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そこを穿つ!

◆ カードの配付と消去 イントロダクション

  • カードの配付と消去はシステムのキモ
  • 意外に機能の全容は知られていない

 「カードワース」という名前から想像できる通り、カードの配付と消去は基本的でしかも重要な要素といえる。だが、その割にはうまく活用されてこなかった要素であることも現実だ。ちょっと複雑なことをしようとすると、何ができるのか、どこまでできるのかよく分からない。マニュアルには最低限のことしか書いていないため、より深く知るためには別の情報ソースが必要になってくる。
 実は、groupASK 制作のシナリオを分析すると、それが自然に分かるようになっているのだが、なかなかそこまでする人もいないのだろう。
 さらに、CardWirth ver.1.20 になってからは、カードの配付・消去が従来より細かく行えるようになった。熟練作者にとっては嬉しい話だが、言い方を変えれば、より複雑になってしまったのだ。カードの与奪の問題に悩んでいるシナリオ作者は少なくないだろう。

 このページでは、様々な場面におけるカードの与奪について概説すると共に、実際問題として何ができるのか、例を挙げながら解説していく。教材として、拙作機巧の店・鋼腕屋(以下、「鋼腕屋」と略す)を使うので、できればダウンロードしておいてほしい。

◆ カード効果系の配付と消去

  • カード効果系とイベント系で、意味・動作が全く異なる
  • 配付しきれないカードは次ターンに持ち越される
  • 「カード消去」一回で手札全てが消去される
  • 「カード消去」では、使用直前のカードは消せない

 最初に知っておいてほしいのが、スキルやアイテムの効果としてカードの与奪を行う場合と、イベントとしてスキルやアイテムなどのカードを与えるのでは、根本的に意味が違うということだ。どう違うのかは、順に説明していくので、まずはあまり難しいことのない、効果としてのカード与奪から見ていこう。

効果-カード

 エディター上で、アイテムやスキル、召喚獣のカードをダブルクリックして、設定ダイアログを開くと、【効果】のグループの中に【カード】というグループがあるはずだ。ここで設定をするとカード使用時の効果として、他のカードを配付することができる。
 これについては、さほど難しいことはないだろう。一列に並んだアイコンをクリックして効果に加えれば、そのカードが1枚配付されることになる。複数配付するには、その数だけモーションを増やしていけばいい。
 ここで気になるのが、持ち切れない分のカードはどこに行ってしまうのかという問題だ。これは、次回以降の配付に持ち越されるというのが正解。普通カードは1枚ずつ消費していくものだから「特殊技能カードを10枚配付」というのは、基本的に「特殊技能カードを10ターンに渡って1枚ずつ配付」ということを意味している。
 効果として「カード消去」したり、プレイヤーが「カード交換」を選択した場合は、まず手札を消去してから持てる分だけカードを配付して、残りのカードを次ターン以降に持ち越すことになる。最大5枚しかカードを持てないキャラクターに「特殊技能カードを10枚配付」+「カード消去」を行うと、「まず5枚一気に配付して、残りを5ターンに渡り1枚ずつ配付」ということになる。最初の5枚配付が行われた後、プレイヤーが「カード交換」を行うと、次のターンで特殊技能カードが5枚配付され、特殊技能カードフィーバーは終了する。

 ここまでの説明で、「カード消去」を持ち出したが、意外に分かりにくい効果なのでいくつか補足しておく。
 カード効果によるカード配付は、モーション1つにつき1枚ずつ行われたが、「カード消去」は少し違い、1つのモーションで全ての手札を消去するようになっている。1枚のカードを消去するのも、5枚のカードを消去するのも、「カード消去」モーション1つで足りるのだ。と言っても別に複数あっても大した害はないはずなので、特に気にしなくていい。

「行動の中断」の一例

 もう1つ、知られているのかいないのかよく分からない事実があるので注目してほしい。ver.1.20 になって「カード消去」にちょっとした仕様変更があり、選択中のカードは消去されないようになった。これは小さいようで大きな変更。つまり、これから使おうとするカードを消去して、行動を強制的に中断させる、いわゆる「行動の中断・妨害」ができなくなったのだ。
 元々裏技みたいなものだったので、まあ仕方ないだろう。「行動の中断・妨害」効果を実現したいなら、他の裏技を使ってほしい。基本は、一度「行動不可」にしてから元に戻してやるか、カード固有効果で「中断」コンテントを使うかだ。方法はいろいろあるので、よく考えてベストのものを選択してほしい。ちなみに筆者が気に入っているのは、精神パレットのモーション「睡眠」と「正常状態」を同時に行うというものだ。具体例としては、シナリオ「鋼腕屋」のスキル「ウォーニンショット」を見てほしい。
 将来的には、「行動の中断」が正式なモーションとして追加されるかもしれないことも付け加えておく。

効果コンテント

 ここまで、カードの効果としての配付と消去を説明してきたが、これはスタンダードパレットにある「効果コンテント」を使った場合でも同じことが言える。「効果コンテント」は一応イベントの中で行うものだが、次の「イベント系配付・消去」の仲間ではなく、「カード効果系配付・消去」なので、気を付けてほしい。
 非常にややこしくて申し訳ない。

