 1♠ オープンへの 2NT | … 16‐18. |
・ ルールオブ 23 (2NT が示す強さ) | … 19‐20. |
・ リバース・ビッド (2 の代の応答) | … 21‐23. |
・ 1♦‐2♣ は 要注意 | … 24‐26. |
・ ゲーム・コントラクトに到る道筋 | … 27‐28. |
・ ゲーム・フォーシングの手段 | … 29. |
・ 第 4 スートフォーシング (FSF) | … 29‐32. |
・ ノートランプのストッパ | … 33‐40. |
・ ボロでも ストッパ ? | … 33‐35. |
・ ハーフ・ストッパ | … 35. |
・ ストッパを確認する | … 35‐38. |
・ ハーフ・ストッパを確認する | … 39‐40. |
・ ♠ 5 枚+♣ 5 枚でのオープン | … 41‐43. |
―― 13 pts です。長さ点 (LP) を含めて 数えます。
―― どうなるか分かりませんが,では やってみましょう。
その 6 つの手を再掲すると ….
TP | LP | HCP | Rule of 20 | |
[1] | 13 | 3 | 10 | + 7 + 3 = 20,オープン |
[2] | 12 | 0 | 12 | + 4 + 3 = 19, パス |
[3] | 12 | 1 | 11 | + 5 + 4 = 20,オープン |
[4] | 13 | 1 | 12 | + 5 + 3 = 20,オープン |
[5] | 12 | 0 | 12 | + 4 + 4 = 20,オープン |
[6] | 13 | 0 | 13 | + 4 + 3 = 20, パス? |
―― この結果から,どんなことが分かりますか ?
―― それでは,次に食い違いに目を向けましょう。
[3] と [5] には,1 つの特徴があります。分かりますか ?
―― その通りです。
ルールオブ 20 では,この 4 枚スートを カウントします。
その理由は お分かりですね。
―― 二人で長いスートを持っていると,プレイのときに,
多くのトリックを取れる。…
これは,スート・コントラクトにも,ノートランプ・コントラクトにも,共通しています。
この点は,ルールオブ 20 の長所として,よく理解されています。
ところが,ルールオブ 20 は,ビッドの上でも重要なのです。
―― 手の形により 分けて考えましょう。
第 1 スートが 5 枚の場合,
オープンに必要な HCP は,それぞれ,次のようになります。
手の形 | 13 点オープン | ルールオブ 20 | 切り札発見確率 |
5-3-x-x | 12 HCP | 12 HCP | 54.4 % |
5-4-x-x | 12 HCP | 11 HCP | 74.2 % |
―― こういう種類の確率を,私がいろいろ正確に計算しました。詳しくは別ページを
お読みいただくとして,今の場合について,説明しましょう。
こういうことです。
(1) 5 枚のスートをあなたがオープンしたとき,
パートナーがそのスートに 3+ 枚を持つ確率は 54.4 %,つまり ほぼ 2 回に 1 回の割合です。
(2) [53] 型の場合には,これ以上切り札の探索はできません。
仮にレスポンダが何かのスートをビッドしても,それは 4 枚しか保証しません。
(3) [54] 型だったら,機会があれば,自分から第 2 スートを示すことができる。
第 2 スートのフィットまで探索できると,フィット確率がぐ〜んと上がって,(5-3 フィットと 4-4 フィットの確率を合計して) 74.2 %,
すなわち,ほぼ 4 回に 3 回の割合です。
―― その通りです。
したがって,[54] 型ならば,11 HCP でも
オープンするのが得です。
先へ進んで,第 1 スートが 4 枚の場合は,
次の通りです。
手の形 | 13 点オープン | ルールオブ 20 | 切り札発見確率 |
4-3-3-3 | 13 HCP | 13 HCP | 33.7 % |
4-4-x-x | 13 HCP | 12 HCP | 60.3 % |
―― はい。ビッドの機会まで考慮した確率は,このようになります。
[44] 型で 2 回ビッドして 2 スートを示せると,フィット確率が ほぼ 2 倍になります。
1 HCP の差なんか 問題ではありません。切り札が見つかることの方が,ずっと大事です。
もちろん,[43] 型の場合,パートナーが 3 スートのどれかに 5 枚を持っている確率は高い。
けれども,ビッドがあなたから始まった場合,そのフィットを見つけるのは,とても難しい。
例外として,1NT オープンできる強さがあれば ( トランスファが使えるので ),問題ありませんが,
単にスートでオープンした場合には むずかしい。
―― そう思います。私も,確率の計算を終えるまでは,ルールオブ 20 に ここまで深い意味があることに気づきませんでした。
先人の慧眼には 敬服します。
いま思い起こすと,私がブリッジを始めた頃は,システムそのものは今よりずっと単純でした。
けれども,オープニング・ビッドがとても難しかった。
オープニング・ビッドが入門者の障壁になっていました。
しかし,今ではこのルールのお蔭で 初心者も正確にオープン / パスできるので,
最初の障壁は消滅しました。
ここで 脱線から戻りましょう。
[43] 型が出たついでに,ここでひとつ注意を付け加えておきます。
| |||||||
|
―― いいえ。それはいけません。
仮にスペードを切り札にしても,あなたのこの手では,
(他の 3 スートがどれも 3 枚なので) 切ることができません。
ステイマン 2 の目的は,4 枚 + 4 枚の
メジャー・スートのフィットを見つけることですが,それは 切り札で切れる場合に 意味を持ちます。
切れないのなら,4, 4 より 3NT の方が安全です。
―― いいえ。それもまずい。
1NT をビッドしたパートナーは,バランス・ハンドを持っています。
あなたも 最高のバランス・ハンドです。
二人の手に 長いスートはありません。
この場合に トリックを稼ぐのは,長いスートではなくて,HCP に頼る真っ向勝負 …。
こういう [43] 型では,1 HCP 減点して 2NT をビッドします。
―― はい。
[43] 型のオープンには 14+ pts が必要です。
13 pts ではパスします。
|
|
―― その基準は,
(1) ダミー点で数えて,10〜12 pts。
(2) 切り札のサポート枚数は 4+ 枚です。
ここで,「切り札 4 枚」は,絶対に必要な条件です。
ただし,オーバーコールが入った場合には,3 枚の良いスートでも リミット・レイズします。
―― この理由は,簡単です。
切り札の合計枚数が 8 枚ではなくて 9 枚だと,1 トリック余分に取れる (と期待できる) からです。
下の説明 (↓) を お読み下さい。
よく知られている LoTT (合計トリック数の法則) は,「7 枚目以降の
切り札がラフに使えること」を前提として 成り立ちます
(LoTT のメカニズム)。
そこで,North の リミット・レイズを受けた South は,ルールオブ 20 に照らして判断し,下限の手でない限り ゲームをビッドします。
[1] | K 7 5 |
A Q 9 8 6 | |
9 | |
K 9 8 4 | |
( 12 HCP ) |
12 HCP のこの手は,1 オープンするには下限です。
しかし,パートナーが リミット・レイズして切り札 4 枚を保証してくれると, のシングルトンの値打ちが ぐ〜んと上がります。
こういう場合には,( シングルトンが絵札の場合を除いて ) オープンできる
最低限の手でも,ゲームをビッドしなさい … と,
Mike Lawrence : "Conventions" (ソフトウェア) は 勧めます。
この勧めが正しいかどうか,一度 自分で試してみて下さい。
―― リミットとは,「手の強さの範囲を示す( 制限する )」という意味です。
そして,手の強さの範囲を示すと同時に,パートナーをゲームへ誘うビッドを リミット・レイズ と呼びます。
よく御存じの例としては,1NT を 2NT に上げるのも リミット・レイズです。
このビッドは,8〜9 pts という狭い範囲を示して,
オープナーを 3NT へ誘います。
North | コントラクト | |
A 6 4 | 4 | |
K 5 4 2 | ||
10 6 2 | ||
West | K 7 2 | East |
Q 9 8 3 | J 10 5 2 | |
J | 10 7 3 | |
A J 8 4 | K Q 5 3 | |
J 10 9 5 | Q 8 | |
K 7 | ||
A Q 9 8 6 | ||
9 7 | ||
A 6 4 3 | ||
South (13 HCP) |
North | コントラクト | |
A 6 4 | 4 | |
K 5 4 2 | ||
10 6 2 | ||
West | K 7 2 | East |
Q 9 8 3 | J 10 5 | |
J | 10 7 3 | |
A J 8 4 | K Q 9 5 3 | |
J 10 9 5 | Q 8 | |
K 7 2 | ||
A Q 9 8 6 | ||
7 | ||
A 6 4 3 | ||
South (13 HCP) |
|
|
―― その基準は,
(1) ダミー点をまだ使わずに,11〜12 pts.
(2) 切り札のサポート枚数は,5 枚.
