球 対 称 星< 目次へ >
一般相対論的天体物理学では殆んどの場合、重力源は完全流体だと理想化してよい。又、多くの重要な天体はほぼ球対称な系として考える事が出来る。球対称な系は非常に単純であるが、物理的には非常に重要である。この章では球対称及びメトリックを定義し、アインシュタインテンソルを導き、アインシュタイン方程式を解いて、星の外部解及び内部解を求める。
1. 球対称な時空のメトリック
前章までは弱い重力場を取り扱ってきた。ここでは一般相対論に於ける強い重力場の例として球対称な系を考える。球対称な系だから球面座標系で考える。
デカルト座標系と球面座標系との間には次の関係がある。 r=(X2+Y2+Z2)1/2 , θ=tan-1((X2+Y2)1/2/Z) , φ=tan-1(Y/X) X=rsinθcosφ , Y=rsinθsinφ , Z=rcosθ 時間tは両方の系とも同じである。 この球面座標系での線要素は ◆ ds2=ーdt2+dr2+r2(dθ2+sin2θdφ2) ・・・・・ (1) である。これを基に強い重力場でのメトリックを求める。式(1)の導出法は付録1:球面座標系での線要素を参照 (1) 球対称の条件1
式(1)に於いて、dt=dr=0である時にθ、φが変化しても二次元球、つまりその線要素が
dl2=r2(dθ2+sin2θdφ2)=r2dΩ2 で表される二次元球面の上に対象となる時空の各点が存在しなければならない。従ってメトリックのθ成分gθθは gθθ=r2 , φ成分gφφは gφφ=r2sin2θ である。このような球では円周の長さは2πrで、面積は4πrである。 (2) 球対称の条件2
θ=一定 ,φ=一定の線は二次元球に直交しているので
r・θ=0 , r・φ=0が成り立ち、メトリックの定義により
grθ=gr'θ'=0 , grφ=gr'φ'=0 又は空間座標の変換によっても線要素の式は不変である。式で表すと (t,r,θ,φ)→(t,ーr,θ,φ) と座標変換してもメトリックは変わらないという条件により、(3) と同じ方法で grθ=gr'θ'=0 , grφ=gr'φ'=0 , gθφ=gθ'φ'=0 を導く事が出きる。 (3) 球対称の条件3
静的な時空である。静的な時空とは次の二つの性質をもった時間座標tの存在する時空の事である。
(@)メトリックの全ての成分がtに依存しない。(=時間独立)
座標変換(t,r,θ,φ)→(-t,r,θ,φ)では変換行列ΛはΛ00'=−1、Λij'=δij'だから
g0'0'=(Λ00')2g00=g00(A)時間の反転(t→−t)に対して幾何学が変化しない事。これは状況を撮影したフィルムを逆回ししても同じに見えるという意味である。 g0'i'=Λ00'Λii'g0i=ーg0i gi'i'=(Λii')2gii=gii 幾何学は不変なので g0'i'=g0i これと、上の第二式よりg0'i'=g0i=0となる。
以上により、静的で球対称的な星のメトリックは φ(r)=Λ(r)=0 → e2φ=e2Λ=1
2. アインシュタインテンソル
1.でメトリックが決定したので次の手順で、球対称星でのアインシュタインテンソルを計算する事が出来る。
@メトリックの逆行列及び微分を計算。 Aクリストッフェル記号を計算。 Bリーマン曲率を計算。 Cリッチテンソル及びリッチスカラーを計算。 Dアインシュタインテンソルを計算。 この計算の過程は、既に「曲った時空 付録3:曲率に関する情報の実例の(4)」で計算しているのでそこを参照。この結果、球対称星でのアインシュタインテンソルは次の様になる。 ◆ Gtt = (rーre-2Λ)・・・・・ (3) ◆ Grr = ーe2Λ/r2+1/r2+2φ'/r・・・・・ (4) ◆ Gθθ = r2e-2Λ(φ''+(φ')2-φ'Λ'+φ'/ rーΛ'/r)・・・・・ (5) ◆ Gφφ = sin2θGθθ・・・・・ (6)
3. アインシュタイン方程式
静的な完全流体を源とするアインシュタイン方程式を求める。
局所慣性系から一般の座標系(=非局所慣性系)への座標変換行列をΛαα' とする。(プライムの付いている方が局所慣性系) gαβ=Λαα'Λββ'ηα'β' , g00=(Λ00')2η0'0' 従って Λ00'=e-φ ( ∵ g00=-e-2φ ,η0'0'=−1 だから ) (1) ストレスーエネルギーテンソル
流体が運動してない静的な完全流体を源とする星では、流体の四元速度 のゼロでない成分はただ一つ U0 である。MCR系(=局所慣性系)ではこの成分は(1,0,0,0)である。この成分を先に求めた座標変換行列Λで一般の座標系(=非局所慣性系)へ座標変換すると、(e-φ,0,0,0)になる。完全流体の、一般座標系でのストレスーエネルギーテンソルは
Tαβ = (ρ+P)UαUβ+Pgαβ