◆ イベント系の配付

  • イベント系の配付は、適用範囲を指定できる
  • 適用範囲の基本は「旧バージョン」「荷物袋」
  • 召喚獣を直接配付すると「付帯能力」になってしまう
効果コンテント

 ここで言う「イベント系配付」とは、画面上部ゲットパレットにある「アイテム取得コンテント」、「スキル取得コンテント」、「召喚獣取得コンテント」の総称だ。逆の「イベント系消去」は「ロストコンテント」にある、「アイテム消去コンテント」、「スキル消去コンテント」、「召喚獣消去コンテント」を指している。
 「イベント系配付」「イベント系消去」の用語は、このサイト独特の言葉なので、よそ様に行っても恐らく通用しない。お気を付けを。

 最初は、配付…というか取得から説明していこう。これは主に新しいスキルや、鍵、財宝などをプレイヤーに与えるために用いられるコンテント群だ。
 ver.1.15 までの CardWirth でのカード取得は極めて単純だった。全て荷物袋に投げ込まれる、それだけだ。ところが ver.1.20 になってこの辺りが変わってきた。個人を指定してスキルやアイテムを配付することや、配付枚数を指定したりすることができるようになったのだ。便利になったのか複雑化したのか、一概には言えないが、ある一点を除けば便利になったと考えていいだろう。
 その一点というのが、個人や荷物袋といった配付対象(範囲)の選択ダイアログ内にある「旧バージョン」だ。ほとんど説明らしいものがないにもかかわらず、範囲指定のデフォルトに設定されているこれの正体は、実は!…と言うほどでもなくて、単に旧バージョンでの動作と同じく荷物袋へ送るというだけだ。

範囲指定

 一番下の項目がわざわざデフォルトに指定されているところを見ると、この「旧バージョン」がカード取得範囲指定の基本と考えていいだろう。個人、あるいは全体へスキルやアイテムを配付するのは、いろいろ気を付けなければならないこともあるので、特に考えがなければ荷物袋に送るのをお奨めする。

 では、荷物袋以外にカードを配付する時には具体的に何に気を付ければいいのか? それは以下の点だ。

  • プレイヤーが持ちきれないカードは、配付されず消えてしまう
  • 配付されたスキルがすぐ使えるようになっている

 最初の持ちきれないカードは消えてしまうという点には、よくよく注意してほしい。特に配付するカードがアイテムだった場合、アイテムカードを限界まで持っているプレイヤーキャラはかなりの少数派であることが予想されるので、シナリオが抱えているバグがなかなか表面化してこないだろう。
 そういうわけで、スキル、アイテム、召喚獣などをプレイヤーキャラクターに直接渡すときは、必ず本当にカードを渡すことができたのかチェックしなければならない。もしカードを渡せていなかった場合は、他のキャラクターに渡すことを試みたり、荷物袋に入れてみたりといった次善策を採ることになる。
 この辺りの処理を面倒に感じる方は、カードの配布先に荷物袋旧バージョン(これも荷物袋に配付される)を指定するようにしよう。個人に直接渡すのは、そうでなければならない何か特別な狙いがあるときだけでいい。
 たとえば、渡したスキルをすぐに使えるようにしたい場合などがそれにあたる。荷物袋にスキルを入れた場合と違い、直接渡したスキルカードはフル充填された状態になっているからだ。難しいのは、いかにしてスキルカードの空きを作っておくかということなのだが、これは各自で考えてほしい。演出の腕の見せ所だ。

 なお、荷物袋に入れるにせよ、個人に渡すにせよ、召喚獣カードを生のまま渡すのは避けた方が良い。使用回数無限のいわゆる「付帯能力カード」になってしまうからだ。普通の召喚獣カードをプレイヤー側に渡すには「効果コンテント」の「召喚」を使えばいい。逆に付帯能力を付けたい場合は、「召喚獣取得コンテント」を使うことになる。「効果コンテント」-「召喚」では、付帯能力カードの使用回数が1になってしまうからだ。
 召喚獣については他にもいくつか知っておいてほしいことがあるのだが、それはまた別の機会にしておきたい。

個人への配付の実例

 ここで、個人に直接カードを渡す実例を見てみよう。拙作「鋼腕屋」のパッケージ[装備ガードナックル]をエディターで開いてほしい。一度アイテムとスキルを全て渡した後、1つ1つについて所持チェックを行っている。もし所持していない場合は、荷物袋に配付して、そのことを示すフラグを立てている。あとで、荷物袋に入れておいたことを知らせるためだ。
 連続してスキルやアイテムを渡すこともあまりないだろうが、「個人に配付」→「所持チェック」→「(未所持なら)荷物袋へ配付」という基本的なパターンはよく理解しておいてほしい。
 もっと根本的な問題として、なぜ個人にアイテムとスキルを直接渡しているのか疑問に思うかもしれない。これは、渡すのがその個人しか使えないアイテムとスキルであるというのが主な理由だ。それに加えて、カードを渡す前に他のカードを強制削除することがあり、スキルの空きができやすいということや、建前上はアイテムを装備していなければスキルが使えないことになっているという事情も関係している。
 誰でも使えるカードなら、荷物袋に入れておいて、プレイヤー側にカードを持たせる・持たせないを選んでもらった方がお互いに好ましいだろう。