です。
マイナー・スートの場合には,オープナーの切り札が平均して 4 枚なので (3 枚のこともある),
リミット・レイズには 「切り札 5 枚」が必要です。
要するに,リミット・レイズには,合計 9 枚の切り札が必要です。
その理由は,さっきと同じです。
ただし,オーバーコールが入った場合には,4 枚でも リミット・レイズして 競り合います。
マイナー・スートでの リミット・レイズは,メジャー・スートの リミット・レイズ場合とは 使い方が かなり違うので,注意が必要です。
[A] メジャー・スート () は どちらも 3 枚以下に限ります。
もしも 4 枚のメジャー・スートがあれば,まず それをビッドします。
[B] オーバーコールがあれば,ネガティブ・ダブルを使って メジャー・スートを示します。
[C] リミット・レイズの後では,ノートランプを目指すので,ダミー点に頼らずに 十分な強さが必要です。
[D] (メジャー・スートの場合と違って)
急いで切り札のサポートを示す必要は無いので,
ほかに適当なビッドが無く,リミット・レイズが適切な場合に
限って,ダブルレイズします。
つまり,このビッドの優先順位は かなり低い。
「珍しい」と言っても よいでしょう。
South |
8 7 2 |
A 8 3 |
J 5 |
K Q 8 6 5 |
( 10 HCP ) |
―― メジャー・スートの リミット・レイズは 誰でもよく経験しますが,マイナー・スートの リミット・レイズは,
珍しいので,対応に困ることがあるようです。
ブリッジの本にも あまり見かけないので,少し丁寧に説明しましょう。
オープナーは,通常,この リミット・レイズ 3 をパスします。
|
|
|
―― はい。その通りです。
でも,その場合には,North は 1 オープンではなく,1NT オープンしたはずです。
[North] |
K Q |
Q 7 |
A K 7 2 |
A 9 7 3 2 |
( 18 HCP ) |
[1] |
|
|
|
―― その場合には,[2] スペードのストッパ を持って
いれば,3 をビッドします。
これを受けて North は,ハートが止まらないことが分かるので,5 に行きます。
ハートの負け札が 2 枚あるので,スラムは無理です。
[2] |
|
|
|
―― South の 3 が 10 HCP を保証しているので,
そういうことは稀ですが,でも その場合には,[3] South は 4 をビッドします。
そこで North は (負け札が 1 枚, 2 枚の合計 3 枚あることを知り) 4 をパスします。
[3] |
|
|
|
―― その場合には,[4] 3NT が良いコントラクトになります。
ただし,South が リミット・レイズ 3 のところで 2NT をビッドしたかも知れません。
[4] |
|
|
|
―― その場合 (例) には,何も問題ありません。
急いでパートナーのスートを上げる必要はありません。
新しいスートを (3 枚でも) 何か 1 の代でビッドしておけば,とりあえず フォーシングです。
13+ pts の手で,是非ともフォーシング・レイズを伝えたければ,クリス-クロスというコンベンションがあります。
でも,こんなものを覚えていては,先へ進めません。
―― これには,いきさつを知っておくと よいでしょう。
話を昔に戻すと,4 枚メジャー・システムの時代には,1 の代の
スート・オープンに対して
[A] | 13〜15 HCP → 2NT |
16〜18 HCP → 3NT |
―― 2NT,3NT という応答は 使う必要が無いので 使いません。
切り札のサポートが無くて,10+ HCP の手の
場合には,どれかの新しいスートをビッドできます。
急いで NT を ビッドする必要は ありません。
パートナーの切り札が 6+ 枚のこともありうるので,ゆっくりビッドして 2人で最適のコントラクトを見つけるように努めます。
もちろん,その結果が 2NT とか 3NT になることは ありえます。
―― マイナー・スートの場合には 考え方が変わります。
たとえ,オープナーの または が長いとしても,(そして自分にそれのサポートがあったとしても) 5 の代に行くよりは,3NT を目指します。
したがって,メジャー・スートが両方とも 3 枚以下で,
しかも NT 向きの手の場合に,NT をビッドすることを考えます。
その場合に 2 通りの流儀があります。
さきほどの [A] と
[B] | 11〜12 HCP → 2NT ( 10 HCP は不可 ) |
13〜15 HCP → 3NT |
―― はい。1 の代のマイナー・オープンに対して
・ メジャー・スートがどちらも 3 枚以下で,
・ 6〜10 HCP のバランス・ハンド.
の場合,レスポンダは 1NT をビッドします。
(ただし,1 オープンの場合には,8〜10 HCP で 1NT).
―― その場で,その 2NT は 「強い/弱い」のどっち ? とチャットで訊ねる人もいます。
1 つの対策として,1 回目のビッドに 2NT を使わないこともできます。
2NT をビッドできるような手では,
新しいマイナー・スートをビッドできるのが普通なので,そうビッドしておいて ( 1 回フォーシング),次回に本来の NT をビッドすれば,誤解は生じません。
| |||||||
|
―― ここでの自然なビッドは 3NT です。
今では 3NT をビッドしても,[A] 16〜18 HCP だ
と誤解する人は,まず いないでしょう。 そんなに良い手は,めったに来ないからです。
でも 安全を思うなら,3 枚のダイヤモンドで 1 を
ビッドします。
そして 次回に 3NT をビッドすれば,絶対に 誤解は起こりません。
―― 2NT については,メルさんが提唱している「ルール・オブ 23」を知っておくとよいでしょう。
North | East | South | West |
1NT | パス | 2NT |
―― 2NT が使われる最も分かりやすい例は ⇒
―― ですから,オープナーは,自分が下限の 15 HCP であっても 合計 23 pts あることを知ります。
―― はい。
これ以外にも 多くの場合,2NT をビッドすると,
二人の手を合計して 23 pts を保証することになります。
North | East | South | West |
1 | パス | 1 | パス |
1NT | パス | 2NT |
North | East | South | West |
1 | 2 | 2NT |
―― 上には分かりやすい例を挙げましたが,
2NT = 23 pts,
3NT = 25 pts
これを覚えておくと ビッド経過が複雑になった場合にも対処できるでしょう。
North | East | South | West |
1 | パス | 1 | パス |
3 |
―― はい。
―― はい。その通りです。
You | LHO | Pard | RHO |
1 | パス | 2 | パス |
2? |
―― ここで 2 をビッドしたくなるのは,たとえば
こんな手のときです。
[1] | A Q 9 2 |
A Q J 6 2 | |
A 10 | |
9 3 | |
( 17 HCP ) |
[2] | Q 9 7 2 |
A Q J 6 2 | |
A 10 | |
9 3 | |
( 13 HCP ) |
―― ここでは (復習)
[2‐1] もしも クラブにストッパがあれば,2NT をビッドします。
[2‐2] ダイヤモンドが 3 枚あれば,3 をビッドします。
今は そのどちらも無いので,仕方ありません …
[2‐3] ハートが 5 枚ですが,2 をビッドします。
もともと 1 オープンに対して (そのすぐ下のスートで)
2 と答えるのは,
最低限の手を持ったオープナーを 厳しい状況に追い込むので,
ハートが 5 枚の可能性も,レスポンダは 頭に入れている筈です 。
―― 確かに,23 pts というのは,2NT ができるための 重要な数字です。
だから,ここで 2 をビッドしても,問題は無いように見える。
ところが,ここで考えなければならない点は,コントラクトの種別が未だ
確定していない,ということです。
先ほどの例の強い方の手 [1] と比較してみましょう。
[1] の場合には,2 と リバースした後,3 の代のビッドを使って, 最適のコントラクトを見つけられます。
ゲームに行けるだけの強さがあることが 分かっているので,2人とも安心してビッドできます。
ゲームをビッドするまで,どちらも パス しないからです。
場合によっては,スラムがあるかもしれません。
ところが [2] の場合には,ゲームがあるかどうかは
(少なくとも オープナーには) 分からない。下手をすると,
高すぎるコントラクトになってしまって ダウンすることもありえます。
ですから,こういう 2 種類の (強さが 1 トリック) 異なる手を区別してビッドすべきです。
ゲームがあることが確実な手では,(スラムも視野に入れて)
最適のコントラクトを見つけることが大切です。
でも,パートスコアで終わる手なら,(ビッドの回数が少ないから) 最適の
コントラクトを見つけることは難しいし,そもそも,その必要がありません。
―― はい。その通りです。
あなたが 2 をビッドして,もしも レスポンダの手がほんとの下限でなければ,
手の強さを伝えるビッドを 何か返してくるでしょうから,それからでも 3NT などを見つけることはできます。
| ||||||||||
|
―― はい。残念ながら 示せません。
それを 3 の代で示して 意味があるのは,ゲームがある場合です。
それよりも,あなたがここで 3 をビッドしたとき,
それが
(1) 余分の強さを示している.
(2) 下限の場合もありうる.
のどちらであるかが分からないと,レスポンダは,自分が下限 (10 pts) のときに とても困ります。
もしも (1) だったら,
ゲーム・フォーシングだから,レスポンダは 最適のゲームが見つかるように ビッドを考えます。
絶対に パスしません。
けれども (2) だったら,
下限の手を持つレスポンダは,3 を パスも視野に入れて考える。
この両方に対応することは,不可能です。
You | LHO | Pard | RHO |
1 | パス | 2 | パス |
2 |
―― 1 オープンに対して,2 という返事,下限の手を持つオープナーにとっては厳しいですね。
この場合も,例外ではありません。2 も 2 も,
どちらも強さを保証する … そう約束しておけば,オープナーが リバースできる強さを持っているとき,
レスポンダが下限 (10 pts) でも ゲームに 辿り着けます。
―― はい。強い手の場合にゲームを確実にビッドすることが大切なので,その代償として,弱い手の場合には 不自然なビッドも避けられません。
弱い手のオープナーは,2, 2NT, 3 のどれかを 無理に当てはめます。
| ||||||||||
|
―― はい。これには,レスポンダも 少し責任があります。
―― 1 オープンに対して 2 をビッドするときには,
上のようなことを事前に よく考える必要があります。
1‐2 は,特に要注意です。
[6] | 10 3 |
A 8 4 | |
8 5 2 | |
A K 10 8 4 | |
( 11 HCP ) |
[7] | 7 3 |
Q 10 8 2 | |
J 3 | |
A K 10 8 4 | |
( 10 HCP ) |
―― はい。クラブを示せません。
レスポンダの手 [7] は,2 回目に 2 を
ビッドできるような強い手ではないので,1 回目に
1 をビッドすることが 肝心です。
―― はい,そうです。
正確に言うと,それだけの強さがある場合には,
「最初に 2 をビッドしてよい」
ではなくて,
「2 から ビッドすべき」
です。
[8] | 7 3 |
Q 10 8 2 | |
A 3 | |
A K 10 8 4 | |
( 13 HCP ) |
―― うーん。だいたいの基準は,自分でもオープンできるかどうかなんですが …。
[9] | 7 4 3 |
Q 10 8 2 | |
A 3 | |
A K 10 8 | |
( 13 HCP ) |
― いいえ,それはいけません。リバース・ビッドは,確かに
(1) 余分の強さを持つ.
ことを伝えます。でも,同時に
(2) 5 枚 + 4 枚の偏った手である.