であった。この式からT00,T11,T22 ,T33を求めると (他の成分はゼロ) T00=ρe-2φ , T11=Pe-2Λ , T22=P/r2 , T33=P/r2sin2θ アインシュタインテンソルの添字の位置が下付けなので、Tも下付けにする。 Tαβ=gαμgβνTμν μ≠ν なら Tμν=0 だから μ=ν だけを計算すればよい。Tαβ=gαμgβμTμμ α≠μ なら gαμ=0,β≠μ なら gβμ=0。従って α=β=μ だけを計算すればよい。Tαα=(gαα)2Tαα ◆ T00=(−e2φ)2ρe-2φ=ρe2φ ・・・・・ (7) ◆ T11=(e2Λ)2Pe-2Λ=Pe2Λ ・・・・・ (8) ◆ T22=(r2)2(P/r2)=Pr2 ・・・・・ (9) ◆ T33=(r2sin2θ)2(P/r2sin2θ)=Pr2sin2θ=sin2θT22 ・・・・・ (10) (2) 保存則
保存則は
Tαβ;β=Tαβ,β+ΓαμβT μβ+ΓβμβTαμ=0 である。これはフリーな添字αの各値に対しての四つの式である。α=0,2,3に対しては恒等的にゼロになる。(各項がゼロか又は項同士が打ち消し合ってゼロになる) α=1に対しては対称性から恒等的にはゼロにならない。それを計算すると ( クリストッフェル記号Γの計算は「曲った時空 付録3:曲率に関する情報の実例の(4)」を参照 ) (ρ+P)φ'+P'=0 即ち ◆ (ρ+P) = ー ・・・・・ (11) (3) アインシュタイン方程式
Λ(r)を次の様な未知の関数m(r)で定義すると計算の都合が良くなる。
◆ m(r)=r(1−e-2Λ) , (e2Λ=) ・・・・・ (12) 式(3)と式(7)と式(12)からアインシュタイン方程式の(0,0)成分が求められる。 G00=e2φ[r(1-e-2Λ)]=e2φ[2m(r)]=8πT00=8πρe2φ ∴ =4πr2ρ ・・・・・ (13) となる。これはm(r)が半径rの球の質量だとするニュートン的方程式と同じ形である。 式(4)と式(8)から(r,r)成分の方程式は Grr=-e2Λ+φ'=8πTrr=8πPe2Λ → φ'=e2Λ(+8πP) 式(12)から e2Λ= なので、 = () ∴ = ・・・・・ (14)
4. 外 部 時 空
星の外側では ρ=P=0 だから、式(13)及び式(14)は
= 0 , = 上の二つの微分方程式の解は m(r) = M = 一定 e2Λ = = = = ( ー ) 両辺を積分して 2φ=log(r−2m)−log r=log ∴ e2φ=1−=1− となる。この外部のメトリックはシュワルツシルト・メトリックと呼ばれる。 ◆ ds2=ー ( 1− )dt2+( )dr2+r2dΩ2・・・・・ (15) これが球対称星の外部時空での線要素及びメトリックである。rが十分大きい時には ds2 ー ( 1− )dt2+( 1+ )dr2+r2dΩ2 【シュワルツシルトの半径】
シュワルツシルト解(=式(15))は r=2M で発散する。この r=2M となるところをシュワルツシルト半径又は重力半径と呼ぶ。太陽のシュワルツシルト半径は約3km、地球は約0.9cmである。これ以下に重力崩壊するとブラックホールになる。
【バーコフの定理】
球対称で真空な時空は必ず静的になり、時間依存が無くなる。というのがバーコフの定理である。つまり下記の式から出発しても、真空中のアインシュタイン方程式の球対称で無限遠で平坦になる解は、シュワルツシルト解(=式(15))に限られるというものである。
ds2=g00dt2+2g0rdtdr+grrdr2+r2dΩ2
5. 星 の 内 部 構 造
星の内部ではP≠0、ρ≠0なので式(11)をP+ρで割り式(14)を使ってφを消去出来る。
◆ =ー ・・・・・ (16) これをオッペンハイマー-ヴォルコフ(O-V)方程式という。 (1)星の中心と表面での値
星の中心はm=0なので式(12)より、m(r)=0。星の中心での圧力及び密度をPc、ρcと定義する。
(2)ニュートン的な星の構造星の表面は外部時空と連続的につながらなければならないから、星の表面では P=ρ=0 である。 半径をRとすると m=R になる。 内部では grr=(1−2m(r)/r)-1 で、外部では grr=(1−2M/r)-1 である。連続性から星の質量Mは M=m(R) で定義されることが明らかである。Mが分かると、星の外部での g00 が定まり、星の表面での g00 は g00(r=R)=ー(1−2M/R) が得られる。 普通の星の場合には 2m(r) < r が常に成り立つ。
ニュートン的な場合には P 《 ρ なので、4πr3P 《 m でもある。さらにメトリックは、ほぼ平坦なので式(12)で m 《 r と出来る。これらの関係から式(16)が
◆ =ー ・・・・・ (17) と簡単化される。これがニュートン的な星の平衡状態の方程式である。相対論的な圧力勾配はニュートン的な場合に比べて急激である事が分かる。言い換えれば流体を静止させるためには一般相対論では重力がより強い力でなければならない。 白色矮星までの密度の星については、(16)の式の代わりに(17)の式を用い、中性子星のような高密度の星については式(16)を用いる。
