巻物読んで読んで読み倒す巻物巻物巻物表紙に戻る

そこを穿つ!

◆ サウンドのイントロダクション

 話題を単にカードワースにおける効果音の使い方という点に限れば、わざわざここで書くようなことはない。きちんとヘルプを読めば、すべて理解できるだろう。今回重点的に取り上げるのは、オーディオ CODEC を使ったサウンドの圧縮についてだ。一般的な作りのシナリオなら、全く必要無い知識だが、様々なサウンドで飾り立てた、きらびやかなシナリオを配布する前にこのページを読んでおくと、相当なダウンサイジングが可能になるので、そっち方面の方は注目されたし。

◆ 効果音コンテントについて

  • 「デフォルト」と「オリジナル」はいろいろ違う 
  • 「音声無し」では音声を消せない 
  • 背景で流す用途には向かない 

▼ デフォルトとオリジナル

サウンド種別の選択
[デフォルト、オリジナル]

 まずは、カードワースの効果音設定における、一番基本的な事項から確認しておく。
 効果音は、「デフォルト」と「オリジナル」、そして「効果音無し」と2+1のグループに分かれている。特に悩むところはないだろうが、それぞれの意味と特徴を簡単にまとめてみたので、知識の再確認をするつもりで、さらっと目を通しておこう。

デフォルト
カードワースのシステムが持つ効果音
音声ファイルを作成シナリオのフォルダに入れても無駄
持ち出し可能なカード使用時イベントに使える
オリジナル
シナリオ固有の効果音
音声ファイルを作成シナリオのフォルダに入れる必要がある
持ち出し可能なカード使用時イベントに使えない
効果音無し
何もしない
効果音ファイルが消失した場合などに、自動的に置き換えられる

 カード使用時イベントとの絡みは、札イベントのページを参考にしてほしい。持ち出し可能なカードの使用時イベントには、シナリオに依存してしまうコンテントは使えない。よって、デフォルト効果音はOKで、オリジナル効果音はNG(単に鳴らないだけだが)。ただし、カードを持ち出した先に、同名の効果音ファイルがあればちゃんと鳴る。このことを覚えておくと、連作シナリオを作る際に役立つかもしれない。


▼ 「音声無し」と「システム・初期化.wav」

 デフォルトの効果音リストの中に、「システム・初期化.wav」という名の音がある。再生してもらえば分かるが、「システム・初期化.wav」は何の音もしない。それならば、「効果音無し」と同じではないか……というのは早合点。
 「システム・初期化.wav」の正体は、現在鳴っている効果音を止める音だ。字面を見ると「効果音無し」の方が、それっぽい感じがするが、「効果音無し」は効果音の指定が無い状態であって、既に鳴っている音に対しては何も行わない。空のメッセージと同じで、エンジンはその存在を無視する。


▼ 確実に音を聞かせるには

 カードワースの効果音は、メッセージやメニューカードをクリックされただけで消えてしまうはかない存在だ。だから、確実に音を聞かせるには、適切な空白時間をセットで置かなければならない。
 この「適切な」と部分がけっこう曲者だ。空白時間の間は、プレイヤーは基本的に何もできなくなる。あるシナリオでは、音楽を聴かせるために長い長い空白時間が置かれていた。作者にとっては見せ所なのだろうが、プレイヤーによってはそれを何かの罰ゲームと感じるかもしれない。筆者の場合だと、10秒ほど何もできない時間が続けば、まず間違いなくF9(強制避難)する。空白時間が3秒程度でも、随所で連発されたらどうも耐えられそうにない。
 以上、シナリオ・プレイヤー共に、多少極端な例ではあるが、プレイヤーの働きかけがあって初めて成立するのがゲームというもの。秒単位の空白時間を置くなら、それなりの覚悟と工夫(演出)が必要だろう。

 プレイヤーの操作を阻害せず、バックグラウンドで効果音を流す方法として、MIDI を使うという手がある。ご存じの方は多いだろうが、MIDI の音色にはピアノやギターといった楽器音の他にも、喝采や波、銃声などの効果音がある。これらを鳴らすだけの曲や、効果音の上に旋律が被さっているような曲を作って、BGMに指定すればとりあえず目的は果たせる。だが、この方法はそれほど頼りにできない。なぜならば……。