ことも伝える。あなたのリバース・ビッドを聞いたオープナーは,他に適当なビッドが無ければ,3 枚のクラブで 3 をビッドするでしょう。
―― ブリッジのビッドに慣れてくると,オープン側がゲーム・コントラクトを決めるには, 大まかに分類して,2 つの道筋があることが,おぼろげながら 分かるでしょう。 見やすいように,これを表にまとめると …。
(A) 種別が確定している場合
|
(B) 種別が未確定の場合
| |
↓ | ↓ | |
↓ | (B1) 強さを示す
| |
↓ | ↓ | |
↓ | (B2) 種別を決める (どこ ? )
| |
↓ | ↓ | |
(A1) 適切な代を決める
| (B3) 適切な代を決める
|
North | East | South | West |
1 | パス | 3 | パス |
? |
North | East | South | West |
1 | パス | 2 | パス |
3 |
―― はい。合計 16 + 10 = 26 pts となるので,
このジャンプは,ゲーム・フォーシングです。
でも,自分ひとりでは,どういうコントラクトが最適か 決められません。
3NT,4 あるいは 6 が
あるかも知れません。
―― はい。そうです。
強い手の場合には,この順序が大切です。
種別を探すより前に,(B1) 強さを伝えてしまう。そうすれば,あとは安心してビッドできるので,
(B2) 種別を見つけることも,(B3) 適切な代を見つけることも,それからでも遅くはありません。
強い手だからといって,急いでブラックウッドを使う必要は ありません。
付け加えると,(B) の方針を徹底して,1,1 オープンで, レスポンダに十分な強さがあれば,最初のビッドで (B1) を伝えるのが,2/1 システムです。
―― はい。パートナーとのあいだで,どちらかに取り決めて使います。
実際には,ゲーム・フォーシングとして使う方が利点が多いので,
その使い方がほとんどです。「25 のコンベンション」も ゲーム・フォーシングを採用しています。
North | East | South | West |
1 | パス | 1 | パス |
1 | パス | 2 |
―― あります。
でも,その前に,この 2 の普通の意味は ?
[South] |
J 8 |
Q 10 6 5 |
J 10 8 |
A K 10 8 |
( 11 HCP ) |
―― ところが,FSF というコンベンションを使う場合には,上の手で 2NT をビッドします。そして,2 を もっと良い手のために使います。
[South] |
A J 8 |
K 10 6 5 |
A J 10 3 |
J 8 |
( 14 HCP ) |
―― たとえば,こんな手です。
―― はい。その通りです。
この 2 というビッドは,クラブについて 何も保証しません。
もしも,このくらいの HCP があって,クラブがしっかりしていれば,
ここで 2 ではなしに,3NT を
ビッドできます。
でも,こんなクラブでは,3NT をビッドできません。
けれども,もしも パートナーの手でクラブが止まれば,3NT に行くだけの強さがある …。
こういう状況を パートナーに伝えるために,FSF を使います。
一般に,
―― ゲームを探す努力を 二人のあいだで続けます。
(1) オープナーの が しっかりしていて,ノートランプが可能ならば,
2NT をビッドします。
|
|
|
|
[North]
|
|
―― (笑) そのまた後の展開ですか ?
(1) の場合,レスポンダ South は,スラムに
関心が無ければ,3NT をビッドします。このコントラクトは,メイクするでしょう。
(2) の場合,ハートを 5 枚持って
いれば 4 をビッドしますが,今は 4 枚なので,3 で我慢します。
(3) の場合にも,3 で我慢します。
North | East | South | West |
1 | パス | 1 | パス |
1 | パス | 1 |
―― なりません。
この 1 は,単なる 1 回限りのフォーシングです。
―― 2 をビッドします。
―― どうぞ …。
―― と言うと ?
Pard | RHO | わたし | LHO |
1 | パス | 1 |
―― ふーむ。でも,そういう取り越し苦労は,しなくても いいんじゃないですか。 ダウンしたら 運が悪かったと思えばいい …。
―― うーん。たしかにいい加減かもしれないが …。
でも,ノートランプの経験を思い出してみて下さい。
どれかのスートを全部取られたのに,1NT や 2NT がメイクしたという経験はありませんか ?
時には,3NT さえ …。
―― 仮に絵札なしのボロのハート 4 枚を あなたが持っているとして,パートナーが同じようにボロの 2 枚のハートを
持っているとしましょう (NT に行くパートナーは,各スートに少なくとも 2 枚持っています)。そうすると,残りのハートの枚数は
13 − ( 4 + 2 ) = 7
となる。7 枚のハートの分布として,最も可能性が高いのは 4-3 の分かれです。したがって,ハートを全部走られたとき 取られるのは 4 トリックです。
残りの 9 トリックを全部取れば,3NT も無事にメイクします。
―― はい。そう思います。そういう意味では,あなたの言うボロの 4 枚をストッパに準ずると考えてよいのでしょうね。
―― ありえます。そういう場合には,右オポさんが親切だったら,オーバーコールしてくれる筈です。
| |||||||||
|
―― Jxxx をストッパと考えます。
―― はい。たしかにその通りですが,そういうふうに細かく気にしていると,ビッドはできなくなってしまう。
一応,これくらいの 4 枚ならストッパと考えてビッドします。
3 枚以下でしたら,Qxx とか Kx をストッパと考えます。
―― そういうのを,ハーフ・ストッパ (Half Stoppers) と呼びます。
完全なストッパを持っていなくても,二人がハーフ・ストッパを持っていると,
合わせて一人前のストッパになるので,ハーフ・ストッパと呼びます。
―― あります。でも,ちょっと難しいビッドになるので,下で別に説明します。 パートナーとのあいだで,阿吽 (あうん) の呼吸が必要です。
―― うーん。FSF (第 4 スートフォーシング) が絡むから,コンベンションということになるのかな。でも,「考え方」と言うのが 適切でしょう。
場合によってビッドの仕方が変わるので,この区別を理解しておくことが 大切です。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | パス | 1 | パス |
2 | パス | ? |
―― この状況では,
と のストッパを パートナーが,
のストッパを あなたが,
それぞれ持っていると考えられる。ここまでのビッドは,[2] の状況です。
―― はい。自分の手の強さ/長さを示す自然なビッドです。
ここで,もしも,あなたの手に のストッパがあって,ノートランプができそうだと思えば, をビッドする必要は ありません。
をビッドするのではなしに,直接にノートランプを
(あなたの手の強さに応じて,2NT または 3NT を) ビッドします。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | パス | 1 | パス |
2 | パス | 2 |
―― その場合に 2 を ここでビッドします。
これは,上の分類の [1] に当たります。
これが,第 4 スートフォーシング (FSF) です。
このビッド 2 は
「3NT に行くだけの十分な強さを 私は 持っています。
でも,スペードが止まりません。
もしもあなたの手に スペードのストッパがあれば,
2NT をビッドして下さい。」
と言っています。
FSF は ゲーム・フォーシングを意味するので,3NT の強さを保証します。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | パス | 3 | パス |
? |
―― リミット・レイズ 3 を受けて,
「3NT の可能性がある」
と思えば,上記の [2] に該当するので,二人のあいだで,下から順に ( の順に)
ストッパのあるスートを 3 の代でビッドしていきます。
これで,うまく行けば,3NT が見つかります。
これについては,リミット・レイズの項で説明しました。
―― 仕方ありません。4 または 5 を目指します。
―― はい。
でも,上の [1] と [2] の区別を理解していれば,対応できるはずです。
| |||||||||||
|
―― では,そういう例を見てみましょう。
オークションは,パートナーの 1 で始まりました。
これを右オポさんがダブル。
あなたの手は,こんなふうです。
これを見ると,ダイヤモンドを切り札にして 4 くらいはありそうです。4 枚のメジャー・スートが無く, しかも
ダブルの後なので,ここで リダブルしました。
すると左オポさんが 1。
このあと 二人が続けてパスして,あなたがビッドする番です。
ここで,何をビッドしますか ?
―― はい。適切なパスです。
ここでは,4 とか 5 を狙うこともできますが,
その前に 3NT の可能性を探りたい。さいわい,この手では, がフィットしていて,
トリックをたくさん取れます。 も も止まる
形で,もしも のストッパをパートナーが持っていれば,3NT ができます。
Pard | RHO | You | LHO |
1 | X | XX | 1 |
パス | パス | 2 |
―― 2 通りの解釈がありえます。
[1] 3NT を狙っていて, のストッパーの有無を訊ねている。
[2] を切り札にしてゲーム (またはスラム) を狙っている。
上の手の場合には,どちらの解釈も当てはまります。
―― とりあえず,[1] と解釈します。
つまり, のストッパがあれば 2NT をビッドします。
―― その場合には,自分の手の特徴を伝えるビッドを返します。
キュービッド 2 はフォーシングなので,
とにかく何かをビッドします。
―― はい。完全なストッパを持っていなくても,二人がハーフ・ストッパを持っていると, 合わせて一人前のストッパになります。
|
|
―― はい。クラブ 5+ 枚,ハート 4 枚の強い手でしょう … リバースしていますから。 (レスポンダのリバースは,前にも説明したように,ゲーム・フォーシングです。) それで,パートナーの 3 の意味は ?
―― それが 1 つです。
そのほかに,もう 1 つあります。ハートが 4 枚無くても,スペードのストッパを持っていれば,3NT をビッドして欲しい。
You | LHO | Pard | RHO |
1 | パス | 2 | パス |
3 | パス | 3 | パス |
3 |
―― あなたが,もしもスペードのストッパを
(1) 持っていれば,3NT をビッドする.
(2) 持っていなければ,4 をビッドする.