6. 星の内部の厳密解
与えられた状態方程式に対して式(13)、(17)等を解析的に解く事はたいへん難しい。しかし、ρ=一定にしたり、Pとρの関係を現実に沿って与えてやると解く事が出来る。ここではシュワルツシルトによるものと、ブハダールによるものを調べる。
(1)シュワルツシルトの密度一定の内部解
式(13)、(17)を簡単に解く為に、ρ=一定を仮定する。するとすぐに積分出来て、
◆ m(r)=4πr3ρ/3 , r ≦ R ・・・・・ (18) となる。Rは星の半径で、未だ決まっていない。Rの外側では密度がゼロなので、m(r)は一定となる。grrの連続性からm(r)がRで連続でなくてはならない。従って ◆ m(r)=4πR3ρ/3=M , r ≧ R ・・・・・ (19) Mは星の質量で、シュワルツシルト質量という。式(18)のmを式(16)に代入して ◆ = ・・・・・ (20) 上の微分方程式は変数P、rに関しての変数分離形の形であるから、任意の中心圧力Pcを使って容易に積分出来て、 ◆ ・・・・・ (21) 星の表面の時、r=R,m(R)=4πR3ρ/3,P=0だから左辺は1になって ◆ R2=[1−(ρ+Pc)2/(ρ+3Pc)2] ・・・・・ (22) ◆ Pc=ρ[1−(1−2M/R)1/2]/[3(1−2M/R)1/2−1] ・・・・・ (23) 上の式を使って(18)のPcを置き換えると ◆ ・・・・・ (24) 式(11)からφ=−log(ρ+P)+C(Cは積分定数) 星の表面ではP=0だから、φ=−log(ρ)+C 又g00(r=R)=ー(1−2M/R)=−e2φより、積分定数Cが求まる。これらと式(11)のPより ◆ eφ=[3(1−2M/R)1/2−(1−2Mr2/R3)1/2] ・・・・・ (25) 式(12)より e2Λ = = (1−8πr2ρ/3)-1 だから、星の内部での線要素 ds2は ds2=-[3(1−2M/R)1/2−(1−2Mr2/R3)1/2]2dt2+(1−8πr2ρ/3)-1dr2+r2dΩ2 以上の求めた式を使った具体例は、 付録5:シュワルツシルトの内部解(密度一定)を参照 【ブハダールの定理】 上のPcを求める式に於いて、M/R→4/9の時、Pc→∞になる。従って半径が(9/4)Mより小さい 一様密度の星は存在しない。そのような星を静的な状態に支えるには無限大の圧力が必要になるためである。 この事は任意の星のモデルについてもいえて、ブハダールの定理として知られている。 (2)ブハダールの内部解
ブハダールの内部解はρとPについての状態方程式 ρ=12(P*P)1/2−5P (P*は任意の定数) を定義し、式(11)、(13)、(16)の解を求めるものである。Pが小さい時この式は ρ=12(P*P)1/2 となり、これはニュートン理論の恒星内部構造論でn=1のポリトロープと言われるものになっている。たいていの解と同様にブハダールの解も普通の方程式の形から導く事は難しい。この場合には別の動径座標r'が必要になる。この座標は次に示す式で、普通のrとの関係が定義される。
また次の関数が定義される。(付録4:ポリトロープ参照) , (βは任意の定数) Ar'≦πの時、ブハダールの解は次の様になる。 e2φ=(1−2β)(1−βーu)(1−β+u)-1 e2Λ=(1−2β)(1−β+u)(1−βーu)-1(1−β+βcosAr')-2 P=A2(1−2β)u2[8π(1−β+u)2]-1 ρ=2A2(1−2β)u(1−β−3u/2)[8π(1−β+u)2]-1 上の式のPとρから P/ρ=u(1−β−3u/2)-1 星の中心ではr=0で、=1 → u=βなので Pc/ρc=β(2−5β)-1 星の表面について考える。星の表面ではρ=P=u=0。つまりr'=π/A=R'なので e2φ=e2Λ=(1−2β) R=r(R')=π(1−β)(1−2β)-1A-1 星の質量Mは 1−2β=1−2M/R から M=βRなので
7. 恒 星 の 進 化
白色矮星、中性子星、ブラックホールがどのように形づくられるかを知るには星のライフサイクルを理解しておかねばならない。星は星間ガスが重力で凝集し、核融合反応が始まり高温になって輝き始める。核融合反応によってヘリウム、炭素、酸素・・・鉄等の元素が段階的に次々作られていく。星が燃え尽き、終末になると表層の物質は爆発又は流出によって星間ガスに戻っていく。星の中心部分は白色矮星、中性子星、ブラックホール等といった非常に高密度で輝きのない天体へと変わっていく。
(1)星の誕生
星は銀河内のガスから生まれる。ガスの化学組成は殆んどが水素である。ガスは互いの引力で塊りとなり回りのガスを吸い寄せて次第に大きな重い塊りとなる。それと共に自分自身の重さで徐々に収縮する。すると原子の動きが活発になり温度が高くなる。それが10万度程になると、もう原子でいる事が出来ず原子核と電子が自由勝手に動き回るプラズマ状態(気体の状態)になってしまう。さらに凝縮が進み、中心の温度が1000万度程になると4つの水素原子核が1個のヘリウム原子核になる(=核融合反応)。この反応の際に僅かの質量が減り、その減った質量がエネルギー(E=mc2)となり放出され、核融合反応で輝き始め、一人前の星が誕生する。