  • 効果音の音色が限られている
  • 使用している音源により、音が違ったり聞こえなかったりする

 特に困るのが、相手の環境次第で意図しない音が出てしまうという点だ。標準規格のGM音色を使っていれば、一応は大丈夫なはずではあるが、音色の癖はいろいろ異なるし、きちんとした音が出ない音源も希にある。
 MIDI を効果音に使うなら、うまく聞こえたら儲け物……程度の認識で臨むべきだろう。100% の結果さえ求めなければ、決して悪くない選択だ。

◆ オーディオCODEC

  • オーディオCODECを使えば、音声を圧縮できる 
  • サウンドレコーダーで形式の変換が可能 
  • CODECには様々な形式がある 
  • 変換に当たり、いくつか注意する点がある 

▼ オーディオCODECとは?

 CODEC = COder + DECoder であり、アナログ・デジタル間の信号を変換するハードやソフト、信号を圧縮・圧縮解除をする仕組み等のことを指しているが、このページでは、特に圧縮・圧縮解除する仕組みのことを指すものとする。

 圧縮といえば聞こえは良いが、実際はデータを劣化させた分だけ量を減らす仕組みがほとんどだ(Monkey's Audio のような例外もあるが)。もちろん、単に劣化させるのではなく、少しでも聞こえが良くなるようあれこれ工夫されている。皆さんご存じの MP3 がその良い例だ。

 では、実際にオーディオCODECというものの存在を確認してみよう。手順は以下の通りだ。Windows98 や Windows2000 など、OS毎に細かな手順は違ってくるので、適当に推理して補ってほしい。

  1. 「コントロールパネル」を開く
  2. 「マルチメディア」や「サウンドとマルチメディア」等を開く
  3. 「詳細設定」や「デバイス」等のタブをクリック
  4. 「オーディオ圧縮Codecs」等の項目を開く
オーディオCODEC一覧
[Windows2000 CODECs]

 図のような感じの画面が出てくるはず。これがOSにインストールされているオーディオCODECの一覧だ。
 詳しいことは省略するが(よく知らないもんで……)、MCI があーだこーだ(詳しくないもんで……)というわけで、CardWirth は、この一覧にあるオーディオCODECを使って圧縮された Wave ファイルを再生できる
 図[Windows2000 CODEC]のように“〜MPEG Layer-3 Codec”があれば、MP3 形式の Wave ファイルもイケる。ただし、遊ぶ人がそれを再生できる保証は無いので注意。このことは、後でまた取り上げる。


▼ 音声の圧縮方法

 音声ファイルのファイルサイズは、音の長さ × サンプリングレート × ビット数 × チャンネル数で決まる。だから、ファイルサイズを削りたければ、これらの数値を減らせば良い。たとえば、44.1kHz 16bit Stereo のファイルを 22.05kHz 8bit Mono に変換すれば、サイズは 1/8 になる。
 Windows 付属のサウンドレコーダーを使って以上の作業をするなら、目的のファイルを開いた状態から、「ファイル」 → 「プロパティ」 → 「変換」 →「属性」欄を変更すればOK。サウンドレコーダーは、「スタートボタン」 → 「プログラム」 → 「アクセサリ」 → 「エンタテイメント」辺り(OSによって異なる)にあるぞ。

 このような容量削減方法は、ごく普通に行われている、いわば「常識」だ。例に挙げた 22.05kHz 8bit Mono くらいの品質なら、それほど酷い音にはならないだろう。歪んだノイジーな音ならば、11kHz まで落としても大丈夫だ。

 さて、上の作業をやれば気付くと思うが、「属性」欄の上に「形式」という欄があるはず。普通は、“PCM”と表示されているだろう。ここを変更すれば、様々なオーディオCODEC形式の Wave ファイルを作ることができる。
 ……といっても、別に無理して PCM 以外の形式を使う必要はない。たいていの効果音は、 22.05kHz 8bit Mono まで品質を落とせば、そこそこのファイルサイズに落ち着くものだ。それでももっと削減したい、でも音質は落としたくない、そんな時にオーディオCODECを使ってみよう。サンプリングレートを下げ辛い、高く澄んだ音のサイズを落としたい時にも有効だ。