3 は そのどちらでもないので,ハーフ・ストッパとしか解釈できません。
―― はい。ブリッジが絶対にやめられなくなるでしょう。
―― はっきりした規則は ありません,…
というか,どちらに決めても困る場合があります。
いろんな人がどう言っているかをここで紹介しましょう。
そして,私の考えを最後に書きます。
A J 9 8 4 |
K 2 |
5 |
A Q 9 7 5 |
( 14 HCP ) |
10 6 5 4 2 |
A 2 |
3 |
A K Q J 3 |
( 14 HCP ) |
A K 5 4 3 |
Q |
J 3 |
K J 10 4 2 |
( 14 HCP ) |
|
|
|
|
―― できることなら 2つともビッドしたいのです。
16+ HCP あるような手ならば,どちらにしても (リバースできる強さがあり) 両方ビッドできるので
問題ありません。問題は,それ以下の手のときにビッドがスムーズにできるかどうかです。
―― その場合には,5+ 枚のスペードを持っていることをきちんと伝えられます。
したがって,スペードでフィットがあれば,問題はありません。
しかし,クラブを持っていることを うまく伝えられません。
もしも パートナーからの返事が 1NT とか 2 だったら,
こちらのクラブを示すことができる。けれども,2 とか 2 だったら (偏った手なので
2NT をビッドできないので),5 枚で 2 と リビッドするしかありません。
したがって, と の中身を秤に掛けて,(場合によっては のビッドを 諦めて) スペードを 2 回ビッドしても誤解が少なそうな内容ならば,1 をビッドするのが良いでしょう。
―― その場合には,オーバーコールが無ければ,2 巡目に 1 をビッドできます。その点は具合が良いのですが, スペードを何枚持っているか … という問題があります。そのような 1 は,4 枚のスペードを示します。 このため,パートナーが 3 枚のスペードを持っているとき,合計 8 枚の切り札があるのに,パートナーには 7 枚としか伝わりません。
―― 一般には,1 オープンすべきです。
私の確率計算によると,1 オープンに対して,
レスポンダが 3+ 枚のスペードを持つ確率は 54.4 % です。
つまり,2 回に 1 回の割合でサポートを期待できます。
先行きの不透明なクラブに頼るよりも,この確率に頼るのが良いでしょう。
ブリッジは,確率のゲームですから。
・ オープン側のキュービッド | … 44‐47. |
・ リミット・レイズで競り合う | … 47‐49. |
・ キュービッド・レイズで競り合う | … 50‐52. |
・ リダブル | … 52‐54. |
・ リダブルのあとは | … 54‐55. |
・ 競り合いでの リバース | … 56. |
・ リオープン | … 57‐59. |
・ リオープンのダブル | … 58. |
―― 確かにそういうことは あるでしょう。
キュービッドは,ブリッジのビッドを学ぶ上での一つの関所だと言えます。
―― ひとつの道筋として,いきなりキュービッドに取りかかるのではなく,その前段階として,第 4 スートフォーシング (FSF) を身に付けるのが良いと思います。
FSF は,オーバーコールが無い場合に,最適のゲーム・コントラクトを見つけるのに使われます。
これに対して,キュービッドは,
「 ディフェンス側が介入した場合に,FSF の代りに使われる 」
ようなものと考えて,ほぼ間違いありません。
つまり,FSF の感覚が身に付いていれば,その延長として 自然にキュービッド
できるようになる (と,どこかのブリッジ教科書に,多分,書かれている) 筈です。
[North] |
A K Q |
9 8 |
A J 9 7 6 2 |
K 10 |
( 17 HCP ) |
North | East | South | West |
1 | 1 | 2 | パス |
? |
―― そこへ East が 1 オーバーコールして,
パートナーは 2 をビッドしました。
ここで何をビッドするか … という問題です。
North | East | South | West |
1 | 1 | 2 | パス |
2 |
North | East | South | West |
1 | 1 | 2 | パス |
2 | パス | 2NT |
―― ハートのストッパが無ければ,
・ 4 枚の で 3 をビッド,
・ それも無ければ,5 枚の で 3 をビッド
します。
後者の場合には 3 を受けて,6 枚の を North がビッドできます。
North | East | South | West |
1 | パス | 2 | パス |
? |
―― はい。では,もう 1つ探してみましょう。こんなのがありました。
North | East | South | West |
1 | 1 | 2 | パス |
2 | パス | ? |
―― North はスラムを狙っています。
ですから,, に A, K を持っていれば,それを 4 の代で示します。
僅か 6 点しか保証していないので,コントロールは,K でも十分です。
3 の代でコントロール・キュービッドを始められるので,オーバーコールは実にありがたいものです。
A も K も無い場合には,3 を返します。
―― ダブルの場合と オーバーコールの場合を 分けて考えます。
ダブルの場合にどうするかは,前に説明しましたね。
|
|
―― そうですね。
リダブルと 2NT を除くと,2 以上の代は,何をビッドしても 9 HCP 以下です。
ダブルに対して,3 は もはや リミット・レイズではなく,9 HCP 以下の弱い手です。
Pard | RHO | あなた | LHO | |
[B] | 1 | 2 | 3 |
―― ダブルする RHO [A] は,オープナーと同等 (またはそれ以上) の強さを持っていますが,2オーバーコールする RHO [B] の手は,平均的に見て,オープナー以下だからです。
[A] ダブルの場合
・ テイクアウト・ダブルする人は,
13+ pts の強い手を持っています。
・ しかし,あなたが 10 HCP 持っているのなら, 味方に合計 13 + 10 = 23 pts 以上あるので,慌てることはありません. ・ あとのビッドをどうするかという問題は残りますが (↓), この程度のビッド (XX, 2NT) で強さを伝え,後から種別を決めます。 ・ 問題は,あなたの手がそれほど強くないけれども (〜9 pts), を 3〜4 枚 持っている場合です。 このときには,激しく競り合う必要がある。そこで,背伸びして 3 を ビッドします。 ・ この 3は,オープナーを ゲームに誘う意味ではありません。3をビッドして,アドバンサをビッドしづらくする (邪魔する) ためです。 |
[B] オーバーコールの場合
・ 一方,スートでオーバーコールする人の手は,平均的には, オープナーの手より弱い。 ・ 弱い相手に対して,無理な背伸びをする必要はありません。 ・ レスポンダが 6〜9 pts で 3 枚のスペードを持っているときには, 普通に 2 をビッドします。 ・ また,レスポンダが リミット・レイズできる強さなら,味方には 13 + 10 = 23 pts 以上あります。 したがって,相手を邪魔する必要は無く (背伸びする必要は無く),レスポンダが普通にリミット・レイズして構わないというわけです。 |
―― はい。そういうビッドをする人もいます … と言うか,今では,その方が標準です。
でも,その場合には,リミット・レイズを伝える代替方法 (次項で説明) を
用意する必要があります。
初級のうちは,3 の意味を
[A] ダブルに対しては,背伸びビッド (Stretched Bid),
[B] オーバーコールに対しては,リミット・レイズ,
として使うのが良いと思います。
―― とにかく,切り札が 4 枚で 9 pts 以下の手です。下限は,人と場合により いろいろです。 目的が「邪魔すること」なので,点数は全く問題ではありません。 切り札の枚数だけに頼って,ダウン覚悟で このようにビッドの代を競り上げるのは,LOTT に基づいています。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | 3 | 3 |
―― その場合の 3 には,2 通りの解釈が可能です。
(1) パートナーを 4 に誘っている本来のリミット・レイズ.
(2) 実は 2 をビッドする手だが,競り合いになったので
背伸びして 3.
―― はい。その通りです。パートナーは困ります。
でも,これは仕方がない。右オポがジャンプして 3オーバーコールした目的の一つが,それだったのです。
ジャンプ・オーバーコールして,もしもダブルを掛けられてダウンすれば,
かなりのマイナスになる …。その危険を冒してプリエンプトしたのですから,代償を得るのは当然です。
あなたの側は,自分たちにゲームが無いと思えば,ペナルティーのダブルを掛けることだって
できたのですから …。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | 2 | 3 |
―― あなたが 3 リミット・レイズしたものと想定して考えます。
したがって,ゲームがあると思えば 4 をビッドするし,無いと思えば 3 をビッドします。
このように,キュービッド・レイズは 1 回フォーシングであり,ゲーム・フォーシングではありません。
これが,さきほど キュービッドの説明の中で挙げた例外です。
―― ちょっと待って下さい。
キュービッド・レイズは,「25 のコンベンション」で紹介されていますが,いくら評判の高い本でも,こればかりは 初級者にお勧めできません。
もともと,オープン側は ビッドを有利に進められる状況にあります。
ですから,リミット・レイズできる手ならば,少なくとも初級のうちは,
その強さを素直にビッドするのが良いと思います。その方が,ビッドに慣れるでしょう。
それに,キュービッドを「リミット・レイズ以上」と取り決めた場合,
このビッドそのものは簡単に (安易に) できますが,その後のビッドが難しくなることがあります。
単なるリミット・レイズなのか,ゲームまであるのか,そのどちらなのかを
上手にパートナーに伝える必要があるからです。
―― キュービッドは,切れ味の鋭い刃物のようなものです。たまに使うべきところで使います。
そうでないと,かえって怪我をすることがある …。
キュービッドを,上のように "リミット・レイズ以上" として使う人は確かに多いのですが,
それは ちょっと もったいない。これを
キュービッド = ゲーム・フォーシング
として使うのが,ブリッジでの本来の使い方です (と,何かの教科書に,多分,書かれている筈です)。こちらの方が,切れ味が鋭い …。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | 2 | 3 | 5 |
? |
こういうキュービッドは,マイナースートのオープンでも 同様に使えます。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | 1 | 2 |
ただし,現在では,上のキュービッドをキュービッド・レイズに使うのが普通です.
したがって,上の 2 は,「クラブでの リミット・レイズ
(5 枚のクラブと 10 HCP) 以上」を意味します。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | X | ? |
―― 1 の代でビッドできる場合には,ダブルが無かったときと同じように考えてビッドします。
―― 4 枚のスペードと 6+ pts を保証します。10+ HCP のこともありえます。 したがって,
| |||||||
|
| |||||||
|
―― ところが,いまはダブルが掛かっている。
右オポは,スペードに良いカードを持っているでしょう。
こういう場合に,4 枚あるからと言って,スポット・カードだけのスペードをビッドするのは無意味です。
ここでは とりあえずパスします。
| ||||||||
|
―― 11 HCP あるので,リダブルもできるし,1 をビッドすることもできます。 どちらも可能です。
―― 左オポがパスしてくれるなら,どちらでも同じです。
しかし,左オポの手によっては,5 枚程度の
スペードで 2 とプリエンプトしてくるかも知れません。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | X | XX | 2 |
このように考えると,安易にリダブルするよりも,4 枚のメジャースートを はっきり示すべきです。もともと,1, 1オープナーは 4 枚のメジャースートを持っていることがあるので,それを忘れないことが大切です。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | X | XX | パス? |
―― 普通,LHO は 何かビッドします。
でも,パスすることもありえます。
―― この状況で,ビッドした 3 人の手の強さを考えてみましょう。
オープナーは 13 pts,ダブルした RHO も 13 pts,
リダブルしたあなたが 10 HCP ….