(2)主系列時代
主系列とは、HーR図に於いて、左上から右下の対角線にある一人前になった星の事である。
(3)赤色巨星、水平分枝時代主系列星は水素からヘリウムへの核融合の時で、重力により縮まろうとする力と核融合反応で発生する熱によって膨張しようとする気体の圧力が釣り合う安定した状態である。星はその一生の大部分の時間を主系列時代で過ごす。従って宇宙を見ると主系列星の星が圧倒的に多い。重い星は核反応が激しく一生が短く、軽い星ほど寿命が長い。 【主系列星を表面温度で分類】
中心部にヘリウムが多く溜りその近辺の水素が少なくなると、重力で収縮する力の方が強くなり再び収縮が始まり、その結果中心の温度が1億度に達するようになる。こうなると今度はヘリウムが融合してもっと重い原子核になる、「ヘリウム・フラッシュ」と呼ばれる新しい核融合反応の火がつく。これにより炭素や酸素などの原子が合成される。すると今度は膨張の圧力が勝り、星は膨張に転じ表面温度が下がり、赤い巨大な赤色巨星へと発展して行く。太陽の場合やがて来る赤色巨星時代には、その半径は火星の軌道を飲み込む程に膨張する。太陽は1億度ぐらいまで温度が上がると十分重さを支える事が出来るから、この温度で進みうる核融合で合成される炭素や酸素を作り終えると、核融合は止まりそれ以上は進まない。この段階にある時間は主系列にいた時の100分の1程度である。赤色巨星の代表的な星として「オリオン座α星ペテルギウス」、「さそり座α星アンタレス」等がある。
【元素の合成】
(4)星の終末
太陽の質量の0.46〜8倍では炭素、酸素等の元素が出来る。8〜10倍くらいではネオン、マグネシュウム等の元素が合成される。10倍以上ではケイソ、鉄等の元素が合成される。恒星の核融合で作られる元素は原子番号26の鉄までである。鉄は元素の中で最も安定しており、そこで核融合反応が止まるためである。さらに重い元素、金、銀、鉛、ウラン、トリウム等は超新星爆発や中性子星同士の衝突により合成される。
赤色巨星となった星の重力は弱くなった為、水素で出来た外層部は惑星状星雲の形で宇宙空間に放出される。
核融合反応の終った星は徐々に温度を下げ、収縮し最終的に白色矮星、中性子星、ブラックホール等になる。
・ 白色矮星
太陽の3倍以内の質量の恒星は、外層部を宇宙空間に放出し、核融合反応を終了した後、中心部分がが白色矮星となる。核融合反応により支えられていた恒星は、支えを失い、温度を下げながら収縮する。狭い空間*に押し込められた電子は不確定性原理、パウリの排他原理で高速で運動し、高い運動量になる。(詳細は8. フェルミ縮退圧を参照)白色矮星はその電子の圧力(縮退圧)で支えらるようになる。電子の運動は光速以上になれないので支えには限界がある。その限界をチャンドラセカール限界という。それは太陽質量のおよそ0.32〜1.4倍(詳細はチャンドラセカール限界を参照)である。白色矮星の質量がそれ以上になると中性子星となるか、重力崩壊を引き起こして一気に重力エネルギーを解放させ爆発する。この爆発は白色矮星が高温になり炭素の核融合反応が開始するために起こり、超新星爆発といわれる。又、白色矮星の近くに別の恒星があり、そこから水素ガスが降り積もりチャンドラセカール限界質量を超えると、中心部では核反応の暴走が起こりIa型超新星爆発を起こす。
・ 中性子星
白色矮星を構成する物質はヘリウム、炭素、酸素などである。平均密度は1立方センチメートルあたり1.4トンである。代表的な白色矮星としてシリウス伴星(シリウスB)がある。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− * 水素の原子核を直径1mのボールとし東京駅に置く。ボーアの原子模型では、電子は100キロメートル 先の沼津、日光、銚子辺りを回る事になる。原子の中はスカスカ、すき間だらけである。
核融合で鉄まで生成した恒星は鉄の光分解でII型の超新星爆発を起こす。その爆発後、中心部分が中性子星となる。中心部分は桁外れに大きい密度のため、電子が陽子にへばり付き電子と陽子が反応して中性子とニュートリノになる。白色矮星は電子の縮退圧で支えられていたが、中性子星は中性子の縮退圧で支えられる。縮退圧の仕組みは白色矮星の場合と同じである。中性子の縮退圧で支えられる質量の上限はトルーマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界と呼ばれている。これを超えると次のブラックホールになる。
・ ブラックホール
中性子星を構成する物質は文字通り中性子で、巨大な原子核が天空に浮遊している様な星である。平均密度は1立方センチメートルあたり10億トンにもなる。中性子星自身は可視光線を発しないため、パルサーとして1967年に発見された。