▼ オーディオCODECのあれこれ

 一口にオーディオCODECといっても、図[Windows2000 CODEC] にある通り、いろいろな形式が存在し、OS毎、ユーザー毎に利用可能な形式も異なる。Microsoft の公式文書によると、Windows 95 / 98 / 98SE 共通のデフォルトなオーディオCODECは、以下の通り。Windows 2000 / Me / XP もこれらをデフォルトでサポートしている。Windows NT は資料がないので不明だが、たぶん大丈夫だと思う(無根拠)。

  • DSP Group TrueSpeech Software Audio Codec
  • Microsoft Adaptive Delta Pulse Code Modulation (ADPCM)
  • Microsoft Interactive Multimedia Association (IMA) ADPCM
  • Microsoft Groupe Special Mobile (GSM) 6.10
  • CCITT G.711 A-Law
  • CCITT G.711 u-Law
  • Microsoft PCM Converter

 Microsoft サポート文書 Q142745 や、Windows 2000 のヘルプを参考にし、これらの CODEC + MP3 CODEC の特徴をまとめたのが以下の表。

[表:各CODECの特徴]
 
音質 サイズ 備考
TrueSpeech × 音質最悪。
MS ADPCM 音質とサイズのバランスが良い。
IMA ADPCM 音質とサイズのバランスが良い。
GSM 6.10 バランスが良いが、ステレオ不可。
A-Law/u-Law メリットがほとんど無い。
PCM × 無圧縮。標準形式。
MP3 再生できない環境がある。

 お奨めは、サイズ重視の GSM 6.10 と 音質重視の ADPCM。基本的に GSM 6.10 を使うことにして、ノイズが気になったり、ステレオで再生したい場合に ADPCM を使うようにすると良いだろう。ADPCM は2つあるが、どちらを使っても大差ない。ちなみに Windows 2000 のヘルプには、「(IMA) ADPCM コーデックは、複数のハードウェア プラットフォーム用に設計されていて、音質の良い、高いビット レートのリアル タイム圧縮を行います。IMA ADPCM は Microsoft ADPCM に似ていますが、4 対 1 の圧縮速度が速くなっています。」とある。あまり関係なさそうな情報だが、参考まで。

 惜しいのは、MP3 だ。音質・ファイルサイズのバランスは最高なのだが、残念なことに、すべての CardWirth ユーザーが再生できるわけではない。
 最初から再生できるのは、Windows 2000 / Me / XP。Windows Me / XP なら PCM → MP3 変換も可能。他の Windows を使っている場合は、MP3 CODEC を自分でインストールしなければならない。

 MP3 CODEC が一緒にインストールされる代表的なソフトは、NetShow 2.0Windows Media Player 7。いろいろな意味で前者の方が手軽なのだが、なにぶん古いソフトなので、ネットでの入手は困難かもしれない。ASCII の Tech Win誌に毎号収録されているので、そこからインストールすると良い。再生だけでなく、PCM → MP3 変換も可能になるぞ。

 念のため付け加えておくが、拡張子“.mp3”を“.wav”を変えるだけでは再生できないぞ。必ずサウンドレコーダの類で形式の変換を行うように。


▼ 変換する際の注意

  • 音質が劣化する
  • 対応CODECが無いか、使用不可にしている環境では鳴らない
  • CardWirth の音声の扱い方が変更された時、鳴らなくなる
  • 直接編集できるアプリケーションが激減し、取り回し辛くなる

 一般に音声ファイルは、lzh や cab を使った時の圧縮率がそれほど良くないので、オーディオCODECをうまく使うと、シナリオファイルサイズをけっこう減らすことができる。ただし、上の箇条書きのような欠点があることを忘れてはならない。
 また、このページの最初にも書いたが、ほとんどのシナリオはそんなに多くの効果音を使っているわけではないので、サウンド圧縮で稼げるファイルサイズなど、たかが知れている。音質を適切に落としさえすれば PCM 形式で十分。もし、音声ファイルの総量が数100kBに及ぶようなら、オーディオCODECの適用を考えてみると良いだろう。

戻る


Copyright (C) Shu Koyama 1999-2001
No reproduction or republication without permission.

koyamas@dream.com

禁無断転載

表紙に戻る