いずれも,下限の数値です。
したがって,40 から引き算すると,LHO は せいぜい 4〜7 HCP 程度の弱い手です。
ここで,LHO は 自分の一番長いスートをビッドします。
でも, 以外は どのスートも似たりよったりということもあります。
そういうときには,ダブルを掛けたパートナーに
ビッドの順番が回るので,無理してビッドせず,パスします。
| ||||||||
|
―― こんな手ならば,パスして,パートナーにビッドしてもらいます。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | X | XX | パス |
パス ? |
―― 状況を把握することが大切です。
さきほどの 2つの道筋 を思い出して下さい。
―― はい。その通りです。
ここでのオープナーの判断は,手の強さではなく,形に依ります。
普通は,最適の種別を決めるために,パスします。
そして,リダブルしたレスポンダのビッドを聴こうとします
〔このように,待つべきときに待つ という姿勢も ブリッジでは大切です。
何でも自分がビッドして決めようとすると,パートナーシップに響きます〕。
でも,いつでも必ずパスするのではありません。
(A) 5+ 枚のスートが 2 つある場合には,ここで もう一つのスートをビッドして,レスポンダに
偏った手であることを伝えます。
(B) スペードが長くて強い場合には,2 をビッドして,そういう
形であることを伝えます。
| |||||||||
|
―― ビリー (Billy Miller) さんの説明は,「パートナーが 2 の代でもう一度ビッドするよう要求したのですから」となっていますね。
―― 当初は私も不思議に思っていましたが,今では,たぶん こういうことなのだろうと考えています。
2 という応答は,10+ pts を示しているけれど,ゲームを保証しているわけではありません。1 回フォーシングだから,オープナーは何かビッドしますが,レスポンダがそれをパスすることは ありえます。
ですから,もしも,オープナーが 15〜16 pts 以上の強い手だったら,「強い手だよ」とゲーム・フォーシングを掛ける
必要がある。
ふつうは,リバース・ビッドが その役目を担います。
ところが,いまは 1オーバーコールが入ったので,キュービッド 2 がその目的に使える。だから,リバース・ビッドからゲーム・フォーシングの役目を外すこともできる。むしろ,外したほうが,ビッドの自由度が増える。したがって,この場合には,リバース・ビッド 2 は余分の強さを示さない。
たぶん,こんな説明なんだろうと思います。
―― 一般に,パス,パス とパスが 2つ続いて,ここでパスするとオークションが終ってしまう … という状況で,
パスせずに何かビッドすること
を「リオープン (Reopening) 」と言います。
あなた | LHO | Pard | RHO |
1 | 1 | パス | パス |
? |
―― ここで,パートナーの手を想像してみると …。
―― ずいぶん 筈 が続きましたが,この状況で考えられるビッドは 何ですか ?
―― それでは,具体的に考えてみましょう。
| ||||||||||
|
―― いいえ,絶対にいけません。それは,ひとりよがりのビッドです。
1NT オープンできなかった手を,1NT で リオープンしては いけません。
パートナーがパスしている状況で,自分ひとりで 1NT をビッドするのは,それ以上の強さ (18+ HCP) を示します。
「並みの手」だ ということを よく弁える (わきまえる) 必要があります。
―― それも間違いです。
パートナーの手は,あなたが さっき言ったように弱い。1 が
ダウンする可能性は ほとんどありません。
―― さきほど,パートナーの手が 弱い と決めつけましたが,ネガティブ・ダブルを使っている場合には, ひとつだけ重要な例外があります。
[パートナー] |
9 4 |
A Q 7 6 2 |
Q 6 5 |
Q 8 2 |
( 10 HCP ) |
|
|
―― その通りです。
どんなに弱い手でも,オーバーコールされたスートが短ければ,必ず ダブルを掛けます。
このダブルを,リオープンのダブル (Reopening Double) と呼びます。
ネガティブ・ダブルを使っているとき,これは,とても重要なダブルです。
このダブルをパートナーがパスすると,ペナルティー・ダブルが完成します。
―― それは,意味がありません。
パスしたパートナーは,スペードを仮に 4 枚持っているとしても,5 pts 以下ですね。
―― ここで 1 が意味を持つことは滅多に無いでしょうが,
[3] | A 10 8 4 2 |
3 | |
A Q 9 8 6 3 | |
10 | |
( 10 HCP ) |
|
|
・ 介入する人の気持ち | … 60. |
・ 4 枚でのオーバーコール | … 61‐62. |
・ 1 の代のオーバーコールは フリーランチ | … 63‐65. |
・ ディフェンス側のキュービッド | … 66‐69. |
・ 1NT オープンへの干渉 | … 70. |
・ 1NT に対するオーバーコール | … 70‐72. |
・ 1NT に対するダブル | … 72‐75. |
・ ルール・オブ・セブン (プリエンプトに対抗する) | … 76‐79. |
| |||||||
|
―― ビッドの標準的な約束では,1 の代のオーバーコールには,5 枚の良いスートを必要とします。
しかし,このくらいの強さの手で,この程度の内容のスペードがあるのなら,4 枚で 1オーバーコールして構いません。
もちろん,パートナーは,あなたが 5 枚のスペードを持っていると思うでしょう。
この手ならば,そう誤解されても問題はありません。
ただし,4 枚の場合には,その内容が大切です。
A または K を頭にして,A K Q J 10 のうちの 3 枚は
必要です。
4 枚目のカードも,できれば 7 とか 8 とか …。
Mike Lawrence: "The Complete Book on OverCalls in Contract Bridge", Chap. 2,
Overcalling on Four Card Suits, (Devyn Press, 1980).
これは,オーバーコールのバイブルです。
―― その条件は,
(1) 上記の長所に照らして,4 枚の内容が非常に良いこと.
(2) 自分でもオープンできる手であること.
です。
―― それは,絶対にいけません。1 の代と 2 の代ではぜんぜん違います。
4 枚でオーバーコールしてよいのは,あくまでも 1 の代の話です。
それから,2 番目の条件「自分でもオープンできる強さ」が重要です。切り札の枚数が少ないので,強い手が必要です。
ただし,4 枚でのオーバーコールには,異論があります。
―― はい。競り合いでは,切り札の枚数が重要になります。
切り札の合計枚数が何枚であるかによって,
安全にビッドできる代が決まります。LoTT が保証する「安全な代のルール」です。
―― はい。要するに,トリックを取れるだけの強さがあるかどうかが ポイントです。 でも,そのほかに,妨害するという要素が強い …。
それほど大きな違いはないと思うけど,でも受け取る感じの違いはあるでしょうね。
ブリッジを始めて間がない人が誤解するかも知れないので,ちょっと脱線気味ですが,
この「感じの違い」について説明させて下さい。
―― オーバーコールのクラシックな基準は,ノンバルの場合
1 の代では,5 枚の良いスートと 10 pts
2 の代では,6 枚の良いスートと 12 pts
です。また,バルの場合には
1 の代では,5 枚の良いスートと 12 pts
2 の代では,6 枚の良いスートと 14 pts
です。
どちらの場合にも,枚数だけでなく,強さも必要です。
5 枚 (6 枚) でも その内容が悪ければ,さらに点数が必要です。
私は,ブリッジを習い始めたときに,上のように教えられました。
この基準は,今でも変わりないはずです。
―― あっ,そう言われても仕方がないか …。
それはともかく,覚えやすい数字なので,これを基準として頭の隅に入れておいて下さい。 だんだん説明するように,この基準を知っていることは大切だと思うのです。
オーバーコールの基準の格下げが いつから始まったのかは知りませんが,上に挙げた「バイブル」では,競技ブリッジで良い成績を上げるためには,格下げが必要だということを はっきり
指摘しています。4 枚でのオーバーコールも,その一つの事例です。
最近では,LOTT (合計トリック数の法則,Law of Total Tricks) の思想が普及したためもあって,
ついには,「1 の代のオーバーコールはフリーランチ」とまで言われるようになりました。どんなランチだか知らないけれど,ただでランチが食べられるのなら,食べないのは損,というわけです。
無遠慮なオーバーコールが まかり通る世の中です。
―― 競技としてのブリッジの世界では,得点の競争になる。たとえ無理なビッドをしてダウンしても,
相手に作られたときの失点よりも損が少なければ,勝ちです。だから,激しく競り合う。
もちろん,その見極めが単純ではありませんが,でも 激しく競り合う。
とくに,1 の代はペナルティーのダブルも掛からないし,5 枚のまぁまともなスートが
あれば,それをパートナーに伝える利益がとても大きい … これが,フリーランチの考え方です。
―― ところが,ここで一つ考えておくべきことがあると思うのです。
フリーランチをよく食べておられるはずの Larry Cohen さんは,現在 44 才のはずですが,
Cohen さんが (あるいは,Marty Bergen さんが) ご自分の家庭でお子さんたちとブリッジを
楽しむ場合を想像してみましょう。
この場合のブリッジは,もちろん,デュプリケートではなくて,ラバーのはずです。
いかに LOTT の普及で有名な Cohen さんでも,その場合には,フリーランチの激しいオーバーコールは なさらないでしょう。
ラバーのブリッジでも,競り合いは もちろん あります。でも,激しい競り合いは, 競技ブリッジに特有のものです。フリーランチのビッドにあまりにも慣れすぎてしまった人は, ラバーのブリッジにとまどうことがあるようです。
ブリッジは,本来,特定のパートナーとだけ組んでするものではなく,誰とでも
楽しめるのが優れた点です。何かの縁で知り合った 4 人の人が,偶然にブリッジを知っていることが分かって,「では」と言ってブリッジを始めることができます。
そういう場面で,攻撃的なビッドで失点の山を築き,「これでも得なんだから」と言われると,(それは,確かに理屈の上ではそうなのかも知れないけれど),
まわりの人は白けてしまって,全然 楽しくありません。
―― はい。
上の基準は,あまり恥ずかしいダウンをしないための基準とお考え下さい。
ブリッジの楽しみ方はいろいろあります。競技のブリッジがすべてではありません。
ブリッジを知っていてよかった と思うことが,皆さん これから何度もあるはずです。
RHO | あなた | LHO | Pard |
1 | 1 | パス | 2 |
パス | ? |
―― うーん。あなたが自分からこんなキュービッドをすることは 未だ無いかも知れませんが, でも パートナーがキュービッドすることはありうるから,どう考えたらよいか 知っておく必要がありますね。
キュービッドについては,一つ とても大切なことがあります。それは,
それで,はじめに,あなたの 1 が何を意味するかを確認しておくと …。
―― そうですね。あなたは (強い手の) ダブルを掛けていないし,1NT オーバーコールも していない。単に
1 オーバーコールした。
したがって,手の強さの上限は およそ 16-17 pts です。それを踏まえて,パートナーはキュービッドしています。
―― 目的は,はっきりしています。
あなたの手の強さ (最大 16 ‐17 pts) と組み合わせたときに,もしかして ゲームがあるかも知れない …。それを逃がさない
ために,パートナーはキュービッドしています。
―― パートナーの手の内容は はっきりしませんが,でも その強さは,上の「目的」から考えて 10+ pts です。上限は ありません。
―― 手の例としては,