ブラックホールは当初、アインシュタインの式を解いて得られる特殊な解、数学的な玩具にしか過ぎないと思われていた。しかし研究が進むにつれ、ただものではないと認識されるようになった。上で述べた様に、II型の超新星爆発後、トルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界質量を超えていると自分自身の重みに耐え切れず、支えるものが無く、重力崩壊した星になる。トルーマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界質量は、太陽質量の1.5倍から2.5倍の範囲にあると考えられている。
1970年に入り最初のブラックホール候補、はくちょう座X-1が発見された。ブラックホールは非常に強い重力の為、時空が著しく歪められ、光さえも脱出出来ないので、直接観測する事が出来ない。しかし他の天体との相互作用により(X線を発する)、間接的にその存在が推定される。はくちょう座X-1からX線が観測され、そばにブラックホールがあると断定された。
8. フェルミ縮退圧
(1) 量子力学的圧力
粒子の運動量をPとする。Pの不確定さを△P、位置の不確定さを△Xとすると、ハイゼンベルクの不確定原理により
△P△X=h が成り立つ(hはプランク定数)。△Xを一辺とする微小な立方体の体積を△Vとすると、 △X=△V1/3 だから △P=h△V-1/3 が成り立つ。△Xが小さくなると、△Pが大きくなり、それにつれPも大きくなる。これが量子力学的圧力(=フェルミ縮退圧、又は単に縮退圧)の源である。核融合反応が活発であった星は、その膨張圧力で星の重力を支えていたが、核融合反応が終了した星は温度を下げながら収縮に向かう。そして重力と縮退圧が釣り合う所まで温度を下げ収縮する。 電子の運動量がPとP+dpの間にある時、運動量空間では、球の表面積は4πP2、殻の厚みはdpだから、体積は4πP2dpになる。フェルミ粒子はパウリの排他原理により、複数の電子が同一の状態(例えばエネルギーの一番低い状態)を取る事が出来ないので、又恒星が球状なので運動量空間も球状になる。 4πP2dpを0からPfまで積分した球殻をフェルミ球、最大の運動量Pf(=フェルミ球の半径)をフェルミ運動量、その時のエネルギーをフェルミエネルギーという。 電子が一辺の長さ1x10-11mの直方体の狭い空間に閉じ込められた時(原子の直径は1x10-10m)の運動量は 6.6x10-23Kg・m/sになる。電子の速度は7.25x107 m/sになる。(光の速さは3x108m/s)。フェルミ運動量は電子の運動量より少し大きい値になる。付録6:フェルミ縮退した気体の諸量の計算を参照 体積4πP2dpの領域に含まれる、体積(△P)3の状態の数は 4πP2dp/(△P)3=4πP2dp△V/h3 電子はスピン 1/2 で、各運動量状態には二つのスピン状態(”上向き”と”下向き”)がある。 従って状態の数は二倍になる。 個の状態があり、それが体積△Vの領域にあって、PとP+dpの間の運動量を持つ事の出来る電子の最大の数である。上の式を積分すると , とおくと(nは粒子数密度) ◆ , ・・・・・ (26) フェルミ運動量(=Pf)は粒子の質量ではなくて、単位体積当たりの粒子数(=粒子数密度)に依存している事が分る。 電子の質量をmとすると、1個の電子は相対論的エネルギー E=(P2+m2)1/2 をもっている。そうした気体中では全エネルギー ETOTAL は ETOTAL=NxE=V 全エネルギー密度 ρ は ◆ ρ=ETOTAL/V= ・・・・・ (27) ETOTALをVで微分すると dETOTAL/dV=V ( ) + =V +ρ 今扱っている系は閉じた系だから、圧力Pは熱力学の第一法則で△Qをゼロにして求める事が出来る。 P=dETOTAL/dV=ーV ーρ = , だから V=ーPf/3 従って P= ーρ が得られる。気体が狭い空間に押し込められると気体は相対論的になる。その結果 Pf≫m となるので、(27)と上の式は ◆ ρ , P ーρ ・・・・・ (28) 上の二つの式より、下記の式が成り立つ。 ◆ P ρ ・・・・・ (29) これらの具体例は付録6:フェルミ縮退した気体の諸量の計算を参照 (2) チャンドラセカール限界
普通の星が圧縮されると、電子が原子核からの束縛を受けなくなって、電子と原子核の2種類の気体が存在するようになる。それらの気体は同じ温度で、粒子あたりのエネルギーは同じである。白色矮星までの密度の星については、ニュートン力学による 球対称の星の重力平衡の式(17)が 釣り合いの方程式として用いられる。一方、中性子星のような、非常に高密度の星の重力平衡については、釣り合い式を 一般相対論まで拡張しなければならない。重力と電子の縮退圧が釣り合った星が理論上持ち得る上限の質量をチャンドラセカール限界質量という。白色矮星は電子の縮退圧で支えられている星である。
