三章 「満州国」アヘン専売開始
三章 「満州国」アヘン専売開始
前章の冒頭でも述べたが、アヘン専売体制設立のために3つの課題があった。第一に、「アヘンの販売ルート制限と流通経路の独占」第二に「アヘンの安定入手と供給を続ける機構の作成」第三は「消費者の把握・管理」である。「満州国」は現地でケシの生産が隆盛をきわめており、しかも内外にアヘンの需要が大きく流通網が発達しているという二点で、日本が今まで専売を行ってきた地域とは事情を異にしている。本章では、「満州国」がいかにこの三つの課題を克服していったかを検討していく。
そもそもなぜ「満州国」はアヘンの専売をしなければならなかったのだろうか。「満州国」建国の予算には多額の公債が最初から組み込まれていた。その公債はどこから手に入れるかというと、アヘンの専売の収益を担保にして公債を得ることが決まっていた。もしもその借款が得られなければ、まったく建国の計画自体が変わってしまう恐れがあったために、是が非でもアヘン専売によって収益を確保しなければならなかった。そのため湯政権のように、ケシの栽培に税金をかけるということだけでは足りず、台湾や関東庁のように完全に政府主導でアヘンの入手から販売まで掌握して、収入を増やさなければならなかった。
アヘン専売開始が難航するのに対して、「満州国」の予算は時のたつにつれて膨らんでいった。その深刻さは当時の人にもやはり認知されており、関東軍参謀長が「アヘン収入と税関収入を迅速に増やさねばならない」と陸軍次官に充てた手紙の中で発言するまでに至った。
この省は「満州国」のアヘン専売体制について述べるが、日本も数年前まではタバコと塩が専売されていた事実を頭に入れておかなければならないと思う。みなさんが専売を考えるヒントになれば幸いである。
三章 「満州国」アヘン専売開始 |
1節 国民と消費者対策 |
1 「人々を虜にするアヘン政策」 |
2節 「満州国」内のアヘン市場シェア独占へ |
1 「混沌とする『満州国』黎明期のアヘン市場」 |
2 「シェア独占を求める『満州国』の政策」 |
3節 アヘン獲得に奔走する「満州国」 |
1 「『満州国』内のアヘンの統制」 |
2 「朝陽寺事件と熱河アヘン」 |
3 「イランからアヘンを手に入れる」 |
4 「熱河作戦の真の意義」 |
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