|
|
―― このキュービッドの意味は,だいたい,次のようなものと思えばよいでしょう。
「私は,10 pts 以上のそんなに悪くない手を持っています。でも,どういうコントラクトを目指せば
よいのか分かりません。あなたの手によっては,3NT が最適かも知れません。6 があるかも
知れません。2 で終わるかも知れません。私一人では判断できません。
ですから,あなたの手の内容をもっと教えて下さい。」
という意味です。
―― あなたの手が,はじめのビッド (1) で伝えた内容の通りであって,それ以上付け加えることが無い場合には,2 をビッドします。
たとえば,10 HCP で 1 オーバーコールしたこの手の場合には,A を持っていますが,下限の手なので,2 をビッドします。
|
|
―― スペードが強い手の場合には,パートナーの手を 10 pts と仮定して,あなたの点数と合わせて できるコントラクトをそのままビッドします。
しかし,スペード以外にも特徴があって,しかも良い手 (13+ pts,オープンできる手) の場合
には,直ちにスペードをビッドせず,その特徴を伝えます。
|
|
|
|
|
|
[5] [パートナー] |
Q 10 6 5 |
A J 3 |
J 6 |
K 9 5 2 |
( 11 HCP ) |
―― はい,そうです。たとえば, この場合,1 に対して,3 では なしに 2をビッドします。
RHO | あなた | LHO | Pard |
1 | 1 | パス | 3 |
―― 1NT オープンする人は,15〜17 HCP の絵札を持っています。
HCP は全部で 40 ですから,残りは
40 − (15〜17) = 23〜25 HCP
しかありません。ですから,あなたがどんなに良い手でも,あなたの側にゲームの可能性は 殆んどありません。
そこで,できることと言えば,相手側のビッドを妨害すること,あるいは,パートスコアのコントラクトを勝ち取ることです。
ただし,不用意にオーバーコールするのは危険です。なぜなら,レスポンダは 7 pts くらい持っていると,あなたの
オーバーコールにダブルを掛けるからです。
したがって,ダブルを掛けられてもあまり大きくダウンしないように,
しっかりしたスートを持っていることが必要です。
―― 7 HCP でオーバーコールすることもあるし,14 HCP でオーバーコールしないこともあります。
HCP の多さよりも,トリックを取れるスートを持っていることが大切です。
絵札 (および中位のカード) が 特定のスートに集中していて,シングルトンやダブルトンには屑札だけが
あるような形です。
この条件は,2 の代のオーバーコール一般に当てはまる条件ですが,1NT にオーバーコールするときには
特に重要です。なぜなら オープナーが強い手を持っているところへ 2 の代で割り込むからです。
| ||||||||||
|
[2] | 6 |
A Q 10 9 8 6 3 | |
J 6 | |
A 7 5 | |
( 11 HCP ) |
[3] | K Q 10 9 4 |
A J 9 8 3 | |
6 4 | |
7 | |
( 10 HCP ) |
―― はい。あります
さきほどのハート 7 枚の手 [2] は Ace が 2 枚あって,相手側が 3NT をビッドしてもダウンする
可能性が高いので,2 で止まります。
| ||||||||||
|
―― いいえ。その点は普通と違います。
パートナーの 1NT オープンにどう答えたかを思い出して下さい。
オークションが
North | East | South | あなた |
1NT | パス | パス | ? |
North | East | South | West |
1NT | X |
―― 標準のビッドでは,このダブルは ペナルティー・ダブルです。
―― 1 の代のペナルティーですから,とにかく良い手です。
これには,2 種類があります。
(A) 14+ HCP の強さで,確実に 7 トリックを取れる手.
(B) 17+ HCP のバランス・ハンド.
15〜17 HCP のオープナーに ペナルティー・ダブルを掛けるのですから,バランス・ハンドだったら,それ以上の強さが必要です。
6 |
K Q J 10 8 6 |
A 3 2 |
A 7 5 |
( 14 HCP ) |
―― はい。1 の代のコントラクトは,7 トリック取ればメイクします。
ディクレアラーは,A で 1 トリックと
何か 2 つのスートだけで 6 トリック取ってメイクすることも 十分ありうるので,
こういう手でないとペナルティーのダブルは掛けられません。
―― はい。ダブルの意味がテイクアウトではなくて,ペナルティーなので。
―― オークションが
North | East | South | West |
1NT | X | パス | ? |
というわけで,あなたの手がバランス・ハンドならば,どちらにしてもパスします。
かなりのアンバランス・ハンドの場合には,自分の長いスートをビッドすると,パートナーが (B) であれば,良いビッドになります。場合によっては,ゲームがあるかも知れません。
しかし,(A) だったら,せっかくのダブルを壊してしまいます。
North | East | South | West |
1NT | パス | パス | X |
―― (A) 型のダブルは,B 位置では不利です。 ペナルティー・ダブルを掛ける条件は,むしろ厳しくなります。 この場合,前借りしてダブルはできません。 先ほどの「 1NT へのオーバーコール」と 話は同じです。
(B) 型では,2 通りの考えがあるようです。
(1) 14+ HCP のバランス・ハンドでダブル (バランシング・ダブル)。
(2) 17+ HCP でダブル という条件を変えるべきでない。
この問題をもう少し考えるために,実例を一つ見てみましょう。
| ||||||
| ||||||
|
―― そして,その左に坐っている East が,この手を持っていたのです。
―― いいえ。交流ラウンジの教室で実際にあったのです。これが …。
ここで何をビッドしますか ?
―― どちらが得かというと …。
North | あなた | Soutn | West |
1NT | X |
―― はい。それで,さっきの注意を繰り返しておくと,ここで,あなたのパートナー (West) は このダブルを 絶対にパスします。このダブルをテイクアウト・ダブルと思い違いして 何かビッドすると,大変な損をします。
North | East | South | あなた |
1NT | パス | パス | ? |
―― この場合にも,3 と ダブル の 2 通りが考えられる。
さっきの場合との違いは何でしょうか ?
―― ダブルを掛けても, の打ち出しは期待できないでしょう。
打ち出しスートは,おそらく か です。もしも なら,それをあなたの A で取って を打って …
A がいつか取れることを期待する。
―― でも,その前に, と で合計 6 トリック取られてしまうかも知れない。 右オポはパスしているけれど,1NT に対しては 7 HCP までパスしますからね。
North | East | South | あなた |
1NT | パス | パス | 3 |
―― はい。
―― はい,その通りです。
ノートランプ・コントラクトで ストッパが Ace 1 枚のとき,オープニング・リードから数えて何回 Ace を ホールド・アップ (温存) するかを判断する際に使う規則です。その説明は別にあるので,ここでは省略して,本題に入りましょう。
実は,ルール・オブ・セブンには,もう一つあります。
こちらの方は,プリエンプト・オープンに対抗するときに使います。
―― そうですね。そういうときの判断については,ブリッジの本に ほとんど書かれていません。
―― まず,状況を はっきりさせておきましょう。
このような場合,オープナーは高々 10 HCP を持っています (もしも
11+ HCP ならば,1 の代でオープンできます)。
そして,ルールオブ 2 & 3 によって 3 ダウン (または 2 ダウン) を覚悟の上でオープンしています。
―― 実際には いろんな場合がありえますが,ここでは,一応,オープナーが Weak 2 の上限 (10 HCP) を持っていると仮定しましょう。そして,あなたが普通にオープンできるくらいの 14 HCP を持っていると仮定します。このとき,残りの
40 − ( 10 + 14 ) = 16 HCP
があとの二人に均等に分かれていると仮定すると,あなたのパートナーに 8 HCP を期待できます。
―― それでも いいんでしょうが,普通は,ルール・オブ・セブン (the Rule of Seven) と呼んでいます。つまり,
「7 HCP くらいは パートナーに期待していいですよ」
という規則です。
―― パートナーには,2 トリック強を期待できます。
―― それは,いろいろありえます。「どういう 7 点 かは知らないけれど,とにかく 7 点 くらいは期待できる」というのが,この規則の言っていることです。
言いかえると,
―― はい。2 度目の前借りです。
この前借りも,紛れもないバランシングです。
このように,似たもの同士を共通の日常語で括ると,ブリッジのビッドが分かりやすくなります。
―― はい。交流ラウンジでの実例をいくつか見てみましょう。
| ||||||||||
|
―― N からの打ち出しが だとすると,W の K は勝てるでしょう。
つまり,この手の 15 HCP (16 pts) は,フルにその性能を発揮していて,無駄が全くありません。
ここでパートナーから 7 点を借りれば 合計 23 pts なので,3 は
メイクするでしょう。したがって,ここでは 3 オーバーコールします。
| ||||||||||
|
―― はい。その通りです。
| ||||||||||
|
―― はい。パスが正解です。
一般に,プリエンプトで始まるようなボードでは,切り札以外の Q, J には トリックを取る能力がありません。
3 に対して 3 オーバーコールしたくなる
気持ちは分かりますが,相手はダウン覚悟の決死のプリエンプト,それに対してこちらも同じくダウン覚悟で決死のプリエンプト … と
いうのは割りが合いません。
こちらは,メイクできるコントラクトをビッドするのでなければ,意味が無い。
ここのところをよく理解して下さい。
| |||||||||
|
―― N は,3 をビッドしたあなたの手が [3] のようなボロだとは夢にも思いません。
右のような良い手を想像します。
そして,ルール・オブ・セブンの精神に沿って ビッドを考えます。
すなわち,貸した点数 7 以下ならパス,10 点あれば 4 に
上げます。簡単ですね。
実際には,N がそういう手を持っていたので,4 をビッドして 2 ダウンしました。
| ||||||||||
|
―― 具体的に考えます。
この場合,もしも S が テイクアウト・ダブルを掛けると,N は 3 の代でビッドします。
ですから,あなたの手の強さに 7 点を加えたときに,3 の代がメイクできる強さ (23 pts) が必要です。
したがって,ぎりぎりオープンできるくらいの強さでは不十分であり,それより少し強い手が必要です。
この手は ダミー点を加えて 16 pts あるので 16 + 7 = 23 pts,これは 3 の代のコントラクトにちょうど必要な強さです。
したがって,ダブルします。
・ バランシングとは | … 81‐86. |
・ King 1 枚 (3 点) の理由 | … 84‐85. |
・ バランシング・コールへの応答 | … 87. |
・ ダブルへの応答 | … 87‐90. |
・ オーバーコールへの応答 | … 91‐94. |
・ 安全なバランシング | … 94‐95. |
・ バランシングと確率 | … 96. |
|
|
―― 同感です。
米語では Balancing (釣り合いを保つこと),英語では Protection (保護すること) と呼びます。しかし,
米語/英語を話す人にとっても,分かりにくい術語でしょう。
―― これには,テイクアウト・ダブルの条件が 深く関わっています。
大切なことなので,ここで復習しましょう。
A 8 4 |
Q 10 7 2 |
K J 7 2 |