チャンドラセカール限界質量の大よその目安を計算する。星の質量密度をρとすると
◆ ρ=μmpne ・・・・・ (30) μ=原子核の核子数/電子数(1 or 2程度の値)、mpは陽子の質量(陽子の質量は電子の質量の1836倍だからは陽子の質量を用いる)、neは電子数密度。式(26)、(28)、(29)、(30)より次の式が成り立つ。(Pは圧力) ◆ P=kρ4/3 , k= =151.316 m2/3 ・・・・・ (31) ニュートン的な星の構造を決める式は(13)及び(17)である。それらを積分すると M=4πR3ρ/3 , P=ρM/R 上の二つの式からRを消去すると、M= 式(31)より、 P3/ρ4=k3だから ∴ M= 距離化単位で、μ=1としてMを計算すると M=1.87x103m=1.27Ms (Ms:太陽の質量=1.477x103m) この値は、重力が冷たい非相対論的な原子核気体に起因している時、相対論的な電子気体で支え得る最大質量の大体の目安を与えている。この値をチャンドラセカール限界質量と呼ぶ。この値より重い星は電子の圧力では支えきれず、白色矮星にはなり得ない。白色矮星と連星をなす伴星からのガス吸収により質量がチャンドラセカール限界をを超えると、超新星爆発を起こし超新星になるか、中性子星になると考えられている。 (3) トルーマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界
重力と中性子の縮退圧が釣り合った星が理論上持ち得る上限の質量をトルーマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界質量という。これは白色矮星におけるチャンドラセカール限界と同様である。中性子星は中性子が冷たく、縮退したフェルミガスから成るので、(1) 量子力学的圧力の議論がそのまま通用する。トルーマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界質量は、太陽質量の1.5倍から2.5倍の範囲にあると考えられている。この限界質量を超えると中性子星が重力崩壊し、直接ブラックホールになると推測される。尚、中性子星の形成過程は7. 恒 星 の 進 化 ・ 中性子星を参照
付録1:球面座標系での線要素
デカルト座標でのメトリックから球面座標でのメトリックへの変換は次の式に従う。
gα'β'=Λαα'Λββ'ηαβ Λαα'(又はΛββ')は変換行列である。 Λαα'=∂xα/∂xα' (xα=t,x,y,z xα'=t,r,θ,φ) X=rsinθcosφ , Y=rsinθsinφ , Z=rcosθ α≠βなら、ηαβ=0 だから α=β だけを計算すれば良い。 gα'β'=Λαα'Λαβ'ηαα gtt=(Λtt)2η00+(Λxt)2+(Λyt)2+(Λzt)2=−1 grr=(Λtr)2+(Λxr)2+(Λyr)2+(Λzr)2=sin2θcos2φ+sin2θsin2φ+cos2θ=1 gθθ=(Λtθ)2+(Λxθ)2+(Λyθ)2+(Λzθ)2=r2cos2θcos2φ+r2cos2θsin2φ+r2sin2θ=r2 gφφ=(Λtφ)2+(Λxφ)2+(Λyφ)2+(Λzφ)2=r2sin2θsin2φ+r2sin2θcos2φ=r2sin2θ gtr=gtθ=gtφ=grt=gθt=gφt=0 , grθ=grφ=gθr=gφr=0 , gθφ=gφθ=0 ds2=gα'β'dxα'dxβ' であるから故に ds2=ーdt2+dr2+r2(dθ2+sin2θdφ2)
付録2:重力による時間の遅れ
ある重力場の1点で静止し、時間だけが経過している点では、dx=dy=dz=0 だから、その線要素は
ds2=−dτ2=gαβdxαdxβ となる(特殊相対論入門 6.時間の遅れと固有時間と曲線座標系 4. メトリックテンソルを参照)。従って固有時間 dτ は dτ=dt になる。時空が平坦な場合、g00=−1 なので dτ=dt シュワルツシルトの外部解では g00=−(1ー2M/r) だから、g00≧−1 (−g00≦1) r(=動径)が小さいか又はM(=質量)が大きい時、つまり重力場が強い時 −g00 は0に近づくので、dτ≦dt となり、重力場が強いと時間の進み具合が、時空が平坦な場合に比べて遅くなる。 g00 を地球の場合と太陽の場合について計算してみる。
付録3:赤 方 偏 移
列車が近づく時、音の調子は高くなり、遠ざかる時、音の調子は低くなる。これは近づく時、音の振動数が増え(=波長が短くなる)、遠ざかる時、音の振動数が減り(=波長が長くなる)為である。この現象をドップラー効果という。光の場合にも似たような事があり、光のドップラー効果と呼ばれている。しかし光はどの観測者に対しても同じ速さで進むので、音のドップラー効果とは本質的な違いがある。光のドップラー効果は、光源とこれに対して相対的に動いている観測者の時間の進み方が違う事に原因している。重力場の中を走っている光子は、重力ポテンシャルに逆らって運動している為、エネルギーが減少し波長が長くなり(=振動数が少なくなる