 余談になるが、鍵のようなアイテムは荷物袋に配付し、所持しているだけで自動的に使ってもらうようにしていただけると、一プレイヤーとしてはありがたい。プレイヤーが自分で鍵を選んで使った方が面白いと判断した場合は、もちろんそちらの方法でやってほしい。

◆ イベント系の消去

  • イベント系の消去は、適用範囲を指定できる
  • 適用範囲「旧バージョン」で敵のカードも狙って消去できる
イベント系消去

 次はカードの消去について解説しよう。イベント系の消去は、不要になった鍵を消去したり、アイテムを登場人物に渡すようなときによく用いられる。要するに「ロストコンテント」にある、「アイテム消去コンテント」、「スキル消去コンテント」、「召喚獣消去コンテント」のことだ。
 それほど難しいことはないのだが、適用範囲の「旧バージョン」だけは別だ。これが使いこなせるかどうかで、特に戦闘シーンの演出の幅がまるで違ってくるので、多少凝ったシナリオを作ってみたければ、ここからの説明をきっちり読んでほしい。

 「旧バージョン」というのは、ver.1.15までの挙動のことを指している。旧バージョンでは、以下の順番でカードの検索が行われ、最初に見つかったカードを消去していた。

  1. 使用カード
  2. 選択中のプレイヤーキャラクター
  3. 荷物袋を含めたパーティ全体

 もちろんこれは、ver.1.20 の適用範囲「旧バージョン」にも、多少拡張された形(枚数指定が可能になった)で引き継がれている。
 特に注目してほしいのが敵のカードも消去できるということだ。モーションを使って手札を流したり、召喚獣を一括消去するのとは違い、狙ったカードだけを消去できるところがポイントだ。よく行われるのが(…といっても本稿執筆時点では数例しかない)特定カードの消去によるボス敵の弱体化だ。groupASK のシナリオ「賢者の選択」では、カナン王の付帯能力カードを消去して、力をそぎ落とすのに使われた。拙作「押忍!男闘虎塾」のラストバトルでも同じことをしている。また、groupASK 最初期のシナリオ「家宝の鎧」では、アイテムカードを消去して、鎧を脱ぎ捨てるという演出に使われていた(中身を覗かないとまず分からないが…)。

ハンデ設定イベント

 もう少し進んだ実例として拙作「鋼腕屋」の戦闘「Lev9」の「ハンデ設定イベント」を見てほしい。これは、冒険者のレベルに応じ、スキル・アイテム・召喚獣を消去したり残したりして、ハンデを調節するための処理だ。
 まず注目してほしいのは、スキルでもアイテムでも召喚獣でも何でも消去できるということ。特にスキルの消去はこれまでほとんど行われてこなかったが、積極的に使っていくと面白いだろう。ただし、敵が使おうとしているスキルを消去すると、そのターン、敵は行動できなくなるという性質には注意したい。この例の場合は、プレイヤーにさらなるハンデを与える効果として、うまく機能している。
 また、召喚獣(付帯能力)を元々ハンデとして設定し、これを消去すると敵が強くなるというのもけっこう使える技だろう。後から敵にカードを渡して強化するのはなかなか難しいからだ。

「穿鋼の突き」?「穿鋼の突き 」?

 次に注目してほしいのが、スキル「穿鋼の突き」の消去のやり方だ。適用範囲は「旧バージョン」、消去数は「全て削除する」になっている。鋭い人はもう気付いたと思うが、これではプレイヤーキャラクターが「穿鋼の突き」を持っていた場合、それが真っ先に消去されてしまう。だが、実際に戦闘を行うと、消去されるのは敵の「穿鋼の突き」だけ。しかも3枚のうち2枚だけを敵全体に渡って消去するという、極めて変則的なことをしている。これはいったいどうやっているのか?
 秘密は「 」、つまり空白文字だ。消去される「穿鋼の突き」は、実際は「穿鋼の突き 」という空白文字を含んだスキル名になっている。コンピューターは空白文字も文字として認識しているので、「穿鋼の突き」と「穿鋼の突き 」は違うスキルとして扱うのだ。この技を使えば、敵・味方が共に持っているスキルであっても選択消去することができる。
 …といってもこれは玄人向けの大道芸。わざわざこんな紛らわしいことをする必要はない。消去する予定のカードは、きちんと敵専用にしておくのが基本だ。
 ちなみに、現在のエンジンは、カード名解説文を見てカードの選択を行っているので、解説文の方に手を加えても同じことができる。

 以上でカードの配付と消去に関する説明は終わりだ。小難しいことを長々と述べる形になってしまったが、ここに書いた知識はかなり使えるものばかりなので、頑張って吸収してほしい。

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