A 3 |
( 14 HCP ) |
―― そういう経験があるのなら,それを忘れないことが大切です。
B 位置でビッドするとき,もしかして, East の「パス」が「涙のパス」かも知れないと …。
―― 分かりやすい言い方をすると,
―― はい。B 位置の人がこのように基準を下げて介入すると (知れば),
D 位置の人は,
安心して「涙を呑む」ことができます。
A 9 8 4 |
Q 10 2 |
10 2 |
K 8 5 3 |
( 9 HCP ) |
―― この手の場合,D 位置では 9 HCP + 1 DP = 10 pts なのでパスします。 しかし,B 位置では テイクアウト・ダブルします。
|
|
―― 良いスートがあれば,オーバーコールは容易です。
|
|
|
|
―― 原則は,その通りです。
でも,バランシングへの応答は そんなに単純ではありません。
相手側のビッド状況にも依るからです。
これについては,節を改めて説明します。
K 8 5 |
A 10 9 2 |
K 10 |
Q J 8 5 |
( 13 HCP ) |
|
|
―― スートのオープンならば,いつでも前借りが許されます。
しかし,別に説明したように,1NT オープンに対して B 位置でビッドするには,注意が必要です。
誤解の無いように,ビッド経過を書いておきましょう。
|
|
―― バランシングを初めて使う人は,「本に そう書いてあるから」というのが良いと思います。
3 点の理由をブリッジの本で読んだ記憶はありませんが,でも,それは単純です。「涙のハンド」に戻って考えましょう。D 位置の人は,
どれくらいの手で涙を呑んだか …。
―― その人も,オープニング・ビッドが 1 だったら,同じくパスです。
4-4-4-1 型の強い手は,ビッドがむずかしい …。
それはさておき,D 位置では 15〜18 HCP バランス・ハンドでストッパ有りなら 1NT オーバーコールするので, 15 HCP あたりが,D 位置で涙を呑む上限です。
したがって,B 位置の人は,10 pts あれば何かビッドします。さもないと,
ゲームを逃がすかも知れない。
そこで,テイクアウト・ダブルの基準を 13 pts ⇒ 10 pts に下げます。
この差 3 点が King 1 枚に相当します。
オーバーコールの基準も 同じように下げます。
[B] | North | East | South | West |
1 | パス | パス | 2 |
―― このジャンプ 2 は,プリエンプトではありません。
(プリエンプトというのは,ダウン覚悟のビッドです。もしもそんなに弱い手だったら,相手にゲームは無いのだから,B 位置ではパスすればいい。)
これは,6 枚のスートで 14+ HCP を持つような場合です。
例を 2つ 挙げておきます。
|
|
―― 上の 2 つの例は,バランシングの場合,「強い手のダブル」をするには強すぎます。
言い換えると,上の手で バランシング・ダブルしては いけません。
「強い手のダブル」も,King 1 枚くらい条件を下げます。
A Q J 8 2 | |
K 10 3 | |
A 6 | |
Q 7 2 | ( 16 HCP ) |
|
|
West | North | East | South |
1 | パス | パス | 2NT |
―― このあたりになると,私も詳しくありません。
自分自身の心覚えを兼ねて,上のリファレンスから まとめてみましょう。
最初に,分かりやすいノートランプ応答から。
6〜10 HCP | ⇒ | 1NT |
11〜12 HCP | ⇒ | 2NT |
13+ HCP | ⇒ | キュービッド |
次に,バランシング・ダブル (B 位置のダブル) に対しては,この基準値を,下の表にように 3 点ほど上げます。
9 〜13 HCP | ⇒ | 1NT |
13 〜14 HCP | ⇒ | 2NT |
―― 2NT というのが,一番はっきりしています。
たとえば,オークションがこのように進んで,
K J 7 | |
A Q 5 | |
K 9 2 | |
J 8 5 3 | ( 14 HCP ) |
[B] | North | East | South | West |
1 | パス | パス | X | |
パス | 2NT |
―― はい。
この範囲は,D 位置のダブルに答える場合も 6〜10 HCP という広さでした。
ここでの 1NT は,
Q 10 7 |
8 6 3 |
J 7 5 2 |
K Q 5 |
( 8 HCP ) |
|
|
―― これについても,D 位置でのダブルに スートで答える復習から始めましょう。
―― (2) について,ローレンスさんの本を調べてみました。
はっきりした点数基準は 書かれていません。
ただ,重要なのは,右オポ (オープナー) が ビッドした場合には,なるべく積極的にパートナーをサポートする ということです。
この考え方は,D 位置のダブルの場合と全く同じです。
手の例を見ると,この方針に沿って 6 pts 程度からビッドしています。
たとえば,こんな例が載っています。
K J 8 7 5 | |
Q 2 | |
10 6 5 | |
J 6 4 | ( 7 HCP ) |
[B] | North | East | South | West |
1 | パス | パス | X | |
2 | 2 |
―― そこも,分かりませんでした。
King 1 枚を文字通り貸したことにして,機械的に考えると,0 〜12 pts という広い範囲で
ジャンプしないことになる … それは,なんだかヘンです。
そこで ローレンスさんにお伺いしました。
そこには,11〜13 pts および 良い 10 pts の手でジャンプする と書かれています。
つまり,D 位置のダブルに対してジャンプする場合とほとんど同じ基準です。
たとえば,上の手で,もしもオープナー (North) が 2 巡目にパスすれば, East は 1 をビッドします。けれども,次の手の場合にはジャンプします。
K J 8 7 5 | |
Q 2 | |
10 6 5 | |
A J 4 | ( 11 HCP ) |
[B] | North | East | South | West |
1 | パス | パス | X | |
パス | 2 |
―― はい。そうなっています。
したがって,キュービッドは,D 位置のダブルに対する場合とは異なり,ゲームを保証するわけではありません。
―― こちらの方は,ローレンスさんの本を読んでも,考え方が 分かりません。
―― はい。全体の方針がはっきり書かれていないので,例から読み取ると,このようになりました。
全体の方針を書きにくいのは,バランシング・コールの性質のためです。
たとえば,オープニング・ビッドが 1 か,1 かによって,状況は全く変わります。そのうえ,オープナーが再度ビッドすれば,状況は複雑化します。
―― では,私なりに整理してみましょう。
はじめに,右オポ (オープナー) がパスした場合から。
最初に重要なのは,バランシング・オーバーコールに対しては,
―― ダブル と オーバーコール の性質の違いです。
前者は フォーシングであり,後者は ノン・フォーシングです。
(A) ダブルの場合,フォーシングなので, (オープナーがパスすれば) アドバンサは,何かビッドします。
しかし,ビッドの余地は十分あるので,1 の代で何かビッドできます。
(B) オーバーコールの場合には,ビッドの余地は少ない。したがって,選べるビッドが限られます。
とはいえ,ノン・フォーシングなので,弱い手ならば パスも許されます。無理して 代を上げて答える必要はありません。
実際,多くの場合,パスで十分です。オープナーがパスしている状況で,パス以外のビッドをアドバンサが考えるのは,
(B1) 何かゲームがあるかも知れない.
(B2) コントラクトをちょっと改善したい (NT を含む).
この 2 つの場合です。
スートでのバランシング・オーバーコールは,ダブルと違って,上限が 14 pts くらいです。
したがって,(B1) の判断は容易です。
―― 3 枚 あるいは 4 枚の切り札のサポートがある場合
(1) 7 pts 以下では (切り札のサポートがあっても) パスします
(例↓)。
(2) 8 〜12 pts では,1 つ上げます。
(3) 13+ pts では,キュービッドします。
| ||||||
⇒
|
―― それを,3 点上げて使います。⇒
バランシング・オーバーコールは,かなりひどい手のことがあるので,1NT をビッドするには,これくらい必要です。
―― その場合には,初回にパスではなく,1NT オーバーコールできます。
―― はい。2NT には 23 pts 必要ですから (Rule of 23)。
ただし,バランシング・オーバーコールが 2 の代でしたら,10 HCP くらいを期待できるので,13〜14 HCP では 2NT をビッドします。
―― 「自分のスートの方が切り札として良さそう」と思う場合に,新しいスートをビッドします。 これは,D 位置でのオーバーコールに対する場合と同じで,ノン・フォーシングです。でも,そういうことは,滅多に無いでしょう。
K J 7 |
10 6 5 |
9 2 |
K 10 8 4 2 |
( 7 HCP ) |
|
|
―― ごちゃごちゃは 無理ありません。ここでは,フリー・ビッドの意味が 普通とは違うからです。
―― それは,復習ですね。
どこかにあったと思うけど,自分からビッドできるスートが 1 つの場合,
ダブルせずに オーバーコールする手の上限は 17 HCP でした。
ですから,1 が D 位置の場合には,上の手を持っている West は,パスせずに 2 に上げます。
このビッド 2 は,競り合うためではなく,ゲームを逃がさないためです。
一方,1 が B 位置の場合には,East がここでパスしても,ゲームを逃す惧れはありません。
バランシングした West の手の上限が低いからです。
|
|
[B1] | North | East | South | West |
1 | パス | パス | ? |
―― はい。その通りです。これまでは,そのように想定してきました。
[B2] | North | East | South | West |
1 | パス | 2 | パス | |
パス | ? |
―― はい。この位置での リオープンも,バランシングです。
このビッド経過では,相手側が 13 + 6 = 19 pts 程度を持っています。ですから,味方も同じくらいを持っています。
味方がメジャースートを 2 の代で勝ち取る可能性が十分あります。
この [B2] の状況で リオープンするのは,安全です。
―― はい。基本的には同じです。[B2] でのバランシングは,確率の観点からも推奨されます。
ただし,1‐2 に介入する場合には,用心が必要です。
2 にダブルすると,最低でも,パートナーは 3 の代でのビッドを余儀なくされますから。
|
|
―― [B3] は [B2] と同程度に安全ですが, [B4] では,下に説明するように, 「安全性」が下がります。 残る 2 スート () がどちらも 4 枚で,それなりの強さが必要です。
・ マイケルス・キュービッド (Michaels) | … 97‐100. |
・ マイケルス・キュービッドに対抗する | … 101. |
・ アンユージュアル・ノートランプ (UNT) | … 102‐105. |
・ アンユージュアル・ノートランプに対抗する | … 105‐106. |
―― 基本の形は,右オポが 1 または 1 オープンした場合です。
このとき,直ちに 2 または 2 と
オーバーコールするキュービッドを マイケルス・キュービッド (Michaels Cuebid) と言います。"マイケルス" とは,
Mike Michaels という人の姓です。(ブリッジの本で有名な Michael Lawrence とは別人です)。
|
|
[1] | A 10 7 4 3 |
A J 5 3 2 | |
6 | |
5 2 | |
( 9 HCP ) |
―― 強さについては 2 通りの流儀があり,現在は (2) が主流です。
(1) 点数に制限を付けずに,一律にマイケルス・キュービッドを使う.