)、重力赤方偏移が起こる。
(1) 音のドップラー効果
V:音速 , v:音源の速度 , u:観測者の速度
N0:音源が静止いる時の振動数 λ0:音源が静止いる時の波長 ( λ0 =V/N0) λ:音源が速度vで運動している時の波長 ( λ=(Vーv)/N0 ) N:速度uで運動している観測者が受け取る振動数 とすると、音のドップラー効果は N= ( v > u なら高く聞こえ、v < u なら低く聞こえる ) (2) 光のドップラー効果
系O'が系Oに対してX軸方向に速度vで動いているとする。系Oでの光子は、振動数がνで、系OのX軸に対して角度θで運動している時、系O'での光子の振動数ν'を求める。
系Oでの光子の四元運動量は (E,Ecosθ,Esinθ,0) である。系O'での光子の四元運動量の第0成分をE'とすると、速度vのローレンツ変換によりE'は E'=(EーvEcosθー0・Esinθ)/ E=hν , E'=hν' (hはプランク定数) の関係があるので ν'=ν(1ーvcosθ)/ が成り立つ。θの値が
・ θ=0(光源が遠ざかっている)の時
ν'=ν(1ーv)/ ν'<νとなり、光子の振動数が減り(=波長が長くなる)、赤方偏移が起こる ・ θ=π(光源が近づいている)の時 ν'=ν(1+v)/ ν'>νとなり、光子の振動数が増え(=波長が短くなる)、青方偏移が起こる ・ θ=π/2(光子の運動が観測者に対して垂直)の時 ν'=ν/ 音の場合、波が横から来る時はドップラー効果は生じない。しかし光の場合には、上の式で分かる様に、相対論に特有な横ドップラー効果が生じる。これを横ドップラー偏移といい、時間ののびのために起こる。 (3) 重力赤方偏移
重力赤方偏移とは、重力場の中を重力の強い方から、弱い方に走っている光のスペクトルが赤色の方にズレル(=光の波長が長くなる=振動数が減る)現象である。光子の赤方偏移の量 z を次の様に定義する。
z= = = −1 λ ,ν : 星の中心からr1だけ離れた点Pで、放出された光子の波長と振動数 λ' ,ν' : 星の中心からr2だけ離れた点Qでの、点Pで放出された光子の波長と振動数 第三等号の右辺は λν=λ'ν'=1(=光速) より導かれる。 重力赤方偏移の現象は二つの方法で説明が付く。一つは光子が重力に逆らって運動しているのでエネルギーが減少し赤方偏移が起こる。二つ目は、二つの地点の重力の強さの違いでの、固有時間の違いによるものである。(付録2:重力による時間の遅れを参照) ・ エネルギー減少による説明
質量mの粒子が重力ポテンシャルに逆らって点Pから点Qまで運動した時、そのエネルギーは重力ポテンシャルの分だけ減少する。
・ 固有時間の違いによる説明E'=E−m(ψ(Q)ーψ(P)) , E:点Pでの粒子のエネルギー , E':点Qでの粒子のエネルギー ψ(P):点Pでの重力ポテンシャル , ψ(Q):点Qでの重力ポテンシャル (ψ(P)>ψ(Q)) ψ(Q)ーψ(P)= 点Qが十分遠方であれば、 0 粒子を光子に置き換えると E=hν , E'=hν' (hはプランク定数) , m=E=hν (物質とエネルギーは等価のため) の関係があるので hν'=hν−hν(ψ(Q)ーψ(P)) = 1-M/r1 < 1 なので、ν>ν'となり点Qで赤方偏移が起こる。 r1 》 M の時、1-M/r1 なので (普通の星では十分に成り立つ。下記の註を参照) = シュワルツシルトの外部解に於ける式(15)と静的で球対称的な星のメトリックに於ける式(2)より 1-2M/r1 = e2φ 故に光子の赤方偏移の量 z は z = −1 = e-φ−1 註 太陽及び地球の質量 1.477x103m , 4.435x10-3m (距離化単位) 太陽及び地球の半径 6.960x108m , 6.371x106m
点Pの固有時間をdτ、点Qの固有時間をdτ'とすると
dτ = dt , dτ' = dt (付録2:重力による時間の遅れを参照) 振動数は1秒間に何回振動したという量であるから、時空が平坦な系の光の振動数Nを基準とすると、固有時間dτの系の振動数はN/dτ回となる。従って Pの方がQより重力が強いので、dτ<dτ' ( < ) 従ってν>ν'となり点Qで赤方偏移が起こる。 Qが十分遠方であれば、=1になり、 ν'=ν=νeφ (λ=λ'=λ'eφ) ( ∵ 静的で球対称的な星のメトリックに於ける式(2)より = eφだから ) 故に光子の赤方偏移の量 z は z = −1 = e-φ−1 Qが遠方でない時の赤方偏移の量は と ーg00=e2φ より求まる。
付録4:ポリトロープ
ポリトロープとは宇宙物理学、流体力学に於いて、圧力と密度に P=Cρ1+1/n の関係を満たし、力学平衡にある球対称な流体の事である。
(P:圧力、ρ:密度、C:任意の定数、n:ポリトロープ指数) 球対称で静水圧平衡が成り立つ様な系では、圧力勾配による外向きの力と、万有引力による内向きの力が釣り合うので =ー m:半径rの球の中に含まれる質量が成立する。
上の式に r2 を掛け、r で微分すると ポリトロープの質量密度ρと圧力Pの関係式で、 P=Cρ2(ポリトロープ指数nを1とする) を仮定すると なので +2πr2ρ=0 =0ρ=12(P*P)1/2 と P=Cρ2より C= 、A2==288P*π とおくと、上の式は +A2ρ=0 +A2ρr=0 上の微分方程式の解は ρ=α である。星の中心では =1 なので、α=ρc(星の中心の質量密度)∴ ρ=ρc , P=ρ2/(144P*)=Cρ2 次に星の半径と全質量を求める。星の表面では密度ρが0になるから、sinAr=0 → r=π/A ∴ 星の半径 R=π/A== 星の全質量Mは ∫rsinArdr= sinArー cosAr だから 半径rの質量mは 全質量 M は r=R=π/A の時だから、上の式の r にπ/Aを代入して 【例】 電子の粒子数密度より、白色矮星の質量密度、圧力、質量及び半径を求める。
電子の粒子数密度を 1037個/m3 とすると、質量密度 ρc は (単位は全て距離化単位)
ρc=2x電子の粒子数密度x陽子の質量 になる。(式(30)を参照) ρc=2x1037x1.242x10-54=2.484x10-17 /m2 (1.242x10-54=陽子の質量) 圧力 Pc は Pc=151.316x(2.484x10-17)4/3=1.097x10-20 /m2 (151.316=K 式(31)を参照) ポリトロープの関係式 P=Cρ2 より C=1.097x10-20/(2.484x10-17)2
星の質量 M は上の式より 星の半径 R は
R==5.284x106 m
付録5:シュワルツシルトの内部解(密度一定)
星の質量、半径、質量密度及び圧力を求める時、左記の情報のうち二つが分かっていれば、あとの二つはその情報を基に計算する事が出来る。下記の4つの条件の星について質量、半径、質量密度及び圧力を求める。
@太陽のような星
太陽の質量は1.477x103m、半径は6.96x108mである。(単位はことわらない限り全て距離化単位)
A密度が1017Kg/m3、圧力が1033Kg/ms2の中性子星(単位はSI単位)M=4πR3ρ/3より、質量密度が分かる。それらから式(23)又は(24)により圧力が分かる。それらを計算すると 質量密度ρ=1.046x10-24/m2 , 圧力P=1.110x10-30/m2 B質量が太陽と同じで、半径が10Kmの典型的な中性子星
高密度の中性子星では、ほぼ一様密度になっている。@と同じ方法で計算すると
C電子の粒子数密度が1037個/m3である白色矮星質量密度ρ=3.526x10-10/m2 , 圧力P=3.730x10-11/m2
電子の粒子数密度から式(30)と式(23)により質量密度ρと圧力Pが求まる。(μ=2で計算)
距離化単位をSI単位に変換して表にまとめると質量Mと半径RはAと同じ方法で求まる。 質量密度ρ=2.484x10-17/m2 , 圧力P=1.097x10-20/m2 質量M=2.566x103m , 半径R=2.911x106m
付録6:フェルミ縮退した気体の諸量の計算
粒子数密度を基に、フェルミ運動量、フェルミ速度・・・等の諸量を付録5のA〜Cの星に対して計算する。
T.粒子数密度
付録5で星の質量密度ρは分かっているので、式(30)より粒子数密度が求まる。その時、白色矮星の場合はμ=2で計算し、電子の粒子数密度となる。中性子星の場合はμ=1で計算し、中性子の粒子数密度となる。(陽子と中性子の質量は等しい)
U.フェルミ運動量
フェルミ運動量Pfは、式より求まる。フェルミ運動量は粒子数密度にだけ依存する。
V.フェルミ速度
フェルミ速度は フェルミ速度=フェルミ運動量/質量 より求まる。
W.フェルミエネルギー(非相対論的)
エネルギーと運動量の関係式 E=フェルミ運動量2/(2x質量) より求まる。
X.フェルミ温度
フェルミ温度はフェルミエネルギーとボルツマン定数より求まる。ボルツマン定数とは1.38x10-16
エルグ/度という定数で、1度当りの粒子の運動エネルギーを表す。従ってフェルミエネルギーをボルツマン定数
で割ればフェルミ温度が求まる。
Y.フェルミエネルギー(相対論的)
相対論的エネルギーは E=(P2+m2)1/2 である。運動量Pは0からPf(=フェルミ運動量)までの色々な値を取るが、ここではPfで計算する。
Z.気体の全エネルギー密度
E=(P2+m2)1/2 の運動量Pを0からPfまで積分した量が気体の全エネルギーになる。それを体積Vで割れば気体の全エネルギー密度になる。式(28)でそれを計算する。
これが星の重力を支える量子力学的圧力になる。
付録5のA〜Cの星に対する,上記の計算結果を表にまとめると
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