(2) 点数の範囲により 区別してビッドする.
―― ミニマキシ (Mini-Maxi) と呼ばれる方法です。
つぎの 3 つ に分類します。
(A) 8 〜12 pts では,軽い気持ちで マイケルスを使う,
(B) 13 〜15 pts では,初回に 1 を,次回に 2 をビッドする.
(C) 16+ pts では,マイケルスを使う.
というものです。ただし,(A) と (B) の境界線は,人により若干の違いがあります。
―― はい。それが,私の頭の中にある整理箱です。
| ||||||||||
|
―― その場合,あなたはパスします。
パートナーがパスしている状況で,(B) の場合,自分から 3 の代に上がることはできません。
| ||||||||||
|
―― この場合,パートナーは せいぜい 5 pts くらいしか持っていないので, と の 良い方を選びます。 が良ければ 3 をパス, が良ければ 3 を返します。
RHO | あなた | LHO | Pard |
1 | 2 | パス | ? |
・ 多くの場合 弱い手なので,レスポンダ (LHO) が
パスすれば, の長い方で 2 または 2 により ケリがつきます。
ただし,
・ 切り札が 4 枚あれば,レスポンダ (LHO) が何かビッドした場合でも, 3 または 3 をビッドして競り合います。
RHO | あなた | LHO | Pard |
1 | 2 | パス | 3 |
RHO | あなた | LHO | Pard |
1 | 2 | パス | 3 |
パス | 3 | パス | パス/3 |
―― はい,あります。それについては,すぐ下で説明します。
ただし,マイケルスを初めて使う人は,上の基本の形で使い慣れるようにして下さい。
―― 4 通り全部をここに書いておきましょう。
RHO | You | LHO | Pard | ||
(1) | 1 | 2 ! | の両方に 5+ 枚を保証 |
RHO | You | LHO | Pard | ||
(2) | 1 | 2 ! | の両方に 5+ 枚を保証 |
RHO | You | LHO | Pard | ||
(3) | 1 | 2 ! | と どちらかのマイナースートに 5+ 枚を保証 |
RHO | You | LHO | Pard | ||
(4) | 1 | 2 ! | と どちらかのマイナースート に 5+ 枚を保証 |
RHO | あなた | LHO | Pard |
1 | 2 | パス | 2NT |
―― オープンされたスートをサポートできる場合には,点数不足でも,サポートを示して競り合います。
|
|
―― マイナースートで リミット・レイズ以上の手を持っていれば
|
|
(注) ここでは マイケルスが 2 スート , を同時にビッドしています。
そこで,下位の (上位の) マイナースートに 下位の (上位の) メジャースートを対応させます。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | 2 | X |
―― このダブルは,とくに適当なビッドが無い 10+ pts を示します。
自分たちの方が強いことをパートナーに伝えて,介入を撃退します。
ちょうど,テイクアウト・ダブルに リダブルするような感じです。
―― 基本の形は,右オポが 1 または 1 オープンした場合です。
このとき,大胆にも 2NT オーバーコールするビッドを
アンユージュアル NT (Unusual NoTrump, UNT)
と言います。
たとえば,こんな手
|
|
RHO | あなた | LHO | Pard |
1 | 2NT |
―― 上の場合, と に どちらも 5+ 枚が 絶対に 必要です。
強さ (ポイントカウント) については,実に,
いろいろの意見があり, 0 HCP (零点) でもよい,という人もいます。
パートナーとの取り決め次第と言うしかありません。
北ブリッジ倶楽部のホームページの初級室 (コンベンション(A)) に,
ひとつの判断基準が例とともに載っています。ちなみに,北ブリッジ倶楽部のホームページはとても充実した内容で,
ブリッジ・プレイヤーにとって必見です。
ただ,こういうものまで全部暗記してブリッジをするのは面倒です。
一応の基準として,8+ HCP ということだけで いいんじゃないでしょうか。
―― そう,なぜか 多くのブリッジの本が そう勧めています。
そのやり方は,Mini-Maxi と呼ばれています。
ところが,その基準は 人によって 実にさまざまです。
ご参考までに,4 冊の本から抜き出して 表にします。
[A] (2NT) | [B] ( 2 回オーバーコール) | [C] (2NT) | |
A | 9 pts 以下 | 10〜15 pts | 16+ pts |
B | 8 〜12 HCP | 13〜15 HCP | 16+ HCP |
C | 12 HCP 以下 | 13〜16 HCP | 17+ HCP |
D | 8+ HCP,区別せずに 2NT |
―― Mini-Maxi が絶対に良いという人もいれば,D が良いという人もいて,さまざまです。
いろいろ試してみて,自分で決めるほかはありません。
ただ,私は D が良いと思います。その理由 は単純です。
UNT は,「自分でコントラクトを買いたい」と
いうよりは,妨害 (プリエンプト) を狙うビッドです。このビッドの本質がそこにあるので,オーバーコールより 2NT の方が ずっと効き目があります。
[2] | 7 |
J 5 | |
A K 7 5 2 | |
K Q 6 4 3 | |
( 13 HCP ) |
ただし,どういう基準を使うにしても,5-5 の 2 スート以外の Q や J には ほとんど値打ちが無いことに注意して下さい。 特に,弱い手で 2NT をビッドする場合には 絵札が 2 スートに集中していることが必要です。
―― アドバンサは,オーバーコーラーが 長さ 5 枚の 2 スートを持っていることを知ります
が,その強さは分かりません。D の場合,(テイクアウト・ダブルのときと同様に)
オーバーコーラーがオープンできる手を持っていると仮定して,
目一杯の高さで ビッドします。
具体的に言うと,3+ 枚の切り札のサポートがある場合:
・ 自分もオープンできるくらいの手ならば,4 の代にジャンプしてビッド。
・ それより もっと良い手ならば,キュービッド (上の例では 3)。
場合によっては,3NT もありえます。
・ それ以外の場合は,長い方のスートを 3 の代でビッドします。
―― はい。
もともと UNT は そんなことを気にしないビッドです。
3 2 |
2 |
6 5 4 3 2 |
6 5 4 3 2 |
( 0 HCP ) |
―― はい。
1‐2NT の場合には, と にどちらも 5 枚を保証します。
1‐2NT の場合には, と にどちらも 5 枚を保証します。
ここで,2NT は,ビッドされていない下位 2 スート (Unbid Two Lower Suits) を示します。
RHO | あなた | LHO | Pard |
パス | 1 | パス | |
1 | 1NT |
―― 外形的な違いはありません。ですから,ブリッジの本では,並列して説明されています。
しかし,私の感覚では,この 2 つには,はっきりした違いがあります。
UNT は,2NT をビッドするので,パートナーからの返事が 必ず 3 の代になります。このため,破壊性の強い
ビッドです。自分たちがコントラクトを買うというよりは,相手側を邪魔する性格が強い。マイナースートのため,
競り合いにも弱い。
これに対して,マイケルスでは,メジャースートでの返事が 2 の代で返ってきます。競り合いになった場合にも,
メジャースートは強い。
したがって,マイケルスの場合には,「自分たちがコントラクトを買う」可能性が
UNT のときよりも ずっと高い。
この違いを念頭においてビッドを考える必要があります。
―― UNT というのは,ほとんど妨害が目的のビッドであり,
これを使うと,ビッドの代が吊り上がります。
オープン側にメジャースートでゲームがありそうな場合にそれを邪魔し,あわよくば,自分たちがマイナースートでコントラクトを取ろうという作戦です。
したがって,レスポンダも,これに対抗して積極的にビッドします。
たとえば,オークションが
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | 2NT | ? |
[1] | 10 4 2 |
A Q 10 | |
8 3 | |
Q 9 8 7 4 | |
( 8 HCP ) |
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | 2NT | 3 |
[2] | A K 7 |
8 6 4 2 | |
10 7 5 3 | |
K 9 | |
( 10 HCP ) |
―― ハートのサポート 4 枚と 10 HCP が あります。
もしも 2NT
オーバーコールが無ければ,リミット・レイズ 3 により オープナーを 4 に誘うところです。
でも,3 をビッドすると,上の背伸びビッドと区別がつきません。
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | 2NT | 3 |
ビッド | 1‐2NT の場合 | 1‐2NT の場合 |
3 | 良い を示し, ノン・フォーシング. | にフィットあり, リミット・レイズ未満の強さ. |
3 | にフィットあり, リミット・レイズ未満の強さ. | 良い を示し, ノン・フォーシング. |
3 | 良い を示し, ゲーム・フォーシング. | で リミット・レイズ以上. |
3 | で リミット・レイズ以上。 | 良い を示し, ゲーム・フォーシング。 |
Pard | RHO | あなた | LHO |
1 | 2NT | 3 |